ゴールイン、待望の初勝利を飾った「純白のアイドルホース」アオラキと大畑雅章騎手 

 「来たー、勝っちゃうぞ」とスタンドのファンも熱狂。白毛のアオラキ(牡4歳、今津勝之厩舎)が21日、笠松競馬場での1600メートル戦で待望の初勝利をゲット。「アオラキフィーバー・イン笠松」となった。

厩務員2人引きでパドックへ向かうアオラキ

 風は冷たいが青空広がり、春の日差しを浴びて「純白のアイドルホース」がまばゆく輝いた。今回はホライゾネットを装着し、集中力アップ。パドック周回では2人引きだが気性は穏やか。新コンビ・大畑雅章騎手がまたがると気合乗り十分。ラチ沿いで熱い視線を注ぐファンの前をゆっくりと駆け、返し馬で戦闘モードに入った。

1周目のゴール前では、先頭から大きく離させて後方2番手だったアオラキ

 ■ ズブさを見せ、後方2番手からの競馬

 前走「B1」5着から「A7」にクラスは上がったが、3番人気とファンの期待感が充満。スタートはいつも通りでズブさを見せ、後方2番手からの競馬となった。

 「きょうも前には行かず、3~4コーナーから仕掛ける作戦か。逃げ馬にどこまで迫れるか」

 ところが、この展開予想は見事に外れた。この日のアオラキはホライゾネット効果もあってか、強さが際立ったのだ。

8頭を引き連れて力強い走りでゴールに向かうアオラキ。後方には名鉄電車の姿も

 ■早々とロングスパート、3コーナーで一気に先頭

 大畑雅章騎手のゴーサインに応えて、第2コーナーの残り900メートル地点から早々とロングスパートを開始。父ゴールドシップ譲りの豪脚で向正面からポジションを上げると、3コーナーでは逃げたランタン(深沢杏花騎手)に並びかけて一気に先頭を奪った。4コーナーを回って「これは勝ちそう。後ろの馬も届かない」と思える楽な手応えで突っ走った。          

1着でゴールイン、待望の初勝利を飾ったアオラキと大畑雅章騎手

 ■後続を突き放し、持ったままでゴールイン

 最後の直線でも脚が上がることはなく、軽快なフットワークで後続を突き放し、大畑雅章騎手は持ったままでゴールイン。1分43秒1の好タイムで2着ヘラクレスノット(大原浩司騎手)に2馬身半差。ゴール手前では初勝利を確信したファンから大きな拍手が沸き起こった。ダート適性は高く、1400から1600への距離延長で本領を発揮した。

白毛と芦毛が競演。パドック周回から熱気がみなぎった 

 名古屋のもう1頭で単勝1.5倍と断トツ人気のサトミン(岡部誠騎手)も芦毛馬でかなり白く、パドック周回では誘導馬エクスペルテとともに「白い馬ばっかり」というファンの声も聞こえた。逃げるとみられた本命馬サトミンは大きく出遅れ、最後方から3着に追い上げるのが精いっぱいだった。

レース確定後、堂々と1着の枠場に入ったアオラキ

 ■大畑雅章騎手「強かったですね」

 白毛馬アオラキにはやっぱり白星がよく似合う。愛馬の勝利に厩舎スタッフもホッと一息。大畑雅章騎手は後検量を終えると、笑顔を見せて「強かったですね、強かった。(向正面から3コーナーでは)強気に攻めちゃって」とレースを振り返ってくれた。

大畑雅章騎手が下馬し、枠場を出るアオラキ

 ■「ゴルシ産駒なんで、変なところを出す前に行っちゃえ」

 初騎乗だったが「ゴルシ産駒なんで、ちょっと変なところを出す前に行っちゃえと思って」とレースプランが見事にはまって、してやったり。気性難から奇行ぶりでも注目された父ゴールドシップ。変な癖を出さないうちに早めのゴーサインで、アオラキの闘志に点火。完璧な騎乗を見せて1着ゴールを決め「出来過ぎですわね」と晴れやか。愛馬との口取り写真の撮影では、今津勝之調教師と厩務員2人も歓喜に浸り、初Vを祝った。

初勝利を飾ったアオラキと喜びの大畑雅章騎手(左)、厩舎スタッフ(笠松競馬提供)

 ■木之前葵騎手の兄弟子へバトン

 アオラキの前走は、木之前葵騎手が騎乗して5着だったが、インナーサンクタムで1着だったのが大畑雅章騎手。木之前騎手にとっては、3年前まで所属していた錦見勇夫厩舎の兄弟子で、重賞20勝馬のカツゲキキトキトには交互に乗っていた時期もあった。「体力がある子で、いいところをを伸ばせれば」と2人の間でバトンが交わされ、アオラキを初Vへと導くことができた。

 大畑雅章騎手は笠松での騎乗も多く、今年は既に14勝を挙げリーディング6位。勝率35%は渡辺竜也騎手を上回り、連対率も53%と好成績で今回のアオラキ騎乗となった。

ホライゾネット効果で集中力が高まった

 ■距離延長とホイライゾネット効果大

 アオラキはJRAで17戦未勝利(3着3回)を経て名古屋に転入。東海地区の力関係から、笠松なら優位さもあり、中1週での参戦。前走5着で力量が問われたが、最後は危なげないゴールで完勝。次走に向けて期待が膨らむ初Vとなった。

 勝因としては、200メートルの距離延長とホイライゾネット効果も大きかった。陣営では「試してみて、効果が出てくれれば、もう少し動けていいはず」と期待。大畑雅章騎手の好騎乗もあって砂をかぶらず集中力を増して、最高のパフォーマンスを見せてくれた。

 プラス4キロ(482キロ)での出走で力強いフットワーク。芝よりもダート適性が高そうで「A級馬」としてさらなる高みを目指していきたい。 

返し馬を撮影するラチ沿いのファンたち

 ■ファン「ずっとこの瞬間を待ってたよ!」

 デビューから1年8カ月、19戦目でのうれしい初勝利。ファンの間では「強くてすごい。初勝利おめでとう」「泣いた、感動しました。あの走りすごい、次走を楽しみにしています」と祝福の嵐となった。

 応援に来た若者ら大勢のアオラキファンたちは、愛らしい姿をスマホなどで撮影しSNSに投稿。「ずっとこの瞬間を待ってたよ!」「みんなに見守られながら成長したね。これからもずっと応援するよ」と激励の声も相次いだ。

 ■後続の8頭と電車も従えて

 今回もラチ沿いの至近距離をクビを斜めにしながら愛きょうたっぷりで「めちゃくちゃ見てくる」「アオラキちゃん、かわいい。ファンサービス最高」といった熱い声も飛んでいた。

 撮影した中央スタンド前の画像では、アオラキが先頭に立って、各馬を引き連れてゴールへと駆け抜けた。後方では名鉄電車がアオラキを追走するかのように、撮り鉄さんの名所「笠松カーブ」を通過しており、アオラキが8頭と電車をも従えているような画像になった。

返し馬で気合乗り十分のアオラキと大畑雅章騎手

 ■「大畑マジック」ズバリ、ロングスパート

 中央時代のレースでは、たたいても動かなかったそうだが、馬具効果と1番人気馬が出遅れた展開の利があった。そして「大畑マジック」がズバリ。ゴールドシップ産駒として、父譲りのロングスパートを発揮させたことは大きな収穫となった。

的中したアオラキの単勝、複勝「がんばれ馬券」(笠松競馬版)

 弥富の厩舎に戻ってからも食欲旺盛で、厩務員さんのネット上への投稿によると「競馬明けもしっかり完食しました」とのことだ。

 この日、重賞レースはなかったがアオラキ効果もあって馬券発売は5億円近くと好調だった。アオラキの馬券は単勝540円に対して、複勝は120円とよく売れていた。単複の笠松競馬版「がんばれ馬券」で応援したが、単勝の配当は意外とよくついた。

 ■北海道の生産牧場も感激

 ネット上では、北海道の生産牧場も「大変お待たせしました!アオラキがついに初勝利を挙げてくれました」と感激ぶりを伝えた。初勝利の口取り写真撮影では、大畑雅章騎手とともに担当厩務員もホッとした表情。「目標の1勝を達成できて一安心しており、皆さんのご声援のおかげです」とアオラキの背中を押してくれたファンたちに感謝の言葉を伝えた。

初勝利後、装鞍所内を周回するアオラキ

 ■「白毛伝説」笠松で新たな幕開け

 アオラキフィーバーに沸いた笠松競馬場。初勝利とともに「白毛伝説」は新たな幕開けとなった。JRAからの地方競馬転入馬は、4歳なら「3勝」でJRA復帰の条件を満たすが、地方競馬のアイドルホースとなったアオラキは、競走馬としての「未来図」をどう描いていくのか。

 ダートが合い「1600メートルへの距離延長で勝負気配」とみていたが、予想以上の好結果。名古屋次開催での出走登録はあるが、連闘はないとのことで、地方3戦目も笠松での出走となるのか。名古屋競馬のファンも弥富で早く見たいことだろうが、勝利を積み上げるには、A級馬の層がやや薄い笠松での出走がベター。現地でのライブ観戦が難しい全国のファンも多いだろうが、今後のアオラキ君の活躍ぶりに目が離せなくなった。

 3月27日はオグリキャップの誕生日。芦毛伝説からバトンをつないだ「白毛伝説」。次走は1番人気か。アオラキフィーバーは次章へと続く。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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