患部のMRI。破線円内が腰椎椎間板ヘルニア

整形外科医 今泉佳宣氏

 本日は腰椎椎間板ヘルニアの診断についてお話しします。整形外科の疾患に限らず病気を診断するには手順があります。その手順とは問診、診察、検査です。

 問診ではまず年齢に注意します。腰椎椎間板ヘルニアの好発年齢は20歳から50歳くらいです。もちろん20歳以下や50歳以上の患者さんもいますが、多くはこの範囲です。次に家族歴として両親や兄弟などで腰椎椎間板ヘルニアを患った人がいないかを尋ねます。椎間板ヘルニアは明らかな遺伝性疾患とはいえませんが、家族内での発生が時にみられます。

 発症の仕方として多くは急性に発症します。患者さんの中には症状が起きた日時を正確に覚えている人もいます。最初は強い腰の痛みで始まりますが、たいてい数日で治まります。そして腰痛が治まった頃に片側のお尻や脚の裏が痛くなります。このお尻から脚の後面にかけての痛みを坐(ざ)骨神経痛といいます。坐骨神経痛に加え、脚のしびれ、脚の力が入りにくいという患者さんもいます。

 問診後に診察をします。立った状態の患者さんを後ろから観察します。患者さんの中には体が左右どちらかに傾いている人がいます。これは疼痛性側弯(とうつうせいそくわん)と呼ばれ、腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛を和らげようとする姿勢を取ることによるものです。また、患者さんは体を前へ曲げにくくなります。体を前へ曲げようとすると、坐骨神経痛が強くなり、それ以上前へ曲げることができなくなります。これと似た診察法として下肢伸展挙上試験(SLRテスト)があります。これはあおむけに寝て痛みのある脚を上げていくと坐骨神経痛が強くなり、途中で脚が上がらなくなるという現象です。その他に下肢の筋力や知覚障害がないかをみます。

 問診、診察で腰椎椎間板ヘルニアを疑ったら次に画像検査を行います。整形外科の基本の検査は単純エックス線写真ですが、残念なことに軟骨である椎間板はエックス線写真に写りません。そのためエックス線写真で腰の骨に異常がないことを確認した後、椎間板を直接観察できるMRI(磁気共鳴画像)検査を行います。写真のようにMRI検査で椎間板が突出している像を確認して腰椎椎間板ヘルニアと診断します。

 次回は腰椎椎間板ヘルニアの治療についてお話しします。

(朝日大学保健医療学部教授)