シカやイノシシなど国産ジビエの人気が高まる中、取り扱う食肉処理施設を対象とした国認証の取得が伸び悩んでいる。農林水産省が肉の安全性を担保しようと2018年に認証制度を創設したが、取得したのは全国に700以上ある施設のうち31施設にとどまっている。業者側の設備投資や人手不足が壁になっており「小規模な施設で対応するのは難しい」との声が漏れる。
農水省によると、ジビエ処理施設は23年度時点で全国に約770カ所ある。肉の利用量は2729トンで、16年度と比べ倍増した。農作物の鳥獣被害防止のため捕獲量が増える中、低カロリーで高タンパク質な食用肉としてファンが増加。飲食店やホテルで活用が広がるほか、ペットフード向けの需要も高まっている。
ただ、認証取得は広がっていないのが実情だ。「1人でやっているような加工場では取得は難しいのではないか」と話すのは、高知県香美市で加工施設を営む橘木岳大さん(39)。狩猟から解体、加工を1人で担っており、個体ごとの流通履歴を記録する要件を満たすのが困難だという。