大相撲の大の里が横綱昇進を確実にした。少年時代から育んだ自立心が成長を後押しした。
石川県津幡町出身。社会人選手だった父中村知幸さんに手ほどきを受け、小1から競技を始めた。好結果が出ず、新潟・能生中、海洋高で鍛えることを決断。「友達もいない。自分の時間もない。何かを犠牲にしないと強くなれない」と両親を説得し、1日6時間近く稽古する環境に身を置いた。
親元を離れて間もなく、大の里は父に「もう僕に相撲の指導をしないでください」と告げた。知幸さんは「自立だと思っていた。絶対に強くなって見返してやろうというのはあった」と述懐した。
海洋高相撲部の田海哲也総監督は、朝練習で工夫を凝らす姿が印象に残っている。人目につかないところでダッシュをしたりハードル走をしたりして瞬発力を磨いた。「12歳からいばらの道を切り開いてきた」と賛辞を惜しまない。
息子に相撲部屋選びを一任していた両親が、師匠の二所ノ関親方と初めて会ったのは、入門記者会見の当日だった。「自分で決めれば誰のせいでもない」と大の里。信念を貫き通した。