MERSコロナウイルスの電子顕微鏡画像(国立健康危機管理研究機構提供)

 2014〜15年を中心に各国で問題となった中東呼吸器症候群(MERS)で、原因であるMERSコロナウイルスの感染を防ぐ製剤を開発したと、京都府立医大などの研究チームが20日までに米科学誌に発表した。変異ウイルスにも有効だったとし、星野温講師は将来的に懸念されるパンデミック(世界的大流行)にも「迅速に対応できるのではないか」としている。

 12年に初めて感染者が確認されたMERSは、致死率が約30〜40%とされる重症呼吸器感染症。新型コロナと同じくコロナウイルスによって引き起こされる。ウイルス表面の突起「スパイクタンパク質」と人の細胞表面の受容体が結合することで感染する。

 チームは新型コロナ治療薬の開発で確立した手法を応用し、通常の受容体よりもスパイクタンパク質と結合する力が30倍以上強い変異受容体の製剤を開発。細胞表面にウイルスがくっつく前に結合し、感染を予防する働きがあるという。

 ヒトと同じ受容体を持つようにしたマウスを用いた実験では、感染を防ぐ効果を確認した。