細菌のA―gyo(左)とUN―gyo(右)のイメージ(北陸先端科学技術大学院大・都英次郎教授提供)

 「AUN(あうん)」と名付けた2種類の細菌を投与し、がん細胞だけを攻撃させる手法を開発したと北陸先端科学技術大学院大(石川)などのチームが5日、英科学誌に発表した。人のがん組織を移植したマウスで効果を確認。体内でがんを攻撃する免疫細胞が十分に働いていなくても有効とみられる。6年以内の臨床試験開始を目指す。

 チームは「2種の細菌が『あうんの呼吸』でがんを倒す新しい治療法だ」としている。

 がんは正常な細胞に比べて酸素の濃度が低い。酸素の少ない環境を好む細菌を使い、がんを攻撃する手法は、欧米で開発が先行しているが、高い効果は得られていない。

 チームは2023年、マウスのがん組織に潜む細菌と、自然界にいる光合成細菌を組み合わせるとがんを攻撃する働きが強まると報告。それぞれ「A―gyo(阿形)」「UN―gyo(吽形)」と命名し、合わせてAUNとした。

 阿形は、吽形に運ばれて体内を移動し、がん組織にたどり着くと増殖。やりのような形に変化して内部に入り込み、がん細胞とがんの血管を破壊する。