2020年7月豪雨の追悼式で献花する参列者=29日午前、熊本県人吉市役所

 九州5県で関連死を含め79人が犠牲になった2020年7月の豪雨発生から5年を迎えるのを前に、球磨川の氾濫などで甚大な被害が出た熊本県人吉市で29日、追悼式が開かれた。遺族ら約40人が死別を悲しみ、静かに祈りをささげた。松岡隼人市長は「犠牲者にも胸を張って報告できる人吉にしていく」と述べ復興を誓った。

 式では木村敬知事や地元高校生が追悼の言葉を述べた後、一人一人が献花した。参列した北九州市の西村直美さん(56)は当時、人吉市に帰省して会う約束をしていた両親を亡くした。「5年たっても、悲しみや一緒に避難できなかった後悔は変わらない」と語った。

 熊本県合志市の鍜治屋博子さん(62)は避難途中だった両親が被災して亡くなった。「戻れるなら前の日に戻りたい。(両親は)悔しいだろうな」。全国で災害が相次いでいることを踏まえ、早期避難の大切さを訴えていた。

 豪雨は、気象庁が20年7月4日に熊本県などで大雨特別警報を出した。各地で川が氾濫し、熊本県では67人が死亡、現在も2人が行方不明のままだ。