太平洋戦争末期の沖縄戦で、沖縄本島で多くの住民が戦火に巻き込まれる契機となった日本陸軍第32軍の「南部撤退」から22日で80年となった。米海兵隊は台湾情勢を念頭に、島しょ部に部隊を分散させる作戦を掲げ自衛隊と訓練を重ねる。有事には南西諸島一帯が戦域となる恐れがあり、沖縄では「再び軍民混在の戦場に投げ出されないか」と不安の声が上がる。
米軍の構想は「遠征前方基地作戦(EABO)」と呼ばれる。高いミサイル能力を持つ中国軍に対し、輸送機オスプレイなどで移動を繰り返しながら対艦ミサイルを発射するもので、自衛隊と訓練を展開している。
だが、住民に被害が及ぶ懸念は強い。ある防衛省関係者は「部隊がいれば攻撃される。有人島全てが戦場になる可能性がある。住民の理解を得られるとは思えない」と漏らした。
陸上自衛隊幹部は、EABOに沖縄戦での南部撤退を重ねる。当初の司令部のあった首里(那覇市)から、住民が避難していた地区に軍が退き戦闘を続けたことで、多くの非戦闘員が命を落とす事態を招いた。