
ぎふ清流カップを制覇し吉原寛人騎手は満面の笑み
梅雨の晴れ間が広がった初夏の電撃戦、「3000勝ジョッキー」2人が最後の直線で熱い火花を散らして一騎打ち。吉原寛人騎手が「重賞V請負人」「さすらいの重賞ハンター」と呼ばれるにふさわしい圧巻の騎乗を見せて、小牧太騎手との名手対決を制した。
■名古屋のケイズレーヴ大まくりV
西日本地区交流の3歳重賞「第8回ぎふ清流カップ」(1400メートル、SPⅠ)が12日、笠松競馬場で行われ、名古屋のケイズレーヴ(牡3歳、榎屋充厩舎)が最後方から大まくりを決めた。吉原騎手の好騎乗で1番人気に応えた。2着に小牧騎手・ベラジオドリーム、3着に田野豊三騎手・ラピドフィオーレの兵庫勢が続いた。優勝賞金は1000万円。

小牧太騎手(中央)らベテランや明星晴大騎手(右)も挑んだぎふ清流カップ
ケイズレーヴの重賞Vはいずれも笠松で2勝目。ネクストスター中日本を勝ち、権利を得て挑んだ兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)は5着。ハッピーマン(坂井瑠星騎手)が制覇しJRA勢が上位を占めたレースで、吉原騎手初騎乗のケイズレーヴは地方馬最先着を果たした。
吉原騎手は3年前のクリノメガミエース(兵庫)に続き、ぎふ清流カップ2勝目。重賞勝利は185勝(中央1勝、地方184勝)となった。前夜には東京ダービー(大井)に挑戦したばかり(スマイルマンボで8着)。厩舎、オーナーサイドの信頼は厚く、全国の重賞レースを渡り歩く日々を続けている。

吉原騎手&ケイズレーヴの返し馬
■吉原騎手が小牧騎手との追い比べ制した
ぎふ清流カップは兵庫勢が4連勝中。小牧騎手のベラジオドリームが激しい先陣争いからハナを奪った。笠松勢のプチプラージュ(渡辺竜也騎手)が3番手。ケイズレーヴは2コーナーでは最後方となったが、吉原騎手のゴーサインに応えて向正面の下り坂から進出を開始。3~4コーナーでは大外一気で先団に取り付くと、最後の直線ではベラジオドリームとの追い比べに持ち込み、ラスト3Fを36秒5の爆発力で突き抜けた。

1着でゴールするケイズレーヴ&吉原寛人騎手。2着はベラジオドリーム&小牧太騎手
残り200メートル、地方競馬通算3000勝超えジョッキー2人の追い比べはファンをしびれさせた。「半馬身」先着を許し、小牧騎手はゴールで体を沈めて残念そうだったが、57歳ベテランは健在ぶりを笠松の地でも見せてくれた。レース前には顔なじみの高木健騎手にコース状態などを聞くなどして逃げ込みを狙ったが、最後は吉原騎手の強襲に屈した。
■「外差しが決まる馬場、力でねじ伏せてくれた」
レース後の吉原騎手。激しい先陣争いで「ごちゃごちゃする展開でしたが枠(12番)が良かった。もっとうまく乗りたかったが、何頭もの外からになった。外差しが決まる馬場で、最後はよく力でねじ伏せてくれた」と振り返り、Vポーズを決めて「爆勝スマイル」全開となった。

ぎふ清流カップ優勝馬ケイズレーヴと喜びに包まれる関係者
表彰式での勝利騎手インタビューでも「よろけて出てダッシュがつかなかったが、自分のリズムを守っていい感じで運べた。園田で乗せてもらった時のようにすごくいい脚を使ってくれて、勝つことができてうれしい。(1400メートルの)この距離が一番合いそうで、この路線で活躍してくれそう。またケイズレーヴとのコンビで頑張りたい」と喜びを語った。遠征慣れした名手は疲れも見せず、サインを求めるファンとの交流でも元気いっぱいだった。
ハクサンアマゾネスやユメノホノオで重賞Ⅴを量産してきた吉原騎手。笠松所属時代のアンカツさんが達成した「重賞200勝」超えを目標にもしており、ぎふ清流カップVで「185勝」とし、また一歩近づいた。41歳、現在進行形の地方最強ジョッキーとして全国の競馬場を駆け回る日々は続く。

ベラジオドリームが逃げ、笠松勢のプチプラージュが3番手
■藤原騎手騎乗のマルヨハルキ、最後方から4着
笠松勢5頭では藤原幹夫騎手が騎乗した6番人気マルヨハルキ(柴田高志厩舎)が4着で最先着。3コーナー最後方だったが、ラスト3F37秒3で驚異の追い上げを見せた。新緑賞勝ちのゴーゴーバースデイ(後藤佑耶 厩舎)は明星晴大騎手の騎乗で9着、東海優駿から連闘の名古屋・カワテンマックスも伸びを欠いて7着に終わった。

地方競馬に復帰し、笠松にも参戦した兵庫の小牧太騎手
小牧騎手は2002年(JRA移籍前)には笠松で騎乗し勝利を挙げており、3着も2回と相性の良いコース。当時はまだアンカツさんや川原正一騎手が笠松に所属していた。2004年、アンカツさんに続いてJRA移籍。08年には桜花賞を12番人気レジネッタで勝ち、GⅠ初制覇し3連単700万円に絡んだ。昨年8月、兵庫に復帰し今年はリーディングトップを快走。レジェンドぶりを発揮する活躍で、地方競馬を盛り上げてくれている。
■パドックに出走馬12頭とジョッキー12人集結
笠松競馬場は13日から2カ月間の馬場改修入り。このため出走馬の駆け込み需要もあって36レース中33レースが10頭立て以上、フルゲートが計11レースもあった。6、7頭立ても多く寂しい頭数が続いていた笠松だが、やはり出走馬が多いと先陣争いが激化し、3~4コーナーからの追い比べは迫力が増した。

フルゲートでジョッキーも12人が勢ぞろいしたパドック前
ぎふ清流カップでは装鞍所騎乗がなく、パドックには出走馬12頭とジョッキー12人が集結。壮観でスタンドのファンを喜ばせた。小さなパドックは窮屈になったが、重賞デー限定の誘導馬が立ち止まって最後の1頭を迎えるなどして対応。返し馬では吉原騎手や小牧騎手も騎乗馬とラチ沿いへ来てくれて、カメラやスマホ撮影のファンたちを喜ばせた。
「笠松は出走馬が少なくて、馬券を買う気がしない」という競馬ファンの声をよく聞いたが、今シリーズの馬券販売は好調だった。火曜日には金沢競馬も開催されており、15年ほど前なら1億円割れも目立ったが、ネット販売の恩恵もあって5億7700万円と予想以上の数字(金沢は3億5400万円)。5日目が5億6100万円、重賞デーの最終日が6億2500万円。やはりフルゲートなど頭数が多く、馬券的な妙味もあってファンの購買意欲をそそった。3日間で計17憶5000円超となり、昨年(4日間開催)の販売額を上回った。馬場改修明けの8月11日以降も多頭数で「ファンが馬券を買いたくなる魅力のあるレース」が続くことを願いたい。

3800勝達成セレモニーで「4000勝」への意欲も示した向山牧騎手(笠松競馬提供)
■向山 牧騎手3800勝達成「4000勝を目指して頑張りたい」
向山 牧騎手(59)=川嶋弘吉厩舎=が5月30日、アイガットユーで差し切り勝ち。地方競馬通算3800勝を達成した。 1983年4月11日、新潟・三 条 で アタカールに騎乗し初勝利。新潟時代から積み上げて還暦前に達成。ライデンリーダー記念(カキツバタフェロー)、園田・ のじぎく賞 (アペリラルビー)、 東海ゴールドカップ(ストームドッグ)など重賞35勝はすごい記録。中央でも11勝を挙げている。
これまで「60歳以降も乗り続け、年金ジョッキーを目指したい」と円熟の手綱さばきで若手に模範となる騎乗を見せてきた。笠松競馬所属では3353勝のアンカツさん超えて勝利記録を更新中。2013年には笠松リーディングも獲得した。
記念セレモニーで、3800という勝利数について「長くやっているんで、頑張ってきたら勝ってましたね」。40年以上のジョッキー生活で「進化はしていませんが、頑張りたい。騎乗は減ってきたが、4000勝を目指して頑張りたい」と意欲を示した。60歳になった高木健騎手も頑張っているし、笠松から兵庫に移籍した川原正一騎手(65)は5900勝達成も近い。牧さんには「若手の壁」にもなって、けがなどなく4000勝の大台を達成していただきたい。

筒井勇介騎手の1400勝達成セレモニー。馬場改修中は名古屋に参戦へ
■筒井勇介騎手の通算1400勝も祝福
筒井勇介騎手(42)=田口輝彦厩舎=は6月10日、シルバーブリッジ(藤田正治厩舎)で地方競馬通算1400勝を達成した。2002年4月、笠松でデビューし、9戦目のゴンゲンアリダーで初勝利。エレーヌとのコンビで東海ダービーなど重賞8勝。東海ゴールドカップ(ダイヤモンドダンス)など含め重賞は計13勝。2019、20年には笠松リーディングに輝いた。
この日も4R、5Rを連勝して1400勝達成記念セレモニーに登場した筒井騎手。「気分いいですね。でも1400勝するまで足踏み状態でしたので、今開催で何とか決めようと思っていた」。馬場改修中の2か月間は「名古屋とかに乗りに行ってみようかなと。あとは攻め馬を一生懸命やって(笠松再開後も)いつもと変わらず1個1個頑張っていきたい」とファンに思いを伝えた。

藤原幹生騎手は期間限定騎乗で南関東に参戦する
■藤原騎手は期間限定騎乗で南関東のレースに挑戦
4月3日にルリオウ(栗本陽一厩舎)で地方競馬通算1300勝を達成した藤原幹生騎手(44)は期間限定騎乗で南関東のレースに挑戦。6月30日~8月31日の2カ月間で、船橋の米谷康秀 厩舎に所属する。
壮行会では「米谷調教師とは同期で(騎乗を)お願いしたら『いいよって』言ってくれたんで行くことに。(南関東は)騎手も馬も多いですが、あっちで武者修行してきます」と新天地での騎乗に闘志。ファンから「頑張れよ」の激励の声が飛んでいた。

競走馬にはなれなかったが、誘導馬デビューを果たした「大吉」
■競走馬不合格だったが「大吉」として誘導馬デビュー
笠松競馬場の誘導馬を長年務め、ファンに愛されたエクスペルテ、ウイニーの2頭と誘導馬騎手の塚本幸典さんが3月末で引退した。4月以降は重賞開催日限定でポニーの「マカロン」が誘導馬を務めている。12日には新たに「大吉」が誘導馬デビュー。最終レース後にはウイナーズサークルでお披露目会も開かれた。
大吉は栗毛の牡3歳で父はコパノリッキー、生産者ビッグレッドファーム。笠松競馬で競走馬ロボリッキーとしてデビューを目指し、能力審査にチャレンジした。1月には588キロの巨漢馬として「800メートル」に挑んだ。藤原騎手の騎乗で頑張ったが56秒4。合格ラインに0秒4届かず、タイムオーバーで不合格となった。3度の審査で目標をクリアできず、競走馬への道は断念した。
のんびり屋のようだが、落ち着いていて新たに誘導馬デビューを果たした。詰め掛けたファンに顔をなでてもらい、ふれあいも深めた。マカロンと大吉は、馬場改修後も重賞デーに誘導馬として登場する。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」に対する感想や意見などをお寄せください。笠松競馬からスターホースが出現することを願って、ファン目線で盛り上げていきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆「オグリの里3熱狂編」も好評発売中
