少年育成支援官の同僚と打ち合わせをする丹羽恭子さん(左)。「信頼できる大人として接してあげたい」と語る=県警本部

 施行が4月1日に迫った改正少年法で18、19歳は新たに「特定少年」とされ、20歳以上と同様に刑事裁判で裁かれる罪種が拡大する。処罰よりも立ち直りを重視してきた少年法の理念が軽視される懸念もあるが、これまで非行少年らと最前線で向き合ってきた岐阜県警は、この大転換をどう受け止めているのか。少年課は「健全育成や更生に重きを置く考えは、現場にとって何も変わらない」。対話や支援を重視する姿勢を強調する。

 そもそも、県内の非行少年は大きく減少している。県警少年課によると、県内の非行少年は2021年は372人(前年比6人減)で、10年前の約3分の1。罪を犯したとして県警が検挙・補導した刑法犯に限ると4分の1に減少した。

 少年法の改正で注目を集めているのは、将来罪を犯す恐れがあり保護や審判の対象となる「ぐ犯少年」の対象から18、19歳が外れることだ。ぐ犯少年への対応は、支援や福祉につながる一種のセーフティーネットとして機能しているとの指摘もあるが、県内で昨年、ぐ犯少年として児童相談所に通告されたのはわずか3人(前年比増減なし)。昨年までの3年間で18、19歳のぐ犯少年の家庭裁判所への送致件数はゼロだった。県警捜査員は18、19歳が枠組みから外れても「影響はほとんどない」と断言する。

 また、犯罪やぐ犯には至らないまでも飲酒や喫煙、けんかなどで補導される「不良行為少年」の扱いもこれまでと変わらないという。1996年から県警の少年補導職員(現・少年育成支援官)を続ける丹羽恭子さんは「非行に至らせないための愛の声掛け運動に変化は一切ない」と語る。「前倒しで成人扱いされても判断力がすぐに身に付くわけじゃない。18、19歳でも手を差し伸べ、ちゃんと支援していく」。県警は、18、19歳を補導した場合も父母らに連絡を入れる運用は維持する考えだ。

 交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷の書き込みやポルノの投稿など、少年非行の形が大人の目の届かないところでの犯罪行為や触法行為に変化しているとの指摘もある。だが、丹羽さんは、非行少年や不良行為少年の心は今も昔も大きく変わらないと考えている。「多くが自分だけで悩みや問題を抱えている。弱い部分をさらけ出せないから孤立し、不良行為に至っている」。少年に必要なのは、支援や成人として扱われる自覚。「小中学生の支援も充実させたい。そうすれば改正の意義も出てくる」と強調する。

 【ぐ犯少年】 将来、罪を犯す恐れのある少年。犯罪の前段階にある少年を審判の対象とし、社会への適応性を高めるのが狙い。18歳以上は家庭裁判所に送致、18歳未満は家裁か児童相談所に通告する。▽家に寄り付かない▽犯罪性のある人との交友関係や犯罪者らが関係する場への出入り▽一定期間に反復的に刑罰法令に触れる恐れがある行為―などが当てはまることが条件とされている。

(2022年3月29日掲載記事)

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