マウスの海馬にある神経幹細胞(緑色に光る部分)。上が通常の状態で、下は特定の酵素の働きを一時的に抑えたため機能が低下した状態(奈良先端大提供)

 記憶や学習などをつかさどる脳の「海馬」の老化は、神経の細胞に働く特殊な酵素の活性が鈍って起こることを突き止めたと、奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)などのチームが4日までに国際学術誌に発表した。活性を回復すると正常な機能を取り戻し神経幹細胞が“若返る”ことも判明、アルツハイマー病などの新たな治療につながると期待される。

 チームによると、神経幹細胞とは、脳を構成する細胞に変化する細胞。年を取ると数が減り働きも衰えるため、記憶力の低下に影響すると考えられている。今回は、加齢初期に急激に神経幹細胞の働きが衰える原因を解明しようとした。

 今回チームは、遺伝子の働きを後天的に制御する「エピゲノム」という機能に着目。マウスの海馬にある神経幹細胞が、生まれてから年を取ることでどのように変化をしていくのかを調べた。

 その結果、神経幹細胞の本体は性質が変わらないものの、新しい細胞を作る遺伝子の働きが鈍くなる一方で、老化現象を引き起こす遺伝子は活性化していることが判明。特定の酵素の働きが低下したためだと分かった。この酵素は老化を抑える役割をしていた。