知人から来たスマートフォン関連の勧誘メールを示す女子学生=2月、県内(画像の一部をモザイク加工しています)

 改正民法・改正少年法が4月から施行され、成人年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられる。選挙権年齢を18歳とした2016年の改正公選法施行に続く形で、成人の年齢が変わるのは1896(明治29)年に民法が制定されて以来、初めて。国は「若者が自らの判断によって人生を選択することができる環境を整備するとともに、積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにする意義がある」とする一方、改正少年法では18、19歳の犯罪が厳罰化される。改正のメリットや課題を探るため、岐阜県内のさまざまな現場を訪ねた。

 「おきれいですね」。2年前の冬、県内の大学に通う女子学生(22)は、岐阜地域のショッピングモールで若い女性からいきなり声を掛けられた。エステティシャンという女性は「施術できる人を探している」と切り出した。相場より安かったため「1回だけなら」と応じた。

 店舗で施術を受けた後、「この場で定期契約すれば安くできる」と言われた。促されるがまま契約書にサインすると、3カ月分の3万円をまとめて支払うよう求めてきた。「安く施術してもらった後だったし、断りづらかった」。後日、3万円が負担だったため解約手続きを決意。店側に応じてもらったが、女子学生は「面倒なことにならなくてよかった」と振り返った。

 「悪徳でなくても、業者は社会経験が乏しい未熟な成人を狙っている可能性がある」と指摘するのは、県民生活相談センターの臼田祐二所長。センターが2018~20年に受け付けた相談のうち、20歳の相談件数は19歳の1.5倍ほどに跳ね上がっていた。20歳になると親権者など法定代理人による契約の取り消し(未成年者取消権)の対象ではなくなるため、契約トラブルが増える傾向にあるという。4月の民法改正では、その「成人」に新たに18、19歳が加わる。臼田所長は「20歳のグラフの山が、民法改正で18歳まで下がるかもしれない」と憂慮する。

 岐阜市内で脱毛エステを手掛ける別の業者の担当者は「美容ブームで利用者は増えていて、最近では高校生も多い」と明かす。この業者は、4月の改正法施行後も20歳未満と契約する際は必ず親権者などの同意書を提出させる方針だというが、担当者は「悪質な業者なら本人との契約だけで済ませるかも」とも話す。

 さらに、センターがより強く警戒するのは18、19歳がマルチ商法の被害に巻き込まれることだ。商品やサービスを契約し、次の買い手として友人を紹介するとマージンを受け取る仕組み。臼田所長は「勧誘者が親しい友人である場合が多く、若者は関係を壊すまいと断りにくい特徴がある」と指摘する。

 県の県民生活課は高校生向けに契約の注意点をまとめた冊子を配布したり、高校での出前授業を行う対策に乗り出している。センターなどによると、健康食品や化粧品、投資関係など、マルチ商法やマルチ商法まがいの取引による若者のトラブルは後を絶たないという。臼田所長は「コミュニティーが狭い18歳の高校3年生が対象にされれば被害が一気に拡大し、人間関係までもが壊されてしまう危険性もある」と警鐘を鳴らす。

 【未成年者取消権】 未成年者が親権者などの法定代理人の同意を得ずに契約した場合には、原則として取り消すことができる権利。民法5条、120条に規定されている。民法改正により、これまで未成年者として扱われてきた18、19歳が行使することはできなくなる。

(2022年3月21日掲載記事)

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