証券会社の口座を乗っ取られた人からは、1千万円近くの老後資産を失ったと悲痛な声も上がる。「詐欺にも気をつけて慎重に投資をやってきたのに、なんでこんな目に遭うのか」。落胆する被害者は証券各社に補償の必要性を訴えている。

 千葉県の女性(68)は、4月14日午前にネット証券口座での取引を通知するメールが大量に届いて不正に気付いた。コールセンターにはつながらず約1時間後にパスワードを変えて被害の拡大を防いだが、損失は約970万円に上ったという。

 女性によると、まず保有していた30銘柄の日本株の大半を売却された。続いて株価が低く変動しやすい日本株8銘柄がいったん購入された後、値下がりした状況で売却された。

 偽サイトには注意しており、乗っ取られた原因は特定できていない。「病気などに備えるためパートでこつこつとためたお金を元に購入してきた株がなくなってしまった」と肩を落とす。「個人で口座を守ろうとするのは限界がある。社会全体で補償の問題を考えるべきだ」と語った。