オグリキャップの聖地にウマ娘たちが降臨。ゴールを目指して駆け抜けた

 「走った、転んだ、曲がった」。ここは38年前、オグリキャップが何度も1着で駆け抜けた聖地・笠松競馬場。コスプレで着飾ったウマ娘たちが降臨し、深い砂と格闘しながらゴールへと疾走した。

 ラチ沿いからは「頑張れ、行けー」「差せー」のほか、ある1頭には「曲がれ-」の声援も飛び交った。ゲートや走路、パドックでの撮影会も大盛り上がりで、一帯は「ウマ娘たちの楽園」となった。

 今年で3回目を迎えた笠松町主催のウマ娘イベント「仮装の宴」。全国から約250人が応募し、約70人が抽選で3.6倍の難関をくぐり抜けて出走権を獲得。宮城、東京、広島、香川、福岡などから「ウマ娘 プリティーダービー」の実装キャラたちがスタートラインに立った。

 撮影者には北海道からの参加もあり、ウマ娘と撮影のトレーナーたちが集結。正午の発走から午後4時までのロングランで「仮装deレース」「仮装de撮影会」のイベントを満喫した。コスプレ姿の一般観覧者もスタンド一帯を埋めて撮影などを楽しんだ。

1Rでゴールへダッシュするウマ娘たち

■カサマツキャップに古田町長騎乗

 好天に恵まれ良馬場、最高気温は12.7度。デビュー戦を迎えたのはカサマツキャップで、ジョッキーは何と古田聖人笠松町長。「ちょっと体重オーバー気味ですが、馬群に沈まないよう、追い込みに懸けたい」と気合乗り十分。「オグリキャップとラブミーチャンを足して2で割ったような感じ」と、ハマちゃんの勝負服姿でやや入れ込み気味で本番に備えた。

 仮装deレースは、パドック前からゴール板前まで50メートル。出走権を証明する「単勝馬券」が配布されており、男女別に計7レースが行われた。西側ではJRAの馬券が買える「J-PLACE」も開設されており、大型の清流ビジョンでレース映像が流れる中、ウマ娘たちのもう一つの戦いが熱く燃え上がった。

深い砂に苦しめられ、スタート後に転倒もあった

■深い砂に脚がもつれて転倒も

 「想像以上に走りにくいダートコースを転ばずに走り抜けられるか」。スターターは結局、古田町長。笠松のレース用ファンファーレが鳴り響き、号砲とともに「牡馬」10頭ほどが一斉にスタートダッシュ。ラチ沿いやスタンドでは撮影者や一般観覧者らが「オグリ、逃げた」「差せ―、差せ―」などと熱い声援を送った。

 スタート直後、脚がもつれて深い砂に突っ込むように転倒したウマ娘もいて波乱含みの展開となったが、立ち上がって無事で良かった。

 一方、子供を胸に抱えて力走するパパの姿や、アグネスタキオンや「怪獣オグリ」姿で参加した6~7歳の小さなウマ娘たちも元気よく走り抜け、ほほ笑ましいシーンが多かった。

「曲がれ―」などと大声援を受けながらゴールを目指すハリボテエレジー

■ハリボテエレジー、倒れ込みゴールイン

 4Rからは「牝馬戦」となり、思い思いの華麗なコスプレ衣装に身を包んで火花を散らしながら、懸命にゴールへとなだれ込んだ。各馬は30秒ほどでゴールインを果たし、温かい拍手が湧き起こった。
 
 最も盛り上がったのはメインの6R。昨年に続いて異色の人気馬「ハリボテエレジー」が抽選を突破し、堂々とスタートラインに立った。今年は脚が4本から6本に増えてパワーアップ。斜行で他馬との接触の恐れもあり、やはり大外発走。追い込み脚質で作戦通りか、大きく出遅れて20メートルほど後ろから追走。1頭だけ独自の戦いになった。

 ラチ沿いからは「行けー、来たー」「よれたよれた、危ない、あ~」などと大歓声。内によれた後、最後は外ラチ方面に倒れ込み、何とかゴールイン。40秒ほどで完走できた。ハリボテは大破したようでジョッキーたちもド派手に「落馬」した。

 古田町長がスターターを務めたため、カサマツキャップは出走取り消しに。最終7R後にちょっとだけ走ったが、表彰式のため、すぐ競走中止となった。        

見事1着になり、表彰された各レースの優勝者

■優勝者7人と仮装優秀者3組を表彰

 表彰式はパドックで行われ、各レース1位だった7人に「おめでとうございます」と優勝者の賞状と副賞の記念品(絵馬や名産品など)が贈られた。イベント盛り上げに貢献した仮装優秀者は3組。羽島市の姉妹、ハリボテエレジー、アグネスタキオン姿の6歳男の子が選ばれ、表彰を受けた。

仮装優秀者として表彰されたウマ娘たち

 古田町長は「遠くからたくさん来ていただき、ありがとうございます。今年はオグリキャップの生誕40年で、春から『ウマ娘シンデレラグレイ」のアニメ化も始まります。笠松町を盛り上げるためこんな格好をしています。このイベントでXのトレンド入りも目指しましょう」と参加者らに呼び掛けた。

多治見市の女性が連覇達成。勝ったシンボリルドルフ(左)とウマ娘仲間のメジロラモーヌ

■シンボリルドルフ姿、多治見市の女性V2達成

 50メートル走の優勝者はやはり運動神経抜群のアスリートたちだった。

 5Rを制し、V2を飾ったのは多治見市の女性。「昨年はナカヤマフェスタで優勝していて2連覇です。今回はシンボリルドルフで勝てました」と晴れやか。レース内容は「コースが整えられていて、天気もいいしとても走りやすかった。良馬場で砂には絡まれず、脚抜きがすごく良かった。昨年はゴールしてから転びましたが、ぎりぎり1着でした。参加者も多くて盛り上がっていますね」と連覇達成の喜びに浸っていた。

 ツーショットでポーズを決めてくれたのは、香川県から参加したメジロラモーヌ姿の女性(岐阜県出身)。5Rの優勝者(シンボリルドルフ)とは友達で、このイベントのため遠くから来場した。4Rに出場し、優勝したオグリキャップを追っていて「もう少しでしたが『落鉄』しちゃって、めちゃくちゃ悔しいです。靴が脱げながら走っていました」と残念がった。昨年は友達と同じレースで走り、勝ったナカヤマフェスタの2着。ウマ娘仲間でワンツーだったそうだ。

オグリキャップ姿で快走。自転車で鍛えた脚力で4Rを制した

■自転車で鍛えた三重の男女、脚力勝負でアベックV

 1Rと4Rを1着でゴールしたのは、三重県の自転車競技(ロードバイク)仲間の男女でアベックVを飾った。1R1着は菰野町の34歳男性で、ホッコータルマエのキャラ。走りには満足そうで「この日のためにバッチリ調整し、追い切ってきた」とか。日頃は自転車で鍛えており、下半身の筋肉を生かして力強くゴールイン。競争率が高い抽選を突破して挑み「運も実力もあった」と喜んだ。

 4Rは桑名市の24歳女性で初出場。自転車のツーリング気分で仲間と一緒に来て、オグリキャップ姿で快走。「笠松競馬場にちなんでオグリです。ロードバイクをやっていて、きょうのため、懸命にこいだりして頑張ってきました」。笠松競馬場の印象は「めちゃ景色がよくて、きれいだなと。初めての砂は重くて走りにくかったがこの脚で、筋肉で勝てました」と脚力勝負で差し切り、他馬を圧倒した。

発馬機での撮影会「みんなオグリキャップ杯」。六平銀次郎(左から2人目)に見守られ、ダッシュするウマ娘たち

■「みんなオグリキャップ杯」7頭がダッシュ

 表彰式後は撮影会がスタート。馬場やパドックをぶらぶらしながら、発馬機へのゲートインやスターターなども体験した。アイドルの撮影会のようで、思い思いのポーズを決めるウマ娘たちを激写しながら約3時間、ゆったりと過ごした。

 恒例となった「みんなオグリキャップ杯」では発馬機前に、さまざまなオグリたちが集合しゲートイン。変身願望もある古田町長は、今年も六平(むさか)銀次郎トレーナー役で再登場。7頭フルゲートでスターターの合図とともにゲートオープン。一斉に勢いよく飛び出し、芦毛の怪物がデビューした地で「オグリ1着」気分を体感。六平トレーナーに走りっぷりを見守られて、ダッシュを3回繰り返した。

■「怪獣オグリ」や「クリスマスオグリ」も

 ゴジラの着ぐるみのようなかわいい「怪獣オグリ」姿でゲートインしていたのは7歳の女の子。4Rでも走り「砂だったから、こけそうになった」とにっこり。お母さんが付き添い「転ばずに完走できた。東京からで、夫の実家がある岐阜への帰省で一緒に来ました」と家族で楽しそうだった。

「クリスマスオグリ」(右)などユニークなキャラも

■「ここまで好き放題に遊べるのは笠松だけ」

 「クリスマスオグリ」にふんした男性は千葉からで、クリスマス限定衣装で発馬機スタートを体験。イベントについて「面白いですね。昨年2着で今年は勝ちに来ましたが、4着ぐらいでした」。ネットを通じて知り合った埼玉の男性と一緒に来場した。

 オグリ姿の2人は「こういう機会は、なかなかないですからね。競馬場に入って撮影できるイベントは船橋や大井でもあったが、ここまでコース内に入って好き放題に遊べるのは笠松だけですね。よそでは時間制だったり、人数も制限されているから」と聖地降臨に大満足の様子。笠松競馬場は、レースや撮影をのんびりと楽しめ「ウマ娘たちの楽園」としても定着してきた。

6Rではオグリキャップ姿の2人がワンツーとなった

■オグリキャップ姿でワンツー、香川の女性らスマイル全開

 6Rでもワンツーだったのはオグリキャップ姿の2人で「レースで隣同士になり、知り合ったばかり」という。1着の女性は香川県から遠征し、鮮やかに逃げ切った。ウマ娘のキャラも増えてきて「オグリキャップは意外と少なかったですが、初めて走った笠松の印象は、きれいな所ですね。高知競馬場とは砂の感じがちょっと違いますね。土日開催の高知ではこういうイベントがないし楽しいです。パドックに入れたし」とスマイル全開だった。
 
 2着に入ったのは瑞穂市の女性。昨年は抽選に外れたが、今年はオグキャップ姿で初参加。「地元のアイドルで、オグリが走ったコースで写真も撮るのは、すごいし幸せです。聖地ですから」とにこやか。ウマ娘は「周りの友達にゲームをやっている人が多く、自分はアニメとシンデレラグレイの漫画の方からはまった。春からアニメ化され、オグリが主役になるので、今しかないと。タイミングもばっちり」とイベントを満喫していた。

完走を果たしたゴール後のハリボテエレジー

■ハリボテに2人加入「曲がれ~」の大声援も

 仮装優秀者に選ばれた架空キャラのハリボテエレジー。昨年は2人組で出場し、ネット上などですごい反響があった。今年は1人欠場となったが、新たに2人加入しメンバー強化。愛知2人と岐阜1人で、SNSのコスプレ友達での参戦となった。

 女性3人が段ボール製のハリボテの中に入って出走。マネキンの手作好太郎(てづくり・すきたろう)がジョッキーを務めて、笠松で熱い走りを見せてくれた。魔の第3コーナーで曲がり切れず、転倒しバラバラに壊れてしまうキャラで、たとえ直線でも「曲がれ~」と叫ぶファンも多いという。

 今年の走りはどうだったのか。リーダーらは「昨年よりもいい走りができてメチャ楽しかった。見せ場は、最後こけたので走り切った姿ですね。ゴール前で『曲がれ~』の大声援もあった。真っすぐ走っていたつもりが、無意識のうちに曲がっていたようで」と、最後は左によれてキャラ通りに倒れ込んで、砕け散った。

ハリボテエレジーはバラバラに壊れ、中の3人も投げ出された

■3人のチームワーク「脚さばき良くて最高」

 昨年に続きゼッケン8番で出走。「ちょっと成長したんで3人で。昨年、結構いろんな所で取り上げていただき反応があり、バージョンアップして頑張ろうかと。暖かかったんで、全力で走ったせいでちょっと汗をかきました」。3人のチームワークは「脚さばきも良くて最高でした。先頭から中、後ろとちゃんと統率が取れていた」と胸を張った。

 「4日前ぐらいから『調教』でも頑張って、成長した馬体と3人の気持ちも仕上げてきました。完走して良かったし、いい戦いでした」と大満足。ラチ沿いやスタンドからの声援に応えて力走を見せてくれた。

仮装優秀者に選ばれたフォークインとタマモクロス姿の姉妹もゲート練習

■仮装優秀者の姉妹、かわいい衣装でゲートイン

 羽島市の19歳と12歳の姉妹は仮装優秀者に選ばれた。お姉さんはシンデレラグレイに登場するフォークイン(ホーリックス)のキャラをイメージ。砂の感じは「思ったよりちゃんと走れました」とのことで、妹さんはタマモクロス姿で2着と好走し「速かったです」。2人のコスプレの装いは「母が作ってくれて、かわいい衣装になって、賞をもらえてうれしいです」とにこやか。「オグリの里の本をシンデレラグレイ賞や秋まつりの時に買いました」とのことで、ありがとうございました。

「チャンピオンズミーティング」撮影会。出遅れたのか、最後方にはゴールドシップの姿も

■「チャンピオンズミーティング」撮影会、ゴールドシップも

 走路の「砂厚」は約9センチで、よく整備されたダートコースでイベント花盛り。第1コーナー近くでは「チャンピオンズミーティング」の撮影会も開かれ、「われこそは最強だ」というウマ娘たちが集結。脚を上げてストップするポーズを決めながら、スタートダッシュを3回繰り返していた。

 ここで見つけたのがゴールドシップ姿の男性。「レースは初めてで、東京から来ました。ゴルシ推しで、いつもこれなんで。馬券もゴルシ産駒から」と。名古屋には産駒の白毛馬アオラキが戻ってきており「生アオラキも見てみたいです」。

  ゴルシ推しでは一昨年のレースに参加した愛知県の女性(夫は厩務員役)がまたも抽選落ち。昨年に続いて一般観覧者としてラチ沿いでゴールドシップ姿を披露。「今年も外れました。串カツをお土産に買いました」と残念そう。それでも、東京から来た男性と「ゴルシつながり」でツーショットを披露してくれた。

唐揚げなど笠松競馬場のご当地グルメはウマ娘にも人気だ

■唐揚げなど当地グルメを堪能

 来場した若者らは、恒例となった「岐阜のポーズ」も大勢で一斉に決めて大盛り上がり。馬場には入れないが、スタンド前などでウマ娘姿の記念写真は撮影でき、みんな楽しそう。競馬場でご当地グルメを堪能する来場者も多く「これトウカイテイオーです。走ってはいないですけど」と地元・岐南町の女性もウマ娘姿でにっこり。大きな唐揚げ(1本120円)を手にした後、おいしく味わった。

レースに出場したウマ娘ら参加者全員。年々出場者が増えており、笑顔があふれていた

■MVPは連覇の女性、敢闘賞にハリボテエレジー

 オグリの里が独自に選んだ今年のMVPは、見事Ⅴ2を達成した多治見市の女性。抽選を突破した強運と、絶対王者として君臨した「皇帝」シンボリルドルフの強さを発揮した。殊勲賞はオグリキャップ姿で2勝の三重と香川の女性。聖地パワーの差し脚が光った。敢闘賞にはハリボテエレジー。ファンを楽しませ、GⅠレース並みの大歓声でイベントを盛り上げてくれた。

ウマ娘のダッシュをラチ沿いで見守るコスプレ姿の一般観覧者

 外ラチ沿いでは、応援参加の一般観覧者らが並び、ダッシュを披露するウマ娘たちに熱い視線を送っていた。レース数は3→6→7と年々増えており、全国規模のイベントとして人気上昇。今年落選したウマ娘の皆さんも来年こそは抽選を突破し、本馬場入りできるといい。


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 (筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
 
 ☆「オグリの里3熱狂編」も好評発売中

  「1聖地編」「2新風編」に続く第3弾「熱狂編」では、人馬の激闘と場内の熱狂ぶりに迫った。巻頭で「ウマ娘シンデレラグレイ賞のドキドキ感」、続いて「観客大荒れ、八百長騒ぎとなった昭和の事件」を特集。ページ数、カラー写真を大幅に増やした。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、238ページ、1500円。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー、小栗孝一商店、酒の浪漫亭、愛馬会軽トラ市、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞情報センター出版室などで発売。