長崎への原爆投下から80年となった「原爆の日」の9日、長崎市の鈴木史朗市長は「平和祈念式典」で読み上げた平和宣言で、核戦争への強い危機感を示し、人種や国境を超え「『地球市民』の視点こそ、分断された世界をつなぎ直す原動力となる」と呼びかけた。石破茂首相は非核三原則の堅持を表明。核兵器なき世界に向け「国際社会の取り組みを主導していく」とあいさつする一方、核兵器禁止条約への署名、批准は言及を避けた。

 日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳代表委員は参列後の報道陣の取材に、首相が禁止条約に触れなかったことに「今までの考えを改めておらず残念だ。われわれの要求に反している」と話した。

 鈴木市長は宣言で、各地で紛争が激化しているとし「このままでは核戦争に突き進んでしまう」と述べた。その上で、核廃絶の声を上げ続けた被爆者の姿に市民が共感し、地球市民の考え方が長崎に根付いたと説明。各国の指導者も市民の一員だとして、国連創設80年となる節目に、国連憲章の理念である多国間主義や法の支配を取り戻すよう求めた。