笠松競馬で「1日8勝」を達成するなど、勝利を量産している渡辺竜也騎手

 

 「令和の記録男」がまたやってくれた。笠松の渡辺竜也騎手が爆発力を発揮して「1日8勝」を達成。JRAの武豊騎手とクリストフ・ルメール騎手、地方競馬では岡部誠元騎手の「日本レコード」に並んだ。渡辺騎手は騎乗数9鞍で8勝目を達成。武豊騎手ら3人の10鞍8勝を上回り、レジェンド超え。最少騎乗回数での快挙となった。

 ■「V量産の連チャンモード」に突入

 7月8日の笠松競馬、渡辺騎手は午前中の1R、2Rを連勝。この時点で「序盤のレースで勝てると乗っていけますね」と、いつも勝利の流れをグイッと引き寄せる絶対エースは「V量産の連チャンモード」に突入した。

重賞ハンターとしても全国区で活躍を続ける渡辺騎手

 

 ランチタイムの5Rまでに騎乗機会3連勝。6Rは3番人気5着で「ちょっと一服」したが、7R、9~12Rと騎乗機会5連勝を飾った。

 9R「落合宿特別」(JRA3歳未勝利、東海地区3歳2組)は、笠松でのJRA交流戦では珍しく12頭立て。ただ中央の騎手は参戦せず。笠松、名古屋のトップジョッキー6人(中央馬騎乗)による高額賞金ゲットのチャンスにもなった。

 中央の馬が勝てば450万円(主催者規定の賞金とJRAからの差額補助金を含めて)という重賞並みの1着賞金はやはり魅力で、熱いレースを繰り広げた。渡辺騎手はマダムカマラード(牝3歳、宮徹厩舎)に騎乗し、5馬身差であっさり逃げ切った。

渡辺騎手1日8勝目となった12R・ひこぼし特別。自厩舎のソレエスピアージャで追撃をしのぎゴールへ

 ■8勝目も自厩舎の馬、1番人気では勝率53%

 その後の10~12Rも単勝1倍台で難なくクリア。思いがけない日本記録に挑むことになった最終12R・ひこぼし特別では、自厩舎のソレエスピアージャに騎乗。加藤聡一騎手の猛追をかわしてゴールイン。レース実況では「渡辺騎手、9Rから4連勝できょう8勝目。1日7勝の経験はありましたが、なんと8勝!」と西田茂弘アナも驚きの声を上げ、歴史的な瞬間となった。

 1番人気で7勝。2番人気で1勝。このうち笹野博司厩舎の馬で5勝。「いい馬に乗せてもらっていますからね」といつも謙虚な渡辺騎手だが、1番人気を背負って勝つのは負けられないプレッシャーも大きいのでは。

 地方トップジョッキーの1番人気での勝率は50%前後で、渡辺騎手は今年53%と高率だ。ルメール騎手は1番人気で勝率は約37%(過去5年)で地方勢と比べて低いが、多頭数の上に過剰人気を背負う傾向もあり、馬券作戦では要注意かも。

 渡辺騎手にとって1日3勝、4勝なら「平常運転」。これまでは1日7勝(24年10月、11月)の笠松記録を保持していたが、さすがに8勝は初めて。2日間での騎乗機会8連勝は24年2月に達成しており、7連勝だったアンカツさんの記録を更新、岡部誠騎手の記録に並んだ。

「やったあ」と歓喜。ケイズレーヴでオグリキャップ記念を制覇した渡辺騎手

 ■「馬が良かったですね」と偉業達成、2日間で12勝

 今回の1日8勝という日本記録達成。「きのう、すごかったね。何が良かったのか」と聞くと渡辺騎手は「1番人気が多かったですし、馬が良かったですね」。偉業達成にもマイペースで、常に次の1勝に挑み続けている。

 8勝達成の翌日は騎乗変更があったため、1Rと7Rでも代打騎乗。前日の5連勝から3着に敗れ、連勝記録は途切れたが、次の3Rでは4馬身差で完勝。1日4勝と勝利を積み重ね、2日間で12勝と「笠松のエース」を改めて全国のファンに印象付けた。

盛岡重賞「岩鷲賞」ではルコルセールで七夕Vを飾った渡辺騎手(岩手県競馬組合提供)

 ■盛岡重賞でも七夕V、「夏男」が爆発的エネルギー

 7日の盛岡重賞「岩鷲賞(がんじゅしょう)」では、菅原勲厩舎の8歳馬ルコルセールで七夕Vを含め2連勝、8日には9戦8勝。渡辺騎手は2日間で11戦10勝という驚異的なペースで、勝率9割超えの固め勝ち。太陽ギラギラの真夏日に突入しても集中力を発揮。「夏男」が爆発的エネルギーで白星量産態勢に入った。

 岩鷲賞で騎乗したルコルセールは重賞4連勝。「(前走騎乗の)石川倭さんにもいい馬だよと言われていて、返し馬でもいい馬だあなあと。(1200メートルの)ワンターンでも賢くて反応が良く、内容の濃いレースでした」と騎乗馬の走りをたたえた。

笠松競馬ファンによる個人協賛レースを勝ち、サイン入り特製ゼッケンを掲げる深沢杏花騎手

 ■深沢杏花騎手は逃げ切りV、「夏女」の輝き

 梅雨明けも近づき、9日の笠松競馬場装鞍所エリアにある温度計は34度を示しており、ジョッキーからも「暑いですねえ。これから9月まで続きますね」の声も。過酷な戦いが続くなか、笠松のアイドル的存在の深沢杏花騎手はレースの合間には、タオルなどで暑熱対策をしながら移動していた。

 深沢騎手は4Rの結婚記念の個人協賛レースでは5番人気オイランブチに騎乗し、暑さを吹き飛ばす軽快な逃げ切りVを決めた。短期放牧明けでリフレッシュし、最後まで頑張ってくれた馬に感謝。協賛したファンの皆さんと記念のサイン入りゼッケンを手にしてにこやかだった。やや軽い馬場状態を味方にして、最終日にも逃げ切り勝ち。パドック解説者も「深沢騎手、乗れていますね」との声。これからの暑い季節、2キロ減も生かして「夏女」として輝きを増していきたい。

 ■吉原寛人騎手に続く「さすらいの重賞ハンター」

 渡辺騎手はデビュー10年目を迎え26歳になったが、重賞勝利も26勝で年齢に並んだ。オグリの里では昨年、吉原寛人騎手(金沢)に続く全国区での「さすらいの重賞ハンター」として注目。北海道から九州まで各地の調教師から騎乗依頼が増え「優勝請負人」として結果を残している。

昨年8月、盛岡・オパールカップで渡辺騎手&プチプラージュが鮮やかに芝重賞を制覇した(岩手県競馬組合提供)

 この1年間に重賞の勝利数は「12」と大ブレーク。特に盛岡コースでは、以前から笠松勢にとって相性が抜群。渡辺騎手は自厩舎・プチプラージュでのオパールカップVをはじめ、いしがきマイラーズ、OROカップ、ハヤテスプリント、岩鷲賞も制覇し5勝の大活躍を見せてくれた。

 佐賀では2歳馬サキドリトッケンでネクストスター佐賀とカペラ賞を制し、佐賀城下スプリントを含め3勝を飾った。門別でポラリスサマースプリント、金沢でお松の方賞、名古屋ではトリトン争覇を勝った。笠松でもヨサリでネクストスター笠松を勝ち、ケイズレーヴでオグリキャップ記念も制覇した。

 ■地方と中央という壁を取っ払った記録

 1日最多勝記録ついて深掘りすると。JRAでは2002年12月、武豊騎手が阪神(10鞍)で8勝を達成。ルメール騎手は2回あり、16年11月に東京(10鞍)で、19年8月に札幌(12鞍)でそれぞれ8勝を挙げた。地方競馬では岡部誠元騎手が19年2月に名古屋(10鞍)で8勝を達成した。

 今回の渡辺騎手の「9鞍8勝」は、歴代の達成者で最少騎乗回数。地方と中央という厚くて高い壁を取っ払っての素晴らしい記録達成で「武豊&ルメール騎手超え」となった。

オグリキャップ記念を制覇した渡辺騎手。表彰式で花束を手に喜びに浸った

 地方競馬では1日の騎乗数に制限(南関東や兵庫などは原則1日8鞍までなど)を設けている主催者が多いため、1日7勝以上を挙げることは極めて困難。矢野貴之騎手(大井)が7勝 (2025年3月)を挙げて大井、南関東記録。吉村智洋騎手も7勝(23年1月)で園田、兵庫の新記録、高知では赤岡修次騎手が7勝を4回も達成している。

 JRAでの連続騎乗機会勝利は7連勝(武豊、ルメール、モレイラ)。地方では岡部騎手と渡辺騎手の8勝が最高だ。

 ■「原則1日9鞍まで」の笠松で「10鞍」騎乗の珍記録も

 24年2月、渡辺騎手は2日間で8連勝。笠松記録である安藤勝己騎手の「7連勝」(1997年10月)を突破。川原正一騎手が持っていた年間最多勝記録の更新に続いて、圧巻の8連勝で「レジェンド超え」を果たした。

 笠松では同一騎手の1日の騎乗回数は原則9回以内、1日の連続騎乗回数は6回以内という規定がある。ところが、渡辺騎手は9日には当初8鞍の予定だったが、10鞍に騎乗して4勝。これは井口裕貴騎手(体重調整失敗)からの騎乗変更による特例措置。記録男が笠松で「1日10鞍」騎乗という珍記録にも名前を刻んだ。

 渡辺騎手、これからも目の肥えた競馬ファンを「アッと驚かせる」快記録を達成してくれそうで、末恐ろしい名手である。

ぎふ清流カップは杉浦健太騎手騎乗の兵庫・ベラジオソニックが制覇した。2着は笠松のリバーストリート

 ■ぎふ清流カップは兵庫・ベラジオソニックV、笠松・リバーストリート2着

 優勝賞金1000万円の西日本地区交流の3歳重賞「第9回ぎふ清流カップ」(1400メートル、SPⅠ)が9日、笠松競馬場で行われ、6番人気の兵庫・ベラジオソニック(牡3歳、諏訪貴正厩舎)が、デビュー17年目の杉浦健太騎手の騎乗で好位から差し切った。

 地元馬で9番人気のリバーストリート(牝3歳、田口輝彦厩舎)=筒井勇介騎手=が2着に粘り込み、兵庫のバウヴォーグ(牡3歳、新子雅司厩舎)=笹田知宏騎手=が3着に突っ込んだ。断トツ人気馬が飛ぶ激戦となり、3連単は21万4550円と波乱を呼んだ。

ぎふ清流カップの1周目。高知のエンドレステイルが先手を奪い、リバーストリート、アースジャッジも先行

 ■断トツ人気アースジャッジ、まさかの12着

 高知のエンドレステイルに吉原寛人騎手、兵庫のゴーゴーツヨシに小牧太騎手の3000勝超え名手も参戦。トライアルの新緑賞圧勝で断トツ人気(単勝1.5倍)のアースジャッジ(安部幸夫厩舎)=丸野勝虎騎手=は2コーナーから失速し、まさかの12着。4コーナーを回ってエンドレステイルの2番手を追走していたリバーストリートが一瞬先頭を奪い、筒井騎手&田口厩舎のコンビが地元の意地を見せた。

 この日も絶好調で4勝を挙げていた渡辺騎手はヨサリ(3歳牡、笹野博司厩舎)に騎乗。大外から好位4番手をキープし、地元期待馬にスタンドから大きな声援が飛んだ。

 最後は杉浦騎手の手綱に応えたベラジオソニックが大外から突き抜けて兵庫ユースカップに続いて重賞2勝目。真夏のような日差しの下、12頭による電撃戦を1分28秒0の好タイムでスカッと駆け抜けた。ゴーゴーツヨシが4着、ヨサリは5着だった。

 東川慎騎手が「掲示板を狙いたい」とオレオスでラスト3F最速の38秒9で突っ込んだが7着が精いっぱい。ベラジオファントム=明星晴大騎手=もよく追い上げたが6着どまり。望月洵輝騎手騎乗のミモザノキセツは重賞4勝馬で実績随一だったが、後方追走のまま11着に終わった。

ぎふ清流カップの表彰式でにこやかな杉浦騎手ら

 ■杉浦騎手「勝負どころで手応えが良く、はじけるなあと」

 杉浦騎手は「距離は1400メートルがベストでバッチリでした。勝負どころで手応えが良くて、はじけるなあという感じで強かった。前めのインで絶好のポジションを取れた時点でいけると。(笠松では)これまで惜しいレースもあったが、やっと勝てて良かったです。(高校野球好きで)予選も始まって僕の季節になってきたので頑張ります」と笑顔もはじけていた。

4コーナーを回って一時先頭に立ち、リバーストリートを2着に導いた筒井勇介騎手

 ■4コーナー回って先頭、筒井騎手「ちょっと夢を見ましたね」

 2着のリバーストリート。先行力があり笠松のクイーンカップを勝ち、東海優駿4着の実力馬。専門紙は無印扱いで軽視されていたが、正攻法で堂々の2着。筒井騎手は「反応良く出てすんなり2番手につけられたのが良かった。行った行ったの馬場で、前に吉原さんの馬がいたので、早めにプレッシャーをかけた。(4コーナーを回って先頭に立ち)ちょっと夢を見ましたね。並ぶ間もなくかわされましたが、本来の走りですんなり行って頑張ってくれた」と9番人気での好走を喜んだ。最後は末脚を伸ばせなかったが、笠松勢最先着の2着で存在感を示してくれた。

堅実駆けのヨサリと渡辺騎手のコンビ、健闘したが5着だった

 5着のヨサリは2走前、京都の芝コースでラスト3F33秒台の豪脚を見せ、ダートでは全て3着以内と安定感抜群だったが、初めて馬券圏外に。戦いを終えて5着という結果について渡辺騎手は「内容は良かったです。成長も感じましたし」と、力を出し切った愛馬の健闘をたたえていた。

 渡辺騎手、10日にはコパノエミリア(牝4歳、名古屋・宇都英樹厩舎)で兵庫サマークイーン賞に挑戦。前走・お松の方賞(金沢)を勝ち、園田はのじぎく賞など重賞2勝の相性いいコース。笹川翼騎手騎乗のケテンドリーム(大井)が勝ち、塚本征吾騎手のサノノエスポ(高知)がアタマ差2着。期待のコパノエミリアは3番人気に支持されて、5番手から渡辺騎手が追撃し、3着に食い込んだ。


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