「ちょっと心空っぽというか、感極まってる状態」。再審で無罪とする判決を勝ち取った前川彰司さん(60)は閉廷後、支援者らを前に安堵の表情を浮かべた。裁判所前で「おめでとう!」と声をかけられ10秒ほど沈黙した後、少しずつ言葉を紡ぎ、最後に「ありがとうございました」と声を振り絞った。
大阪市の小6女児が焼死した火災で再審無罪が確定した青木恵子さん(61)から花束を受け取った。
判決には、青木さんからもらった黄色のネクタイ姿で臨んだ。手には静岡県一家4人殺害事件で再審無罪となった袴田巌さん(89)の姉ひで子さん(92)から託された青い帽子を携えた。
約3時間の判決言い渡しの後、増田啓祐裁判長が「39年間大変なご苦労をかけ、申し訳なく思う。これからの前川さんの人生に幸多からんことをお祈りしています」と謝罪すると、前川さんは裁判長を見つめ、深くお辞儀した。
「やっと無罪を証明できた。ほっとしている」。裁判長の謝罪の感想を問われると「裁判所からのエールだと思って、これからの人生を歩みたい」と話した。