戸籍上の本名ではなく、通称で選挙を戦う候補者が増えている。交流サイト(SNS)の普及で選挙管理委員会が「本名より浸透している」と認めやすくなったためだ。プライバシーが守られることで立候補のハードルが下がる一方「選挙ごとに名前を変えれば経歴をたどれなくなる」と有権者の不利益を指摘する声も上がる。
「選挙に出ると個人情報が全て公開され、落選したら元の生活に戻りにくい」。政治団体「AI党」党首のAIメイヤー氏は、本名で立候補することのデメリットをこう説明する。この通称で、顔の一部をマスクで隠しながら昨年の東京都知事選などに挑んできた。
党が掲げるのは、プライバシーを守り、誰でも政治参加できる社会。賛同者がAIメイヤー2号、4号の通称で各地の選挙を戦った。AIメイヤー氏は「学歴なども非公表にすることで政策だけに注目してもらえる」と話す。
総務省によると、立候補届には本名を記載する必要がある。その上で選管が「社会に通用している」と認めれば通称での選挙運動が可能で、選挙公報やポスター、政見放送などで使える。