内科医 梶尚志氏

 皆さん、こんにちは。2回目の執筆となります梶の木内科医院の梶尚志(かじたかし)です。開業以来23年間、総合内科専門科医として年間5万人の患者さんと向き合ってきました。その中で、通常の診療ではなかなか体調不良が改善しない患者さんに対して、さまざまな栄養素の状態を調べることで、多くの体調不良の原因を見つけて、薬に頼らない栄養療法を実践しています。

 さて、今回からは実際に当院で経験した実例から、「隠れ栄養失調」が原因でどんな不調が現れるかをお話ししていきます。

 まず、空気が乾燥しやすい冬の時期に多いのが、お肌のトラブルです。例えばアトピー性皮膚炎は、女性だけでなく乳児から小児、そして大人に至るまで、悩んでいらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

 私は、皮膚は内臓の一部であると考えています。ですから一言で皮膚といっても、実は多くの栄養素からできているのです。例えば皮膚のコラーゲンは、タンパク質と鉄やビタミンCが、肌の状態を整えるための栄養素として使われています。また、肌の保湿に大切なセラミドは、脂肪酸(脂質)という栄養素が使われているのです。ですから、皮膚の不調は、皮膚の構成要素である何らかの栄養素が不足している可能性が高いというわけです。

 一方で、アトピー性皮膚炎や慢性の湿疹は、アレルギーが原因となっていることが多いのですが、これは実は体の外からではなく、体の中の免疫反応の異常で起こっていることが多いと考えています。そこで、最近注目されている大切な臓器は「腸」です。

 「腸」は第二の脳といわれるくらい、からだにとってとても大切で、からだに良いものを入れて、良くないものをブロックする役割をしています。その「腸」の状態が悪いと、体にとって良くない化学薬品や毒素、そしてアレルギーの原因となるさまざまなタンパク質が体の中に入り込んでしまうのです。その結果、その入り込んだタンパク質を異物として認識してアレルギーを起こしたり、化学薬品や毒素が炎症を起こしたりしてしまうのです。

 お肌のトラブルは、肌の表面を整えるさまざまな方法も大切だと思いますが、それだけでは決して解決しない理由は、「皮膚は内臓の一部」だからだということなのです。つまり、お肌のトラブルと一言でいっても、その内面を構成する栄養素を整える栄養アプローチをしないと、根本的な解決にはならないのです。

 栄養療法実践医の内科医だからこそ、お話しできる皮膚のトラブルの仕組みは、ご理解いただけたでしょうか?

 次回は、子どものトラブルの実例から見えてくる栄養アプローチについて、お話しします。どうぞ、お楽しみに。