2016年1月17日、岐阜県主催のイベント「わが家わが町 家庭の日発表会」で、私と息子明浩は、「高田流!わが子から学ぶ探究心」というタイトルで発表しました。このイベントは、各地区で選ばれた5組の家族や団体が、15分ずつその取り組みを発表するものです。
私たち家族はその約1年半前、教育委員会の推薦で、イベントで発表することが決まっていました。
しかし、息子が小学6年生であった15年3月7日、奨励会4級に昇級した後、息子の成績は低迷しました。その時期、師匠の森信雄先生からは、「やる気がない。将棋だけに集中するように」と、何度もお叱りを受けました。しかし、息子はもともと多方面に興味がある子で、将棋だけに集中するようにはなりませんでした。
周りの方々からも、「プロになるのは無理そうだから、奨励会を辞めて、普通に勉強させた方がいい」と、何度も言われました。
中学進学後の10月には、妻が、息子に奨励会を辞めて塾に通うことを勧めました。しかし、息子は反対したため、「中学1年生のうちに一つも級を上がれなかったら、奨励会を退会して塾に入る」と約束しました。
息子の中学時代、息子がプロになれると確信していたのは元奨励会三段の野島崇宏さんだけだったことは、第26回に記した通りです。イベントが開かれたときは、妻が4カ月以上、遠方に赴任していた時期で、私は、息子の心配で精神的に参っており、体調も悪化していました。
正直、イベントでの発表もお断りしたかったのですが、熱心に応援してくれる教育委員会の皆さんの笑顔を見ると、断ることもできず、沈んだ気持ちでイベントの日を迎えました。
しかし、発表は大好評で、終了後、多くの方から激励を受けました。将棋教室の柴山芳之先生、岩佐美帆子現女流1級、学校の先生など、関係者の方もたくさん来られました。
プロ棋士を目指す息子と、わが子の「よかったこと日記」を記し、成長を見守る父、テコンドーに打ち込む姿から、目標を持って取り組む大切さを示す母、という発表内容は、皆さんの参考になる部分が多かったようです。
イベントでの発表後、息子は再び努力するようになりました。将来の夢について、皆さんの前で発表したことが、よいきっかけになったのだと思います。
中学1年生が終わる3月、もう奨励会を辞めさせることは考えていませんでしたが、息子はぎりぎりで3級に上がり、約束通り、奨励会を続けることとなりました。
(「文聞分」主宰・高田浩史)