熊本地方裁判所

 聖徳太子の肖像画が描かれた偽の旧1万円札176枚をベトナムから密輸したなどとして、偽造通貨輸入・同行使罪などに問われたベトナム国籍の元技能実習生の男性被告(38)の裁判員裁判で、熊本地裁は17日、「偽造かもしれないと認識していたとの決定的な事情はない」として無罪の判決を言い渡した。求刑は懲役9年だった。

 中田幹人裁判長は判決理由で「初めて来日したのが2012年で、旧1万円札がどういうものなのか知らなかったとしても不自然ではない」と指摘。両替を依頼してきた女性から札の画像を送信され、電話で偽物ではないか尋ねたとの被告の供述は「図柄の紙幣が実際に存在するのかを尋ねたに過ぎない可能性が否定できない」と判断した。

 被告は23年6月22日〜8月17日、何者かと共謀し、事情を知らない人物の手荷物としてベトナム発の航空機に載せて福岡空港や関西空港から輸入し、銀行で両替したり、郵便局でゆうちょ銀行の貯金口座に預け入れたりして行使したとして、起訴されていた。

 熊本地検の加藤和宏次席検事は「判決内容を確認し適切に対応したい」とした。