デビュー45戦目、阪神12RでJRA初勝利を飾って誇らしげなハルオーブ
「はるお~、差せ~、勝った~!」。ハルオーブ推しの熱いファンたちの大声援に背中を押されて激走。中央・地方を駆け抜けてきたアイドルホースが岩田望来騎手の「神騎乗」で待望のJRA初勝利を飾った。これまで2着7回で「善戦マン」「シルバーコレクター」とも呼ばれてきたが、ついに大外一気の豪快なⅤゴールを決めた。
11番人気だったが驚異の差し切り。デビュー時の2着続きから遠くにかすんでいたが、難産の末に「1等賞」をゲット。熱烈に応援してきた「はるお民」ら全国のファンも歓喜。ネット上では「勝つことを信じていた」
「現地で応援していましたが、涙が止まりませんでした」などと祝福の嵐となり、Ⅹ(旧ツイッター)でトレンド上位入りした。
ハルオーブのすごい勝ちっぷり。2、3歳時には1番人気に9回も推されながら2、3着が多く未勝利戦を脱出できなかっただけに、悲願のJRA初Ⅴに対するファンたちの半端ない喜びの声。今回は元笠松所属馬で「中央1勝馬」となったハルオーブの激走と、はるお民の熱狂ぶりを特集した。
■笠松でも6回走り、1400メートルでは掲示板を外さず
ハルオーブ(幼名・愛称はるお)は美浦・武井亮厩舎の牡6歳。2年前の春~夏には笠松でも6回走ったが、1400メートル戦では掲示板を外しておらず。短距離で切れ味を発揮するタイプだった。中央→地方(岩手で3勝)→中央を渡り歩き、デビューして4年。「もう6歳かあ、中央でも勝ってほしい」という思いで応援してきたファンも多かった。
JRA初勝利を目指すスタート前のハルオーブと岩田望来騎手
■強烈な「鬼脚」で8頭ごぼう抜き、岩田望来騎手「やったぞ」
6月13日の阪神12R(3歳上1勝クラス、芝1200メートル)に勝利の女神がほほえんだ。予想各紙は「無印」で単勝69.7倍の伏兵馬だった。14頭立ての大外から最後にゲートイン。中団やや後ろから追走し、4コーナーでは9番手。最後の直線、先頭から5馬身以上離されていたが、大外に持ち出ちラスト150を切って大まくり。ファンの「はるおコール」が高まると、その声が聞こえたかのように秘めていた強烈な「鬼脚」で前の8頭をごぼう抜きした。
実況アナは「ハルオーブ一気に来た、ハルオーブだ、先頭でゴールイン」と馬名を5、6回連呼。1馬身抜けたゴールで勝利を確信した岩田望来騎手が「やったぞ」と左手をグイッと胸に当てて歓喜のポーズか。やはり関係者への初勝利プレゼントは格別の思いがあったようだ。
大外から豪脚を発揮しゴールイン。JRA初勝利のハルオーブと好騎乗を見せた岩田望来騎手
「短距離の差し馬」として1200メートル戦に適性を示し、最高のパフォーマンスを発揮。鮮やかに待望の初ゴールを射止め、デビュー時から応援してきた熱い「はるお民」たちのハートも突き刺した。「ついに待ちに待った瞬間が来たのか」。勝利の一瞬を人馬と共有し体感できた歓喜に震え、心臓が止まりそうになるほどの興奮度でうれし涙を流す女性もいたという。
勝ちタイムは1分08秒3(良)。2着に13番人気スピリットライズ(高杉吏麒騎手)、3着には4番人気ヴァージル(ミルコ・デムーロ騎手)が入り、馬単28万990円。3連単は⑭⑬⑧、的中票数60票で275万5710円の大波乱となった。勝ったハルオーブは、父ディーマジェスティ、母ハルダヨリ、母父ファルブラヴという血統。伯母に12年のTCK女王盃(大井)を制したハルサンサンがいる。馬主・村上卓史さん、生産者・藤沢牧場。中央で27戦1勝、地方を含めた通算成績は45戦4勝。
■ワカオライデンのひ孫、笠松でアオラキと対決しラチ沿い沸騰
ここでJRA復帰の足掛かりにもなった笠松時代のハルオーブの走りとファンの熱狂ぶりををちょっと振り返ってみると。
ハルオーブは笠松で活躍したワカオライデン(ライデンリーダーの父)のひ孫でもあり、一昨年には笠松の後藤佑耶厩舎に所属。「オグリの里」としてもその動向を注目してきた。笠松デビュー戦のアオラキとの直接対決では、ラチ沿いをファンが埋め尽くして熱い視線を浴びた。
2024年5月、笠松競馬場のパドックを周回するハルオーブ(手前)とアオラキ
ネット上でも応援するファンが多く、アイドルホースとして人気沸騰。地方移籍後は門別、園田で6戦しダートで苦戦。2桁着順が多く、クラブ法人でのファンドは解散され、サラブレッドオークションで生産牧場の藤沢牧場が落札した。
苦難の道を歩むことになったが、笠松初戦は2勝目を狙った白毛馬アオラキ(名古屋)との元JRAアイドルホース対決が実現。華麗な競演に熱烈なファンたちが大声援を送った。この頃は笠松所属馬が地元重賞をなかなか勝てずスターホース不在のなか、話題性のある人気馬が場内を盛り上げてくれた。
笠松でアオラキが勝ったレース。ハルオーブは悔しかったのか5着の枠場には入リたがらず、宮下瞳騎手は下馬した
■女性ファン、3着でも勝ったかのようなお祭り騒ぎ
ハルオーブの生産牧場(北海道・藤沢牧場)から当時のオーナー藤沢亮輔さんも来場。ライブ観戦で愛馬を応援された。ハルオーブには塚本征吾騎手が乗り、1400メートル戦「3着」でもゴール前は大盛り上がり。女性応援団は「勝利に等しいぐらいうれしい。未来が見えた」と勝ったみたいな喜び方でお祭り騒ぎとなった。アオラキは5着だった。
2度目の対決では、アオラキが2勝目を挙げて、宮下瞳騎手が騎乗したハルオーブは5着に終わった。ゴール後には、なぜか5着の枠場に入りたがらなかったハルオーブ。アイドル対決で負けたくなかったようで、ほほえましいワンシーンとなった。
返し馬に向かうハルオーブと岩田望来騎手
■岩田望来騎手「1200メートルがいい方に出た。追い出してジリジリ脚を使ってくれた」
阪神競馬場では「神騎乗」でハルオーブの潜在能力を引き出した岩田望来騎手。「さすがJRAリーディング2位」とファンもたたえる好騎乗を見せてくれた。
「1200メートルがいい方に出ましたね。ゲートも決まってうまく出てくれて、外枠から中に入れて、前にいい目標がいました」と中団やや後ろから、直線を向いてゴーサイン。「追い出してから、エンジンがかかってからもジリジリ脚を使ってくれた。いい形でレースを終えることができた。また1200メートルなら、やってくれると思います」と手応え十分。次走も騎乗して、スプリント路線でさらなる高みを目指していただきたい。
■武井調教師「どんなレースも一生懸命走る」村上オーナー「ハルオーブ、勝ちました!」
ジョッキーも厩務員もニコニコ顔で、愛馬のたてがみをなでながらウイナーズサークルで口取りの記念写真を撮影。ハルオーブJRA初勝利に沸騰。ネット上で語られた関係者やファンの喜びの声を集めてみた。
武井亮調教師「どんなレースもずっと一生懸命走るのがこの子のいいところで、それは競走馬に一番必要なものです」
ゴール後のハルオーブ。厩務員も笑顔で愛馬の勝利をたたえた
村上卓史オーナー「ハルオーブ、勝ちました! ファンの皆さま、ありがとうございました。なによりも武井亮厩舎スタッフ&岩田望来騎手に感謝です。お仲間の皆さまも祝福コメント恐縮です」
「ハルオーブへの心温まるお言葉、本当にありがとうございました! オーナーサイドも『いつかは』という思いでいました。岩田望来騎手の見事な手綱さばきで素晴らしい瞬間を迎えることができました。今後も武井亮厩舎の所属馬として走り続けます。引き続き、はるおを見守ってあげてください」
藤沢牧場・藤沢亮輔さん「走るのが好きだったからなあ。走る姿がいつも楽しそうに見えたのは間違いじゃなかった。みんながバトンをつないだ勝利。おめでとう、はるお」
西山茂行さん(馬主)「地方競馬での再出発の難しさについて、そこで3勝も楽ではなく、なかなか中央へは戻れません。地方競馬場帰りの馬たちの惨状を見ると、中央の3歳未勝利で足りなかった馬が、一つ上のクラスで活躍できるとは思えないのが普通です」
「今回のハルオーブはそばで見ていて、もう奇跡に近い勝利です。馬主の執念、地方競馬の調教師の心意気、再度引き受けた武井調教師の男気と心意気。このレースの選択と岩田望来騎手の展開を読み切った神騎乗。本当におめでとうございます」
笠松競馬でもおなじみの亜咲花さん「ハルオーブの見事な差し切り、本当に感動しました。中央初勝利、おめでとうございます」
落ち着いて闘志を秘めた表情でパドックを周回するハルオーブ
■「1勝クラスの壁を破って勝つと」「アオラキも天国から祝福」
初勝利の直後、X(旧ツイッター)などのSNSではハルオーブの愛称である「はるお」がトレンド上位に浮上した。阪神競馬場では、勝利の瞬間に泣き崩れる女性ファンの姿も見られ、前走で騎乗した酒井学騎手もウイナーズサークルへ祝福に駆け付けた。デビュー時から毎レース駆け付けて声援を送ってきた「はるお民」の皆さんも、ジョッキーや厩務員らと待ち焦がれた初勝利の喜びに浸った。
☆「はるお民」のファンたち
「中央初勝利のパドック周回では、落ち着きと闘志のバランスがとても良かった。はるおがいつか1勝クラスの壁を破って勝つことは信じていたけど、それがいつでどのジョッキーなのかが謎で…。そのナゾナゾがやっと解けた」
「はるお、本当に良かったなあ。生まれた時から見てるからかな。泣きそうになったよ。いろいろあったけど、一番ははるおが諦めずにいたからだよな。本当におめでとう。そして、ありがとう」
「アオラキも天国から祝福してるねきっと。どうしても取れなかった中央での一番星…地方で頑張ってきたご褒美だね。おめでとう」
「はるお~!日高時代の2歳からずっと応援してたよ~。やっとやっと中央1勝おめでとう! 勝てなくても諦めずにいてくれた馬主さんに感謝感謝です」
ゴール前強襲。先行馬を一気に抜き去ってゴールへ向かうハルオーブ(競馬ブック提供)
■「最後の差しかっこ良かった、鳥肌立った」実況アナ「こんな場面に立ち会えるなんて」
「最後の差し、めちゃくちゃかっこ良かったよ、鳥肌立った」
「実況が単勝握ってるような力の入りよう」
実況アナ(木村寿伸さん)「阪神最終12レースを実況していたら、園田でも実況したことがあるハルオーブが待望の初勝利! いやーこんな場面に立ち会えるなんて、うれしい」。やはりいつも以上に力が入ったようだ。
■「地方のダートでも頑張って、感慨深い」「こんなにも感動、久しぶり」
地方→中央で勝利「これがオグリキャップですか」
「苦労に苦労を重ねて地方のダートでも頑張って、感慨深いなぁ」
「こういう一瞬のキレを使う馬で、望来は最強」
「はるおくん!苦節4年、待ちに待った中央初勝利おめでとう!」
「こんなにも感動したのは久しぶりだ」
「みらいマジックを信じてよかった」
■「ハルオーブの可能性を諦めなかった執念の結実」
「ファンも陣営もこの1勝をどれだけ待ち望んでたか。なかなか未勝利戦抜けられなくて、地方のダートで走ってようやく中央帰ってきて、それでもうまくはいかない中でつかんだ結果。誰もハルオーブの可能性を諦めなかった執念の結実」
「中央1勝でアイドルホースオーディション(ぬいぐるみ化)の要件満たしたのも地味にデカいね」
今後も芝のスプリント戦で活躍が期待されるハルオーブ
■「後ろのお姉さんが叫んでて、勝ったら泣いてたよ」「仕事がつらいとき、はるおの頑張りをいつも支えに」
「東京競馬場で見てた。4角回って差してきたとき、後ろのお姉さんが叫んでて、勝ったら泣いてたよ」
「1勝馬がⅩでトレンド入りだよ。どれだけ多くの人に応援されてたかよく分かる。諦めなければ道は切り開ける」
「差し切った時、全身鳥肌立ったわ。おめでとう」
「仕事がつらいとき、はるおも頑張ってるんだからといつも支えにしてました。勇気をもらってました。本当にうれしいです」
「諦めないってすごいパワーだよな。おめでとう」
■2勝クラス、真夏のスプリント戦で雄姿を
ハルオーブJRA初Ⅴの勝因は、短距離の差し馬が大外からもまれずに気分良く走ったことにあった。10キロ減でも引き締まった体になり、中団につけることができた。手応え良く直線を向くと、追われてからの伸び脚は豪快で、大外から鮮やかに突き抜けた。前崩れの展開を読んで仕掛けどころドンピシャの岩田望来騎手の手腕が光った。
ここ1年間は「掲示板」には届いていなかったが、1着馬から0秒3など差のない競馬を続けていたし、1勝クラスの流れにも慣れてきていた。やはり距離短縮が良く、1200メートルなら十分に勝負できる潜在能力を秘めていた。
ハルオーブの弟で、名古屋競馬にいるハルノート(牡4歳、宮下瞳厩舎)は2月に初勝利を挙げて14戦1勝。17日にはルーキー近藤颯羽騎手の騎乗で7着だった。今後、笠松に参戦してくれれば、2勝目のチャンスも広がりそうだ。
ハルオーブの次走は2勝クラスに上がるが、岩田望来騎手との強力タッグでスプリント戦に向かいたい。ちょっと休んで激走の疲れを癒やし、次走はローカル開催で、新潟(8月)の1200メートル戦か「千直」なども視野に入ってきそう。真夏のスプリント戦で再び雄姿を見せてくれれば、「はるお民」がラチ沿いに押し寄せて熱い視線と声援を送ってくれることだろう。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」への感想や要望などをお寄せください。 騎手や競走馬への応援の声などもお願いします。コラムで紹介していきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里5青春編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」「4挑戦編」に続く第5弾「青春編」では、笠松競馬場などでの「砂上の格闘技」で完全燃焼した人馬たちへの惜別の思いも込めた。巻頭はシンデレラグレイ賞&トークショーでのウマ娘ファンの熱狂ぶり、続いて日本競馬界最大のヒーローであるオグリキャップ、アオラキ&ハルオーブ、ストーミーワンダー、ハマちゃんなどを特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。









