国が2013〜15年に生活保護費を引き下げたのは違法だとして、受給者が国と自治体に減額処分の取り消しなどを求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は27日、違法と認め処分を取り消した。引き下げの根拠とした物価下落を反映する「デフレ調整」について「裁量の範囲の逸脱、乱用があった」と判断した。敗訴が確定した国側は、減額分支給などの対応を迫られる。
最高裁が生活保護の基準引き下げを違法と判断したのは初めて。各地で起こされた同種訴訟も今後、この判断に沿った結論になるとみられる。国の賠償責任は否定した。
第3小法廷は、導入の是非が争われたデフレ調整に関し、専門的知見を欠いていたなどと指摘した。
厚生労働省は、08年のリーマン・ショック以降に物価が下落したなどとして、13〜15年に3回に分け、生活保護のうち食費や光熱費など日常生活のための「生活扶助」の基準を平均6・5%引き下げ、計約670億円を削減した。デフレ調整はこのうち約580億円分。
同種訴訟は29都道府県で31件起こされた。