「やったぞ、一心君」。地元笠松の松本一心騎手(20)が地方勢(西日本)トップ通過でファイナリストの座を射止めた。岐阜県出身の土方颯太騎手(18)=兵庫=は総合3位でファイナル圏内突破。逆転の可能性を残していた明星晴大騎手(18)は「末脚不発」に終わった。
2025ヤングジョッキーシリーズ(YJS)のトライアルラウンド笠松(10月23日)は西日本地区の最終日。地方、JRAそれぞれ総合ポイント上位4人の若手騎手がファイナルラウンド進出を決めた。東日本地区は浦和(30日)が最終日となる。
名古屋、佐賀で2勝を挙げていた松本騎手は笠松で7着、3着にまとめ、総合ポイントを「87」に伸ばし、大差でファイナル切符を手中にした。今回で最後のYJS出場となる明星騎手は9着、7着でポイントを伸ばせず総合10位。悔しい結果となった。
笠松ラウンドには地方騎手4人、JRA騎手6人が参戦した。3R後、ファンの前で紹介式が行われ、駆け付けた応援団からは「一心、頑張れ」「明星、頑張れ」などと大きな声援が飛んだ。1戦のみ騎乗予定だった青海大樹騎手(佐賀)は出走馬取り消しで来場できず。若手ジョッキー10人が熱戦を繰り広げた。
■松本騎手2戦目、追い込み3着
地元期待の松本騎手は前日最終レース、単勝150倍の最低人気馬で差し切り勝ち。この日も5、6Rで連勝を飾り、最高のムードでYJS笠松を迎えた。5Rでは「日刊スポーツ極ウマくん賞」を勝ち、表彰式ではYJSに向け「自分の競馬場でもあり、一つでも上の着順を目指したい」と意気込みを語った。
第1戦の7R、松本騎手は3番人気ルクスソレイユ(田口輝彦厩舎)に騎乗。前走3着で先行力も魅力だったが、中団から脚を伸ばせず4コーナーで後退。直線で追い上げたが7着どまり。上位4着までJRA勢が独占。勝ったのは高杉吏麒騎手。セブンスリーローズ(加藤幸保厩舎)で好位から差し切った。2着に田山旺佑騎手が粘り込み、3着に吉村誠之助騎手が突っ込んだ。
第2戦の9Rは1頭除外、1頭取り消しがあって8頭立てとなった。松本騎手は5番人気キテヤイヨジ(後藤佑耶厩舎)に騎乗。「距離短縮で末脚を引き出してもらえれば」と陣営。後ろから3番目で4コーナーを回ると猛スパート。馬群を割ってラスト3Fをメンバー最速でよく伸びたが、2馬身4分の3届かず3着。それでも最後の直線に懸けた松本騎手の手綱さばきが光った。
3歳実績馬ミランミランに騎乗した森田誠也騎手(栗東)が3~4コーナーで川端海翼騎手(栗東)との先陣争いを制して押し切った。2着にはミカチャン騎乗の田山旺佑騎手(栗東)。
■「1位通過できたんで素直にうれしい」
トライアルラウンドを終えた松本騎手はトップ通過で晴れやか。最後も3着でポイントを伸ばし「先生の指示通りに3コーナー手前まで脚をためて、まくっていこうと。(前2頭の)ペースが速かったので流れが向くかなあと思ったが、勝った馬は強かった」と振り返った。
ファイナルラウンド進出については「1位通過できたんで素直にうれしいですね」とスマイル全開。「中央で乗れるので楽しみ。(中京でも騎乗するが)芝とかは乗ったことがないので、どんな感じになるか分からないが、一生懸命に乗るので応援お願いします」と力強く意気込みを語った。
■明星騎手はハナを切ったが撃沈
「笠松で頑張るだけですよ」とラストチャンスに懸けていた明星騎手は第1戦は7番人気ジュエリークローム(牝4歳、川嶋弘吉厩舎)に騎乗。スタートから積極策で先手を奪ったが、3コーナーで脚色が鈍り、最後の直線では後退し9着に撃沈した。
ゴール後「ハナへ行ったが(3コーナーを過ぎて)もう進んでいかなかった」と明星騎手。「勝たないと駄目だったので。ポイントでは2戦目を勝っても無理かも」と残念そう。この時点でファイナル進出は絶望的となった。
9Rでは3番人気オレンタノ(牡5歳、田口輝彦厩舎)に騎乗。鋭い差し脚が武器で展開が向けば一発もあるタイプだが、最後方から2番手で伸び切れず、7着に終わった。
2戦ともブービーで不完全燃焼。「駄目でした。(ラストチャンスで)勝ちにいくしかなかった」と地の利を生かしたかったが、ファイナル切符を逃した。それでも次の目標を聞くと「今からのレースです」と10Rのネクストスター笠松へと気持ちを切り替え、4月の新緑賞に続く重賞2勝目に挑んだ。
■岐阜県瑞穂市出身の土方騎手、家族らの声援を背に好騎乗
もう一人、注目したのは土方颯太騎手。穂積中(岐阜県瑞穂市)出身の18歳で昨春、園田でデビューし笠松では初騎乗となった。YJS出場の地方勢で最年少の明星騎手とは同期(誕生日は1日違い)。岐阜は地元でもあり、家族らが応援に駆け付けた。
昨年は西日本地方騎手でトップ通過し、ファイナル総合6位。今年はトライアルラウンド総合4位で笠松に挑み、1戦目は地方騎手最先着の5着に粘り込んだ。3番手から「いいポジションを取れたが、坂の下りで反応が悪くて下がっちゃったが、最後の直線では頑張ってくれた」。1戦目5着という結果について「総合ポイント的には最低ラインは取れたので、あと1レース、できたら勝ちたいです」とファイナル進出へ意欲を見せた。
2戦目、地方勢では松本騎手の3着に続く6着で8ポイント獲得し、総合3位でファイナル切符をゲットした。「今年も無事に行けることになり良かった。昨年のリベンジを果たせるよう結果を出したい」と闘志。笠松9Rでは「ペースは速かったが、前が思ったより残った。もっと付いていけばよかったが、競馬は難しいですね。ファイナルではもっといい着順で回ってこられるよう頑張ります」とにこやか。家族らの声援を背に好騎乗を見せた。
JRAの田口貫太騎手と同じく、ご当地出身ジョッキーではあるが「あんまり知られていないかもしれないが、岐阜の出身なんで応援していただければありがたいですね。(地元騎手として)明星騎手、松本騎手、僕でお願いします」とアピール。地方競馬通算87勝で、YJSは今年で最後になりそうだ。最後に「笠松では兵庫勢の活躍が目立ち、重賞初Vが笠松という騎手もいるので、また来てください」と声を掛けた。松本騎手と共にYJSファイナルでの健闘を期待したい。
■優勝はJRA勢、高杉騎手と森田騎手
優勝者のJRA勢2人は表彰式で祝福を受けた。第1戦をセブンスリーローズで制した高杉吏麒騎手は、総合2位でファイナルラウンド進出を決めた。「先日100勝を達成したので、ヤングジョッキーは今年で最後に。ファイナルに出ることができそうなので、しっかり無事に、けが無く頑張りたい」と意欲。
第2戦をミランミランで勝った森田誠也騎手は「馬が強いことは分かっていたので積極的な騎乗をして最後まで一生懸命追った。今回やっと勝つことができて本当にうれしいです」と喜びを語った。
■河原田騎手、吉村騎手はファイナル届かず
女性ジョッキーはJRAの河原田菜々騎手ただ一人参戦。第1戦はマーレインに騎乗し4着。「前めのポジションで競馬をしたかったが、後方からになった。もうちょっと早めに仕掛けたかった。ファイナルへは次で勝たないと行けないですよね」と語っていたが、2戦目は8着で総合7位。4位争いは混戦だったが、あと一歩届かなかった。
JRAの吉村誠之助騎手は1戦目、1番人気で3着。2戦目も上位人気馬に騎乗予定だったが、馬体故障で競走除外。ポイント「6」は獲得したが、3着以内ならファイナル進出が可能だっただけに気の毒だった。結果的に出走取り消しを含め2頭もゲートインできず8頭立てになった。しんがり負けの場合、他場なら1ポイントだが、笠松では3ポイントもらえる計算になってしまった。やはりジョッキー戦はフルゲートの12頭立てが望ましい。
ファイナルラウンドの開催は園田(12月18日)、中京(同20日)の2日間。JRAの芝コースを体験できるのは地方騎手にとって大きな魅力だ。
■YJS・西日本地区最終順位(P=ポイント)
☆地方ジョッキー
①松本一心(笠松)87P②塩津璃菜(兵庫)58P
③土方颯太(兵庫)58P④青海大樹(佐賀)54P
⑤阿部基嗣(高知)38P⑥山本屋太三(兵庫)34P
⑦新庄海誠(兵庫)34P⑧髙橋愛叶(兵庫)32P
⑨城野慈尚(高知)30P⑩明星晴大(笠松)28P
☆JRAジョッキー
①西塚洸二 90P②高杉吏麒 74P③古川奈穂66P
④大久保友雅59P⑤柴田裕一郎56P⑥田山旺佑54P
⑦河原田菜々51P⑧吉村誠之助51P⑨橋木太希48P
⑩森田誠也 47P⑪今村聖奈 43P⑫川端海翼43P
⑬松本大輝 41P⑭鷲頭虎太 41P⑮和田陽希29P
(同点は着順上位優先)
■明星騎手、地方競馬通算100勝を達成
デビュー2年目の明星騎手は22日の笠松8R、3番人気セカンドフラッシュ(牝3歳、後藤佑耶厩舎)で逃げ切り、地方競馬通算100勝(974戦目)を達成した。
ゴールインでは明星騎手応援の横断幕を掲示し、100勝目を確信したファンから「おめでとう」の声援も飛んだ。装鞍所に戻ってくると厩務員さんたちに祝福され、笑顔がはじけた。笠松の騎手では最年少の18歳。記念撮影では「100勝」のはずが、アレッ「010勝?」「001勝?」とプラカードの数字を入れ替えられ、先輩にいじられたりしながら和やかムード。笠松、名古屋のジョッキーたちが記念の1勝を祝福した。
笠松開催では8日間連続で勝利を飾り、急成長の明星騎手。リーディング3位(54勝)で、連対率は30%超え。減量騎手卒業の101勝目にも挑んだが、100勝達成で一服。最終日、新緑賞勝ちのゴーゴーバースデイでは10Rで悔しいハナ差負け。次開催へ持ち越しとなった。
■水野善太調教師、地方競馬通算500勝を達成
同じ2日目6Rでは水野善太調教師(61)が管理する2番人気エイシンセブン(牡5歳)で地方競馬通算500勝を達成した。高木健騎手が騎乗し、逃げ切り勝ち。開業して27年、6280戦目で大きな節目となった。主な管理馬ではキッポータロー(仙道光男騎手)が2004年の笠松オールカマー(SPⅢ)を制覇している。
■ネクストスター笠松、渡辺騎手&ヨサリが制覇
競走馬も未来へと輝くフレッシュな2歳馬たちが激突。重賞「第3回ネクストスター笠松」(23日)は、渡辺竜也騎手騎乗のヨサリ(牡2歳、笹野博司厩舎)が中団から鮮やかに差し切り。デビュー以来、無傷の4連勝で若駒のビッグレースを制覇した。笠松所属馬限定レースで1着賞金は1000万円。
高額賞金を狙った門別からの移籍組を圧倒した。リバーストリートとの一騎打ちを制し、渡辺騎手はゴールの瞬間ガッツポーズも出て「会心のレースでした。出負けしたが、道中も馬がすごい集中していた」。最後の直線では「筒井さんとの一騎打ちを楽しんでいた。馬の負けん気も強く、勝てると思って追った」と力を込めた。
無傷の4連勝でネクストスター笠松を制覇。「すごい賢いし背中も良い馬。まだ成長分ありますし、この先も楽しみ」。生え抜きのスターホース誕生で「北海道デビューの馬を負かすことができてうれしいし、これからもヨサリを応援してください」と呼び掛け。ファンの熱い声援と拍手を浴びた。
ネクストスター笠松では過去2回、ワラシベチョウジャとブリスタイムが優勝馬となったが、その後はともに勝てない日々が続いて、ネクストスターと呼べない戦績となっている。「笠松の新星」として期待が大きいヨサリは成長力を発揮し、中日本ネクストスター、全国区の兵庫チャンピオンシップへと大きな翼を広げていきたい。
☆ファンの声を募集
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里4挑戦編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。笠松競馬場内・丸金食堂、ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。









