くつろぎグループ(大垣市)で心理学科学生らが活躍中
介護施設でのアルバイトは、大学や高校で福祉を学んでいる人以外にはあまりなじみのないものかもしれません。福祉を学んでいれば、慣れてくれば多少の介助もできますが、そういうわけでなければできる業務も限られてしまうのが実情です。しかし、利用者への直接の介助をしなくても力になれることは多々あります。
大垣市や瑞穂市でデイサービスやショートステイを運営するくつろぎグループでは現在、高校生や大学生のアルバイト4人が在籍しています。法人側は「利用者の皆さんは、若い方が来ると『孫が遊びに来た』というような感覚で喜んでくださいます。他愛のない会話をしたりしながら寄り添っていただける存在は、施設側にとっても利用者にとっても重要。介護職になりたいという方でなくても大歓迎で、ここで得たことをそれぞれの夢に生かしていただければ」という考えです。
大学の心理学科に在籍している久世さんは、瑞穂市の瑞穂くつろぎデイサービスで土曜日、日曜日には瑞穂くつろぎショートステイで働いています。昼食を出したり皿を洗ったり掃除をしたりして利用者や職員を支えています。久世さんはもともとは人見知りだったと言いますが、1年半ほど働く中で「聞こえているか、伝わっているかを確認しながら話す、相手に合わせて話すということは自然と身に付いてきたように感じます」と手応えを話します。
将来の進路は未定ですが、心理職に就くにせよ、一般企業に就職するにせよ、コミュニケーション能力の向上が必要という認識で「まだまだ利用者とコミュニケーションを取ることは苦手ですが、こういう貴重な機会に改善させていければ」と話します。
同じく大学で心理学を学ぶ川口さんは土曜日に瑞穂くつろぎショートステイで働いています。母親が高齢施設で働いていることから幼い頃から施設に馴染みがあり、大学入学を機にアルバイトを始めました。「心理学科では認知症などについても学びます。施設で働いてみることで、そういった理解に役立つのではというのが始めたきっかけ」と話します。
久世さん同様、配膳や利用者とのコミュニケーションがメインで、川口さんは「私の祖母もそうですが、高齢者はとにかくお話し好きの方が多いのではと思い、聞き役になることに徹しています」と、相槌を打つなどして相手が気持ちよく話せるように心掛けています。
働く中で、学校の勉強だったり、将来カウンセラーになったりした際に役立ちそうな経験が多々できていると言います。例えば認知症の方の症状については「アルバイトの日は午前中から午後6時すぎまでいます。長時間接する中で、認知症でよく言われる『情緒が安定しない』がどういった状態なのかということがよくわかりました。突然泣き出す方もいらっしゃいますので、不安を感じている様子であれば寄り添うようにしています」と話します。
川口さんは大学院まで進んで、国家資格「公認心理士」を取得し、産業カウンセラーや病院勤務などさまざまな職場を経験したい考えです。「家族でも友達でもない人とじっくり話せる機会はあまりありません。施設での経験を大切にしていきたい」と前を見据えます。