オータムカップ制覇で重賞初勝利のキャッシュブリッツと喜びの関係者

  笠松競馬のスターホース候補に2頭が力強い走りで名乗りを上げた。ともに3歳若駒で、重賞初Vと無傷の7連勝で関係者やファンの注目を浴びている。

 ■キャッシュブリッツがオータムカップV

 まずオータムカップ(1900メートル、SPⅡ)では、キャッシュブリッツ(笹野博司厩舎)が古馬初挑戦で完勝した。東海ダービー、秋の鞍(名古屋)でフークピグマリオンに続く2着馬が重賞を初制覇。渡辺竜也騎手とのコンビで本格化し、今年の笠松勢はようやく重賞2勝目、渡辺騎手はデビュー以来、重賞12勝目を飾った。

 キャッシュブリッツはレッドファルクス産駒の牡馬。JRA1勝馬が、笠松転入でいきなりスプリングC(名古屋)に挑戦し5着。3冠馬のフークピグマリオンには4連敗だが、先行力があり着実に地力アップ。

 秋の鞍では馬体重20キロ減だったが、500キロ台(+9)に戻してオータムカップ出走。追い切りも力強い伸びで2番人気。兵庫のサンビュート(田中一巧厩舎)が吉原寬人騎手の騎乗で断トツ人気となった。

キャッシュブリッツは渡辺竜也騎手の手綱でオータムカップを完勝。2着サンビュート、3着はミストラルウインド

 ■兵庫のサンビュートに3馬身差圧勝

 レースはフルゲート12頭立て。名古屋、金沢から2頭、兵庫からも1頭が参戦した。岐阜金賞でフークピグマリオンからハナ差2着のサウンドノバ(牡3歳、森山英雄厩舎)が逃げ、キャッシュブリッツは2番手からぴったりマーク。3コーナーであっさり先頭を奪うと、後続を寄せつけず力強いフットワーク。追い上げたサンビュートに3馬身差でゴール。笠松に久々のスター誕生を予感させる力強い脚運びを見せた。昨年覇者のトランスナショナル(金沢)=松戸政也騎手=は5着に終わった。3着は名古屋のミストラルウインド。

自厩舎の愛馬での重賞Vで晴れやかな渡辺騎手

 ■「やっと重賞を勝たせてあげることができた」

 サマーカップのエイシンヌウシペツに続いて自厩舎の馬で圧勝した渡辺騎手。優勝インタビューでは「涼しくなって馬の体調もアップし、自信を持って乗れた。好位からエンジンが掛かったら良い競馬をしてくれる」と愛馬をたたえた。「やっと重賞を勝たせてあげることができ、これからも重賞路線で楽しめる馬なので応援お願いします」とファンに呼び掛け。笹野博司調教師とともに色紙へのサインにも応えて交流を深めていた。

大物感が漂う走りでデビュー以来7連勝のバンダムアゲイン(笠松競馬提供)

 ■「うわさの大物」バンダムアゲイン

 もう1頭、笠松には強い競馬を見せている3歳牝馬がいる。後藤正義厩舎のバンダムアゲインで、こちらは笠松生え抜きだ。5月のデビュー戦から無傷の7連勝。ここ4戦は2着馬に1秒以上の差をつける完勝続き。1400メートルで1分26秒台、1600メートルで1分41秒台と重賞級の好タイムをマーク。前開催初日メインのB1特別では、向山牧騎手がゴール前持ったままで7馬身差の圧勝劇。現時点で「笠松最強かも」と関係者やファンを驚かせた。

 どこまで強くなるのか「うわさの大物」として重賞戦線への期待も高まるばかりだ。デビューから4戦は自厩舎の東川慎騎手が乗っていたが、けがで離脱。ここ3戦は向山騎手が手綱を握り、好位から迫力あふれるフットワークを引き出し、4コーナーでは先頭を奪って余裕のゴール。「未完の大器」として、早くもキャッシュブリッツなどとの対決が注目される逸材だ。

 ファンからは「競馬の勝ち方を知っている。走破時計がオープンクラスでも十分通用する」との声も。単勝1.2倍で楽勝した素質馬。まだ当分は連勝街道を突っ走りそうな勢いだ。

芝GⅠ勝利まで半馬身差に最接近したレジェンドハンター。2003年には全日本サラブレッドカップを勝った(山崎真輝騎手)

 ■笠松から超大物、いつか出現するのか

 ところで今世紀、笠松競馬からラブミーチャンを超えるような名馬は出現するのか。

 以前、オグリの里では「笠松から10年周期で超大物」を特集し、ニュースター誕生を期待した。①地方所属馬による中央競馬初Vのリュウアラナス(1979年)②マイルCSからジャパンC連闘で競馬ブームに火をつけたオグリキャップ(89年)③朝日杯3歳S2着でJRA芝GⅠ制覇に半馬身まで最接近したレジェンドハンター(99年)④全日本2歳優駿Vで年度代表馬に輝いたラブミーチャン(2009年)と、笠松には10年周期でスターホースが出現してきた。2019年にも超大物の登場を期待したが、空振りに終わった。

 ■「地方馬による中央芝GⅠ初制覇」達成の夢

 この調子だと2029年に期待することになるが、5年後でちょうどいいタイミングか。アンカツさんのレジェンドハンターで達成できなかった「地方所属馬による中央芝GⅠ制覇」という全国の地方騎手、調教師たちの壮大な夢は、その後も実現していない。

 「未知の領域へのゴールインを最初に果たすのは、笠松所属馬だ」と願う思いは強いが、地方馬は永遠に達成できないのだろうか。ラブミーチャンがノーザンファームしがらき(滋賀県)で鍛え「坂路留学」で再起を果たしたように、地方競馬でもやはり調教施設のグレードアップが必要になってくる。

 10月24日には1着賞金1000万円の「ネクストスター笠松」が開催される。笠松所属馬限定の2歳戦で、次世代スター候補が頂点目指して熱戦を繰り広げる。第1回王者はワラシベチョウジャ。その後は勝ち切れないが、西日本優駿(金沢)など重賞で2着4回と安定した走りを見せている。キャッシュブリッツやバンダムアゲインとともに、2歳世代でも笠松の「新しい星」出現に注目していきたい。

新人騎手紹介のトークショーで盛り上げた(右から)明星晴大、長江慶悟騎手ら

 ■笠松競馬秋まつりにジョッキー参加

 12日に開かれた「笠松競馬秋まつり」は地元ファンや家族連れらでにぎわった。ステージイベントでは「ヤングジョッキーズ笠松ラウンド」に参戦した若手の長江慶悟騎手と明星晴大騎手が登場。金曜日ライブでおなじみの今田希さん、後藤ひなのさんも加わり、トークショーで盛り上げた。

 長江騎手は地方騎手総合トップでファイナリストへ前進した。ジョッキーになってうれしいことは「一生懸命乗って勝てたとき」と、明星騎手も「やっぱり勝ったときがうれしいです」とにっこり。長江騎手の憧れのジョッキーは「オリビエ・ペリエ騎手が格好良かった」、ルーキーの明星騎手は「子どもの頃、和田竜二騎手でした」と。若くても彼らの名騎乗が印象に残っているようだ。

 2人は後藤佑耶厩舎の先輩、後輩でもあり、笠松競馬の盛り上げ隊としても活躍。長江騎手は「渡辺騎手がリーディング1位ですが、僕たちも頑張っていきたい」と意欲。明星騎手は「のどかな笠松競馬場の雰囲気が好きです」と。午前中の「騎手バス乗車体験」でもファンと交流した長江騎手。コースの状態やパドックに向かう時の様子などを伝えたが、ジョッキーは全レースが終わったら「夕食に何を食べようか」といった食べ物の話も多いようだ。

ジュニアゴルフレッスンで熱血指導を行うイ・ボミさん(右)

 ■イ・ボミさん、ジュニア熱血指導も

 この日のメインイベントは華やかなステージと実地指導。女子プロゴルファーのイ・ボミさんがトークショーとジュニアゴルフレッスンで大活躍。大勢のファンが熱い視線を送った。

 ゴルフレッスンでは、女子児童らがネットに向かって力強いスイングを披露。イ・ボミさんは一人一人に丁寧なアドバイスを送ると、ファンらは息をのむように静かに見守った。予定時間を大幅にオーバーしながらも、将来のプロゴルファーを夢見る子どもたちに熱血指導。ぐるりと取り囲んだ「ギャラリー」も熱気に包まれていた。

場内でファンたちと交流した(左から)深沢杏花、渡辺竜也、木之前葵騎手

 ■ジョッキーやトレーナー、私服姿でぶらぶら

 場内では「カフェうらら」(競馬関係者食堂)が開放され、東スタンド前にはキッチンカーが並び、笠松、名古屋のジョッキー&トレーナーたちが普段着でぶらぶら。大原浩司騎手会長をはじめ渡辺竜也、深沢杏花、木之前葵騎手らが大勢のファンたちと記念写真を撮影したり、色紙にサインをするなどして和やかに交流を深めた。

笠松、名古屋のジョッキー&トレーナーらが普段着姿でぶらぶら。ファンと秋まつりを楽しんだ

 レースでは勝負に徹するアスリートたちのにこやかな素顔に接して、みんな楽しそうだった。競馬グッズコーナーでは「オグリの里」も出店。笠松競馬の「推し馬は○○だ」の人気投票では、やはりオグリキャップが1着で、ライデンリーダー、ラブミーチャン、トミシノポルンガが2着同着だった。

騎手たちの勝負服が人気を集めたチャリティーオークション

 ■チャリティーオークション大盛況

 騎手らが勝負服などを出品したチャリティーオークションがイベントのラストを飾り、こちらも大盛り上がり。今年は点数が多く、詰め掛けた笠松・名古屋競馬ファンらは財布の中を確認しながら、お宝グッズを次々と落札していった。

 筒井勇介騎手が以前の勝負服を6着提供したり、藤原幹生騎手もプロテクターなどを気前良く出品するなどマイグッズの「大盤振る舞い」となった。2年前には、オグリキャップのレプリカゼッケンに安藤勝己元騎手のサイン入りで11万円の最高値で落札されたこともあった。

ヤングジョッキーズ笠松ラウンドのゼッケンも出品された

 ■塚本征吾騎手の勝負服やゼッケンセットが最高値

 スタンドに陣取ったファンらは、お目当ての騎手たちのグッズに大注目。威勢のよい掛け声が飛び交い、熱いバトルで競り合った。スタートダッシュを決めたのはやはり騎手たちがレースで着用し、使い込んだ「勝負服」。この日の最高値は「4万円」。まずは塚本征吾騎手の勝負服で、その場に「本人来た~」と声が飛ぶと値段も急上昇。落札者への手渡しでの交流となり、明星騎手の勝負服も3万3000円で続いた。人気高いぞ、ヤングジョッキー。

 田口貫太騎手らのサイン入りでは「ヤングジョッキーズ笠松2戦」のゼッケンセット(10枚、9枚)がそれぞれ4万円。ラストを飾ったのは貴重な「木之前騎手サイン入りの鞍」で3万円で落札された。チャリティーオークションの売上金は64万2000円で昨年を上回った。ジョッキーとファンの皆さん、ご協力ありがとうございました。

 スタンドでは「昨年も来ました。楽しみで」とか、いっぱいゲットして「めっちゃ貢献している」といった声が聞こえてきた。天候にも恵まれ、笠松競馬ファンら約2600人が入場。ダートコースを横切ったりしながら、楽しいひとときを過ごした。


※「オグリの里2新風編」も好評発売中

 「1聖地編」に続く「2新風編」ではウマ娘ファンの熱狂ぶり、渡辺竜也騎手のヤングジョッキーズ・ファイナル進出、吹き荒れたライデン旋風など各時代の「新しい風」を追って、笠松競馬の歴史と魅力に迫った。オグリキャップの天皇賞・秋観戦記(1989年)などオグリ関連も満載。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、206ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、酒の浪漫亭、小栗孝一商店、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。

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