愛称「まめちゃん」のスティルアイライズと松本一心騎手。「ガチャピン風メンコ」でのかわいい姿に手を振るファン
「まめちゃん」の愛称で人気のスティルアイライズ(牝3歳、川嶋弘吉厩舎)が6月24日、笠松2Rに登場。向正面ではポツンと1頭、大きく引き離されてしまい最後方からの競馬となった。それでも最後の直線ではよく追い込んで、上がり3Fのタイムはメンバー中3位タイ。笠松の新たなアイドルホースは末脚を磨いて、入着(5着以内) そして初勝利を目指して奮闘を続けている。
■「ガチャピン風メンコ」で愛らしい姿
スティルアイライズはウオッカの孫でダイワスカーレットのひ孫という良血。パドック周回から返し馬に向かうと、必ず外ラチの方に顔を向けて「ごあいさつ」。間近で応援するファンを喜ばせている。
今回は「ガチャピン」のように目元が半開きになったメンコ姿でレースにも挑み、かわいらしさでファンを魅了。まめちゃんは砂をかぶることも嫌がらないそうだが、物見をせずに集中力をより高めるためか。またデザイン性も加味してファンを楽しませたり、個性を引き出すためでもあるようだ。これまでレースでは外していたメンコを装着して出走した。
パドックを出て返し馬に向かうスティルアイライズ
笠松は馬とファンとの距離が非常に近いのが特徴で、まめちゃんの人懐こいファンサービスに「推し」たちのハートもドッキュン。「こっちを見てくれた」と手を振りながら、スマホで撮影する女性たちの姿があった。またネット上には「きょうもお客さんの方へ来て、みんなにお顔を見せてくれました」と感激した声も寄せられた。
天国に旅立ったアオラキも笠松の返し馬では「めっちゃ、こっち見てくれる」と推しファンを喜ばせた。ラブミーチャンもそうだったが、アイドルホースたちはお客さんを大事にする天性の素質があるのだろうし、その姿に魅せられて人気がより高まった。
■後方待機策、最後の直線で追い上げ
JRAから転入し、笠松でのレースは5戦目。脚質的には「伸びず、ばてず。同じペースで走れる馬」と松本一心騎手。これまで先行2番手からでは、スパートした他馬に付いていけず末が甘くなるレースが続いた。
1400メートル戦の1周目、後方から追走するスティルアイライズ
このため、2走前から控えて後方待機策で挑んでおり、最後の直線で追い上げる姿勢を見せてファンも期待を膨らませている。やはり前に行って失速するよりは、前進気勢を見せて後方から1頭でも前の馬を追い抜くレースは希望を持てるものだ。
まめちゃんは8着が続いていたが「一歩前進で7着以内に」と出走する以上は良い着順を願うファンたち。暑さも影響して食欲が落ちたのか、馬体重はマイナス5キロの427キロでゲートイン。スタートで左によれてやや出遅れた。先団6頭と後方3頭にばらけた展開。向正面ではしんがりから追走。「大丈夫か」とファンをハラハラさせたが、脚をためて3~4コーナーから最後の直線でスパートする作戦だった。ただ今回は3歳5組にクラスが上がり、JRAや兵庫、金沢からの転入初戦馬が6頭と厳しい戦いになった。
向正面では1頭だけポツンと引き離されていたが、脚をためて3~4コーナーからスパートへ
■自己最高タイムの1分34秒8、元気な姿で完走
それでも4コーナーを回って最後の直線、ばてない強みを発揮し追い込む姿勢を見せてゴールイン。9頭中7番人気で8着には終わったが、元気な姿で完走し「けがなく無事に」と願い、ラチ沿いに駆け付けた「まめちゃん推し」のファンたちを安心させた。
松本一心騎手は「早く仕掛けすぎたら止まるので、前の動きを見ながら」と適性を模索。5戦目も後方待機策で、3~4コーナーから徐々に追い上げ。ラスト3Fは勝ち馬と同タイム。メンバー中3位タイの39秒6で駆け抜け、1400メートル自己最高タイムの1分34秒8をマークした。
メンバー3位の上がりタイムで差し脚を発揮しゴールを目指すスティルアイライズ
4戦目までは41~43秒台だったラスト3Fが一気に39秒台。「先行」から「差し」へ脚質転換ともいえる走りっぷりで活路を見いだそうとしている。現在は中央からの移籍組が多い3歳戦で、着順的には6着が最高だが、走りっぷりは徐々に良くなっている。
■松本一心騎手の成績アップ、「まめちゃん効果」も
主戦の松本一心騎手は笠松のホープで伸び盛り。6月13日、21歳になったばかり。オグリキャップ記念シリーズでは8勝を挙げて笠松リーディング6位に急浮上した。
主戦の松本一心騎手は地方競馬通算100勝達成セレモニーで重賞Ⅴにも意欲。父の松本剛志騎手がプラカードを持ち、ファンらと祝福した
スティルアイライズに騎乗するようになった4月は3勝だったが、積極的な先行策が増えて5月6勝、6月は3連勝を含む9勝と上り調子だ。タイミング的にはNHK「ドキュメント72時間~走れ!さすらいの地方競馬」でスティルアイライズがヒロイン的な扱いで紹介され、ファンの熱い視線をより集め、一心騎手も注目されるようになった。
5月8日の番組放送後、一心騎手は笠松での開催13日間に15勝。4月までの34日間で14勝に比べてグーンと成績アップ。もちろん本人の調教からの努力が一番だが、ファンの声援が大きくてモチベーションが上がった「まめちゃん効果」もあったのかも。地方競馬通算100勝を達成し、勝利を積み重ねて減量騎手を卒業。負担重量はこれまでより1キロ増となった。100勝達成セレモニーでは、父の松本剛志騎手がプラカードを持ち、ファンらと祝福。一心騎手は「後輩に負けないように」と重賞Ⅴにも意欲を示した。
まめちゃんについては「元気いいですよ。着狙いであとは展開次第ですね」と話していた一心騎手。前走も休まず出走しており、コンディションは良好だ。あとは脚力アップで一つでも前の着順につなげていきたい。
パドックで整列したジョッキーたちとレースに挑むスティルアイライズ(右)ら各馬
■調教師ら「一番は無事に帰ってきてほしい」
厩舎スタッフの愛馬たちへの思いはどうなのか。笠松競馬の調教師や厩務員らは「毎日調教し管理して、その馬がレースで勝ってくれることがみんなの喜びだし、一番は無事に帰ってきてほしい。けがをして競走中止になったら悲しいことだから」と語っていた。成績も大事だが、たとえ1勝できなくても、関係者のサポートとファンの夢を乗せて、やはり元気に走り続けてくれることが第一。競走馬の存在は競馬場にとって「生命線」であり、1人で4、5頭の世話をしている厩務員にとっても「生きる糧」であるからだ。
中央競馬と違って地方競馬では100連敗、200連敗以上した馬でも無事に走り続けてくれれば、見捨てられずに丈夫で長持ち。ハルウララ(高知)のように連敗記録で注目を集めて競馬場存続に貢献した馬もいる。スタッフやファンにも愛情を注がれ、大切に育てられてきたのだ。
東スタンド上部には、スティルアイライズを応援する横断幕が並んだ
まめちゃんはデビューしてまだ8戦。小さな体でも頑張って立ち上がり、諦めずに走り続けている姿はファンクラブの会員さんをはじめ多くの「推し」たちの共感を呼んでいる。レースでは毎回、スタンドに横断幕を掲示して応援。熱い思いが人馬の背中を押して、頑張りにつながっている。
■C級未勝利戦なら1分35秒台で勝つ馬も
3歳馬は秋(10月)には古馬のレースに編入され、相手関係は緩和される。前走、自己最高の1分34秒8で走り抜けたまめちゃん。このタイムで、対戦相手が楽になるC級未勝利戦などで走ったらどうなのか。レース当日、コースは良か重か(笠松では重の方が1秒ほど速くなる)、内か外か(砂圧などで脚抜きが変化)。開催ごとに変動する馬場状態によって走破時計は違ってくるが、C級の勝ちタイムは1分32秒前後。ただC級は1組から下位の組まで幅広く、なかには1分35秒台で勝利を飾る馬もいる。
昨年10月のC級28組の勝ちタイムは1分35秒5、11月のC級未勝利C23組が1分35秒0。今年5月のC級未勝利C14組では、まめちゃんに騎乗している松本一心騎手がヒダカサンミャク(加藤幸保厩舎)で逃げ切り、勝ちタイムは1分35秒1だった。35秒台でも「最弱の組」なら勝利を挙げられるということだ。
主戦の松本一心騎手と返し馬でスタンド前を駆け抜けるスティルアイライズ
■メンバー次第では「まめチャンス到来」、ファンに希望
次走につながる末脚を発揮したまめちゃん。先頭からは大差をつけられ、ネット映像ではラスト200メートルが映っていないが、メンバー中3位だった最後の脚は際立っており、よく追い上げた。4戦連続の8着に終わったが、ファンも希望を持てる走りを見せてくれた。
今後も差し脚を伸ばすレースを続ければ、入着から勝機が巡ってくるかも。競馬はやはりメンバー次第で、相手関係に恵まれれば、前走1分34秒台で走ったまめちゃんも勝つチャンスは十分にありそうだ。秋競馬で「まめチャンス到来」となるかも。
「実りの秋」を迎えるためには、蒸し暑い夏を乗り切ることが条件になる。2年前、アオラキとハルオーブは8月に浦和、岩手へと移籍したが、まめちゃんには夏を無事に過ごして秋競馬でも笠松で愛らしい姿を見せてほしい。立地条件も日本の真ん中で、全国のファンが応援に駆け付けやすいメリットもある。夏休みなどで北海道や九州からも熱いまめちゃんファンが駆け付け、ラチ沿いで声援を送ってくれることだろう。
■地方では月に2走、自らの餌代を稼ぐためにも
まめちゃんは笠松転入後の3カ月間に5回も走ってくれた。1、2カ月に1回走っていればよかったJRAのレースに比べれば「走りすぎ」と感じるファンも多いようだ。これは中央に比べて、地方の出走手当が低いためでもある。
中央での厩舎への月額預託料は60万円超で、出走手当は1回55万円。笠松では預託料15~22万円と安いが、C級の出走手当は1回8万円で中央の7分の1ほどだ。
笠松など地方競馬では月に2回ほど走るのが基本で、自らの餌代を稼ぐためでもある。丈夫なまめちゃん。仕上がりが順調なら7月にも1、2回走ってくれそうだ。
まめちゃん推しファン手作りのステッカーなど「応援まめグッズ」
■「一戦ごとに強くなってます」「最後の追い込みすごかったね」
場内では、まめちゃん推しのファンが手作りしたステッカーなど「応援まめグッズ」も登場。ネット上では、まめちゃん応援の声が多く寄せられた。
☆まめちゃん応援の声(ネット上)
「今回から負担重量1キロ増えたが、 レース走破時計、上がり3F 共に自己最高記録。まじめな頑張り屋のまめちゃん、お稽古頑張ってる証しですね。一戦ごとに強くなってます」
「まめちゃん最後の追い込みすごかったね! 頑張ったね」
「1戦ごとにできることが増えてます。4コーナーから中団に追いつけるようになり、次は直線で2頭 抜けるかも! まめちゃんと厩舎さんが力を合わせて頑張ってるのですね」
「まめちゃんがこんなに頑張ってるんだ、私も頑張らないと」
「無事に完走できてほっとしました」
「ちょっとずつ成長してる」
「元気に帰ってきてくれてありがとうね」
「頑張るまめちゃんに元気をもらってます」
まめちゃんは熱烈なファンたちに「私も頑張ろう」という元気パワーを与えている。中央で上位に入着していたアオラキやハルオーブは笠松でB級、A級のレースだったが、まめちゃんはまだ3歳戦でのチャレンジ。夏場を乗り切って、チャンスが広がる秋のレースへ。最後の直線での末脚を磨いて、C級の階段を1段ずつ駆け上がっていきたい。
笠松で3着、JRA(阪神)で初勝利を挙げたハルオーブ。「アイドルホースオーディション2026」(ぬいぐるみ化)では、ファンが投票を呼び掛けている
■「アイドルホースオーディション2026」実施中、ハルオーブに1票を
近年、スターホースはGⅠを勝つような強い馬だけでない。ロマンを求めて手軽に馬主気分を味わえる「一口馬主」が増えたこともあり、初勝利やJRA復帰を願ってファンが応援するケースが増えている。笠松ではオグリキャップの孫娘レディアイコをはじめ、オマタセシマシタ(現・名古屋)やハルオーブ(JRA復帰)、アオラキらがラチ沿いにファンを呼べるアイドルホースとして人気を集めてきた。人気の背景はそれぞれだが、スティルアイライズも「保護者会」のような多くの女性ファンの熱い視線を集めている。
また「アイドルホースオーディション2026」特設サイトでは予選投票(~7月8日午前)を実施中。予選を勝ち抜いた上位8頭がファイナリストとして本選に進出。上位3頭が、中央競馬ピーアール・センターにより実際にぬいぐるみ化される。
笠松でアオラキと一緒のレースで走り3着だったハルオーブ(愛称・はるお)。岩手で3勝を挙げて中央復帰後に初勝利を挙げて投票の対象馬に滑り込んだ。もう6歳になったが「俺もぬいぐるみになりたい」と緊急参戦しており、多くの「はるお民」の皆さんが投票を呼び掛けている。GⅠ馬など相手は強力だが、1勝馬でも人気抜群。ハルオーブの予選突破を願って、スマホとパソコンから1票ずつ投票した。
2着馬に4馬身差をつけて、好タイムでゴールするギフノオウマサン。新しい「笠松の星」となるか
■ギフノオウマサン新馬戦圧勝、笠松の新たな星へ
6月からフレッシュな2歳新馬戦もスタート。初夏を彩る笠松競馬の風物詩のような味わいがあり、未来のスターホース候補のデビュー戦は夢いっぱい。地元愛が感じられる馬名でも注目したのは撫子争覇を勝った加藤幸保厩舎の期待馬ギフノオウマサン(牡2歳)。能力審査で800メートル50秒8と好走していた。
デビュー戦には塚本征吾騎手が騎乗。外めから先頭を奪うと軽快なフットワークで49秒0(重)の好タイム。2着のレジーナカズを4馬身引き離して圧勝。将来性豊かな生え抜き馬として成長ぶりが楽しみな一頭で「笠松の新たな星」へと好スタートを切った。「同じコースの800メートル戦から育ったオグリキャップやライデンリーダー、ラブミーチャンら名馬に続いてほしい」と笠松ファンの一人として願っており、来年の東海優駿を目指して大きく羽ばたいてほしいものだ。
2010年7月3日に天国に旅立ったオグリキャップ。ファンに愛され続け、十七回忌を迎えた(写真は七回忌法要での馬碑や献花台)=北海道新冠町、優駿メモリアルパーク
■オグリキャップ十七回忌、ファンを勇気づけ続けるスーパーホース
オグリキャップ、安らかに。2010年7月3日に天国へと旅立って、早いもので十七回忌を迎えた。笠松の「野武士」が中央で天下取りを成し遂げるサクセスストーリー。ラストラン有馬記念制覇のゴールインと地響きのようなオグリコールは永遠の輝きを放ってきた。繰り返し放映されるレースは何度見ても、何度聞いても胸に突き刺さり、鳥肌が立つ日本競馬界最高の感動的な名場面となった。
地方出身馬が中央のエリート馬たちをバッタバッタと倒す姿に共感するファンは多かった。引退して35年も過ぎたが、オグリキャップを超えるような「ストーリー性」のあるスーパーホースは今後も出現しないだろう。
国民的ヒーロー、オグリキャップの最後まで諦めない走りは多くの人を励まし、勇気づけ続けてきた。「オグリの里」から愛を込めて。50年、100年後の競馬ファンにもその雄姿を語り継いでいきたい。
☆ファンの声を募集
競馬コラム「オグリの里」への感想や要望などをお寄せください。 騎手や競走馬への応援の声などもお願いします。コラムで紹介していきます。
(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里5青春編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」「4挑戦編」に続く第5弾「青春編」では、笠松競馬場などでの「砂上の格闘技」で完全燃焼した人馬たちへの惜別の思いも込めた。巻頭はシンデレラグレイ賞&トークショーでのウマ娘ファンの熱狂ぶり、続いて日本競馬界最大のヒーローであるオグリキャップ、アオラキ&ハルオーブ、ストーミーワンダー、ハマちゃんなどを特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。









