笠松競馬ファンに人気のご当地グルメ。「昭和レトロ」の飲食店はそのまま残す方向だという

 見て、買って、食べて、遊んで。馬券を購入して「推し馬、推し騎手」を応援し、再整備の費用もサポートするお客さんたちが「来て良かった」と満喫できるファンファーストの笠松競馬場に。

 子どもたちもお馬さんを見て、遊具で楽しめる芝生広場を。昔ながらの競馬場グルメを堪能できる飲食店は「そのまま」で。名馬、名手の里をアピールするオグリキャップ記念館を。再整備では「古き良き昭和の味」も残しながら、新しい魅力を創出。笠松ならではのファンが「ホッとできる空間」づくりが求められている。

 本年度、笠松競馬場は再整備に向けて本格スタートを切った。スタンドは集約されるが、昭和レトロを生かした飲食店は残す方向で、西側に屋外イベント広場を設ける。競馬組合が掲げた「再整備の四つのポイント」について引き続きその方向性を探り、笠松競馬の歴史と魅力をアピールしている「オグリの里」としても、ファン目線でアイデアを提案した。

オグリキャップの銅像前にはウマ娘パネル(オグリキャップとタマモクロス)も設置され、コラボレースが開催された

 ■イベントステージや遊具などを備えた芝生広場を

 ②「地域の方が利用できる施設」について

 お客さまエリア再整備では、まず老朽化したスタンドのリニューアルを進める。特別観覧席がある西スタンドなどを取り壊して空いたスペースを、地域住民も利用できるイベントスペースとして開放。屋外イベントなどで活用してもらう。
 
 具体的には、基本構想の策定でこれからアイデアを出すことになる。想定されるのはトークショーやキャラクターショーなどができるイベントステージ(できれば屋根付き)や遊具を備えた芝生広場などか。本場レース開催日のほかJRAの馬券も買える土曜、日曜にも親子で遊べる「ミニ遊園地」などを整備し、ポニーや誘導馬の乗馬体験もできれば人気を集めそうだ。

 今年2月、競馬場で開かれた「仮装の宴」でも盛り上がった「笠松音頭」などの盆踊り大会を、地元・笠松町と連携して開けば、ウマ娘ファンにも喜ばれるのでは。ミニコンサートやフリーマーケット会場としても活用できるといい。

 ■アンカツさんらのトークショーや「ウイニングライブ」の特設ステージは移設

 イベントステージといえば恒例のトークショー&予想会。これまでアンカツさんや田口貫太騎手ら多くのゲストが出演し、西スタンド北側の特設ステージ(飲食店前)で開かれてきた。「ウマ娘シンデレラグレイ」ではオグリキャップがウイニングライブで「カサマツ音頭」を踊った人気スポットでもあるが、西スタンドがなくなれば、イベントステージなどに移設されることになりそうだ。

特設ステージでアンカツさんのトークショーが開かれ、ウマ娘オグリキャップのパネルも展示された

 一方、毎年4月末に開催されている「ウマ娘シンデレラグレイ賞」後の声優さんによるトークショーには、数千人が集結しコンサート会場のようになる。昨春も中央スタンド前はライブステージの熱気に包まれた。今後も続けられるとしたら、スタンド前ゴール付近で開いた方が、客席から多くのウマ娘ファンに観覧していただけそうだ。

 ■住民憩いの場として「総合レジャーランド」「ホースパーク」に

 「名馬、名手の里 ドリームスタジアム」の愛称があり、オグリキャップがデビューした聖地でもある笠松競馬場。歴代名馬をプレートなどで紹介する公園や遊歩道があったら来場者も記念写真を撮りやすくなる。馬券の場外発売を含めればほぼ毎日開門しているので、住民憩いの場として「総合レジャーランド」的な施設にリニューアルされることが望ましい。

 昨春リニューアルが完了した船橋競馬場では、約5年がかりで総工費150億円をかけて施設の再整備、パーク化を進めてきた。単なる競馬場ではなく、緑豊かな広場や体験型施設など地域に根差した「ホースパーク」に一新。周辺地域との連携を図りながら、街全体を盛り上げる拠点になることを目指している。

アニメ「ウマ娘シンデレラグレイ」×笠松競馬場コラボイベントのトークショー。左からオグリキャップ役の高柳知葉さん、ベルノライト役の瀬戸桃子さん、ノルンエース役の渋谷彩乃さん、タマモクロス役の大空直美さん

 ■オグリキャップは笠松町、岐阜県を元気づける「観光資源」

 ③「オグリキャップや昭和レトロを生かした再整備」について

 笠松競馬といえばオグリキャップ。有馬記念を2度制覇した出世馬であり、感動的な走りでファンを勇気づけ、国民的スターホースとして人気は絶大だ。引退後には、岐阜県を全国にアピールした功績がたたえられ、県スポーツ栄誉賞にも輝いた。

 漫画やアニメの「ウマ娘シンデレラグレイ」の主人公にもなり、オグリキャップが育った聖地を巡礼する若者らの来場者も急増。競馬場だけでなく笠松町、岐阜県をも元気づけ、活性化させる「観光資源」として大きな役割を果たしている。リニューアルでは「正門の位置を少し中に移動させる」とも聞いたが、オグリキャップ銅像はあのままの位置で残して「笠松競馬場の守り神」として再整備工事の無事完了を見守っていてもらいたい。 

 ■名馬、名手の里アピールへオグリキャップ記念館を

 再整備でも「オグリキャップを生かす」というなら、やはり名馬、名手の里をアピールできる「オグリキャップ記念館」といった施設の整備を期待したい。ファンの一人として、日本競馬界最大のヒーローである名馬の記念館新設は悲願でもある。オグリキャップの「記念レース」「銅像」があって、あとは「記念館」だ。JRA競馬博物館(東京競馬場)で特別展が開かれることはあるが、常設されれば全国のオグリファンに喜ばれるだろう。

 小規模でもいいので、これまで笠松町歴史未来館で開いてきたオグリキャップ、ラブミーチャンら名馬やアンカツさんら名手のパネルや優勝レイなど関連グッズを一括して収蔵。笠松時代のものを中心に、中央時代でも有馬記念Ⅴの写真などを常設展示してはどうか。笠松時代のオグリキャップについては写真などほとんど残っていないが、眠っているかもしれない「お宝発掘」には関係者やファンらの協力も必要になる。地域の特性を生かしたプロジェクトを支援する「活性化事業補助金」なども可能なら活用できるといい。

 またかつてファンのオアシスとして場内で人気を集めた「愛馬会売店」のような競馬グッズ店も、正門前などに新設されればファンはうれしいし、レースがない日でも来場者増にもつながるのでは。

笠松競馬、第4コーナーから最後の直線への攻防。後方では桜並木を通り抜ける名鉄電車の姿も

 ■競馬場グルメ「あの古い感じが笠松らしい」

 笠松競馬場の特徴として、のんびりとした田園的なコースの景観とホッとできる昭和の雰囲気が味わえる建物や飲食店が魅力だという人も多い。木曽川河畔にあり、名鉄電車が鉄橋を渡り「笠松カーブ」を走行する姿をバックに繰り広げられる熱い走るドラマ。春には桜並木が満開になり、この景観を眺めるだけでも笠松競馬場の魅力を体感できる。

 名古屋競馬場もよく訪れている若者は「やっぱり笠松の方が好きだなあ。開放感があって」と話していたが、場内に一歩足を踏み入れると、その思いがよく分かることだろう。

 近代的施設に整備された名古屋競馬場とは違って、これまでの笠松競馬場の良さも残していただきたい。構想を策定するにあたっては、既にいろいろな意見があり「笠松らしさを残すべき」「名古屋のまねはするな」という声もあるそうだ。昭和レトロを生かした再整備では「売店の雰囲気とかは新しくすればいいというものではない。あの辺りをどう残すか。現状あるそういった雰囲気のまま、絶対に何かは残る。競馬場グルメという意味で、あの今の古い感じが『逆に笠松らしい』ので、新しくなっても、あえてそういうものを残していきたい」と競馬組合としての熱い思いも伝えていただけた。

昭和の風情が漂う飲食店前には行列ができて大にぎわい

 ■「飲食店を再現したウマ娘の『絵』、そこも意識」

 「特に今は『ウマ娘』があって、飲食店を再現した『絵』がアニメや漫画に出てくるので、そこも意識していく。まるっきり新しくすると、わざわざ来たファンにがっかりされるというのもあるので」とのことだ。笠松競馬場に来るファンの多くは、どて煮や串カツ、きしめんなどのご当地グルメも楽しみにしており、全国の地方競馬場と比べても「安くておいしい」と評判だ。やはりオグリキャップの聖地としてはウマ娘ファンを大事にしていきたいし、長年頑張って営業を続けている飲食店も繁盛する。あの昭和の雰囲気は「そのまま」で、来場者はのんびりと食べ歩きを満喫したいものだ。

串カツ、唐揚げ、どて煮などが並ぶ飲食店。競馬場グルメを楽しみに来場するファンも多い

 笠松競馬場は昭和9年(1934年)の開設で、当時から場内で営業してきた丸金食堂。立ち並ぶ飲食店は時代の波とともに半分以上減った。それでも「笠松競馬場、味があって昭和レトロの連ドラのセットかと思うくらいすごい」といったファンの声があるほどだ。コンパクトできれいになった名古屋競馬場とは違った魅力をアピールする意味でも「昭和レトロ感」は貴重な観光資源。スタンドでも生ビールを手に唐揚げなどご当地グルメを賞味しながら、迫力あるレースを観戦できる場を大切に守っていきたい。古き良き競馬場としての伝統を残しつつ、新たな魅力を加味して楽しさをアピールしていきたい。

 ■馬券が売れ続ければ、早期完成の後押しにも

 ④「馬券の発売状況を見ながら段階的に整備」について

 2025年度、笠松競馬の馬券発売額は1日平均5億1064万円。6年連続で過去最高を更新した。入場者数は1日平均1270人、前年度比44.6%増は全国の地方競馬では断トツの伸び率だ。ウマ娘ファンの聖地巡礼に入場無料化効果、関係者の努力もあって来場者の急増につながった。

 再整備事業費は約100億円だが、物価高騰や追加工事などで経費は膨らむ可能性も高い。現在ある環境整備基金だけでは足りないので、工事完了には今後も右肩上がりで馬券が売れ続けることが期待され、黒字分を基金として再整備に活用していく。

 リニューアル工事はレースを休止することなく、開催と並行して進められる。「馬券の発売状況を見ながら段階的に整備」ということだが、笠松競馬の馬券をファンにより多く買っていただくことがスタンドなど早期完成の後押しにもなる。                   

笠松競馬場と東側の薬師寺厩舎。来年夏には全ての厩舎が完成する(笠松競馬提供)

 ■「赤信号点滅」していた放馬対策、厩舎移転で安全確保

 再整備事業の前に、最優先課題として取り組んできた厩舎移転事業は既に工事発注を終えた。度重なる放馬事故で競馬場存続は「赤信号点滅」状態が続いていたが、一般道での放馬リスク回避のため、円城寺厩舎を競馬場隣接地の薬師寺厩舎などに移転・集約。笠松競馬永続のための「安全確保」はようやく道筋がついた。

 県地方競馬組合新管理者の足立葉子副知事は「最優先課題の厩舎移転について、順次建築を進めている。5月に最後となる三つ目のエリアに着工。円城寺厩舎からの競走馬の移転を完了させる」と放馬対策に強い意欲を示した。競馬場東側の残る14棟の厩舎建設にも着手し、来年夏には全ての厩舎を完成させる。

薬師寺厩舎の南側に完成した新しい厩舎。競走馬や厩務員らがより快適に過ごせるようになった

 ■西厩舎が完成、5月にも人馬「入居」へ

 昨年度着工した「西厩舎」(旧第2駐車場区画)は完成し、5月から人馬が「入居」することになる。近くを名鉄電車が走っており、敏感な競走馬にとっては騒音の問題もあるが、競馬組合では「円城寺厩舎の東でもJRが通っていて、夜中には貨物が通過する。馬を引いて1.5キロも移動してきたことに比べれば、(厩舎移転で)放馬対策としての条件はそろってきた」という。

 薬師寺厩舎(東厩舎)は南側に拡張し14棟が完成。北側区画の厩舎は来年7月までに完工予定だという。競馬組合では「競走馬はもちろん、調教師、厩務員が安全で快適に暮らせるようにさまざまな改良を加えた。これからの笠松競馬を支える大切な厩舎です」と現場の意見を取り入れて、厩舎仕事をやりやすくした。
 
 厩舎は木造平屋建てで真ん中に通路があり、対面式で左右に分かれた馬房に8頭ずつなら計16頭前後が入る構造が基本。2階建て厩舎は1階が馬房、2階は厩務員住宅。西厩舎には計約130頭分の馬房を備えた7棟を新築。「東厩舎」には計約450頭分の馬房を備えた30棟を新設。東西の新厩舎で計約580頭分の馬房が配備される。笠松競馬所属馬は5年前、約8カ月間のレース自粛もあって一時100頭以上激減していたが、4月9日現在、約550頭に増えている。

土手の下にはトンネルが整備され、薬師寺厩舎から競馬場へ出走馬が移動しやすくなった

 ■東側の土手にはトンネル、競馬場へ安全に移動

 薬師寺厩舎の馬はこれまで、土手を上り下りして競馬場を往復していたが、トンネル工事が進められ、土手の下を通ることができるようにした。

 土手の上は狭い道路で、馬運車などの交通量も多く、放馬のリスクもある。車との衝突の可能性がある道路上に馬を行かせたくないので、トンネルをぶち抜き、場内への往来がスムーズになる専用通路を整備した。土手の西側にある古い厩舎を壊せば、トンネルが使えるようになるという。

 放馬リスクは競馬場内からの脱走もある。2013年10月に発生した堤防道路での乗用車との衝突死亡事故。現場の「気の緩み」や想定外のところで起きるアクシデント。厩舎の移転・集約が完了すれば「もう大丈夫」ではなく、あらゆる事態に備えて安全確保の徹底に努めていただきたい。

 ■1600メートル戦、実は1590メートルしかなかった

 厩舎移転工事に伴い、笠松競馬のレースでは新たに1580メートル戦がスタートした。これまでの1600メートル戦はオグリキャップが最も得意としていた距離(中央時代を含め7戦7勝)だったが、ちょっと半端な距離になったので注目してみた。

 3コーナー奥にスタート地点がある1600メートル戦を1580メートル戦にして、走行距離を20メートル減らして実施した。競走馬が西厩舎から装鞍所に行くルートとして、1600メートル戦の発走地点を通るため改修が必要になった。4メートルぐらいの幅で馬道を整備し、馬が通れるようにするため、ゲートの位置を少し前に出した。

 スタート地点は10メートルぐらい前に出すだけでいいのだが、これまで1600メートルで実施されていたレースは、実は元々1590メートルぐらいだったそうだ。新たなコース設定で測り直したら1580メートルになったという。

3コーナー奥からのスタートで長年開催されていた1600メートル戦で先陣争いを繰り広げる各馬。実は1590メートルしかなかった

馬道を確保する改修工事で距離短縮。約50年ぶりに1580メートル戦が復活してスタート。騎手からは「そんなに変わらない」という声も

 これまでの1600メートル戦が、1590メートルだったとは驚きだ。実測で10メートルぐらい少なかったそうだが、正確な距離にしようということで「1580メートル」になったという。

 1580メートル戦は昭和49年(1974年)7月~51年(1976年)10月までの2年余り、笠松競馬場で堤防保安工事のため、1600メートル戦から変更され一時実施していた。小栗孝一さんの所有馬でアラブのオグリオー(鷲見昌勇厩舎)が1580メートル戦で30戦13勝と得意にしていて、1分40秒6という記録が残っている。

 約50年前でもあり、大ざっぱな距離設定だったのか。10メートルも少なかったら、タイムも0秒6から0秒7も違ってくる計算になる。オグリキャップは笠松の1600メートル戦では3戦3勝。ゴールドジュニアで1分41秒8(不良)の記録が残っている。

 ■勝った東川騎手「そんなに変わらないです」

 3月30日、笠松5Rで半世紀ぶりに行われた1580メートル戦。先陣争いは激化し、ジョッキーたちは少し短く感じたのかどうか。3番手から差し切って勝った東川慎騎手に乗った感想を聞くと「そんなに変わらないですね。これが100メートル減ったらだいぶん変わるけど、20メートルなら」と気にならなかった様子。実際は10メートル減っただけでもあり、コーナーの入りも「乗っている感じはいつも通りで、そんなに変わらないと思った。タイム的にもあんなもんです」。2着の筒井勇介騎手も「あまり変わらないです。1600は元々コーナーまで短かったし、後ろからだったんで」。2戦目を勝った渡辺竜也騎手は「おいしかったです。(距離の感じは)一緒です」とのことだった。

 3戦目は「1580メートル戦スタート記念」として実施。藤原幹生騎手がマルヨハルキで勝ち、2日目も藤原騎手騎乗のシュネルカガ(大橋敬永厩舎)が「1分43秒3」のレコードタイムで駆け抜けた。新たに導入された1580メートル戦のレコードホルダーとなった。(次回に続く)


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 (筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
 
 ☆最新刊「オグリの里4挑戦編」も好評発売中

 「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。