撫子争覇を9番人気で制覇したチュウワスプリングと丸野勝虎騎手

 これだから競馬はやってみなければ分からない。雨の中、25日の笠松牝馬重賞「第4回撫子争覇」(SPⅢ、1400メートル)で大波乱! 地元笠松の伏兵馬3頭によるワンツースリー。9番人気→12番人気→8番人気で決着し、3連単は283万910円と高配当になった。

 「2着馬は単勝325倍だよ」「ネット投票がない時代なら、的中者なしの特払い(100円につき70円の返還)では」とスタンドのファンも驚きの声を上げた。

 ■チュウワスプリング逃げ切り、丸野騎手は笠松重賞連勝

 やや重から重となって迎えた最終レース、名古屋勢(4頭参戦)が上位人気3頭を占め「専門紙競馬エース」も〇◎▲と厚い印。一方、笠松勢(8頭)は6頭が無印で劣勢の様相。2番人気のロングストーンには「さすらいの重賞ハンター」吉原寛人騎手が乗るし、名古屋勢の上位争いとみられた。

撫子争覇の1周目、チュウワスプリングがハナを奪ってレースを引っ張った

 ところが勝ったのは9番人気のチュウワスプリング(6歳、加藤幸保厩舎)で大金星。地方通算3400勝超で円熟の丸野勝虎騎手がアースジャッジでの新緑賞Vに続き、笠松重賞2連勝。チュウワスプリングは昨年の2着馬で、重賞初Vを飾った。父リアルスティール、母チュウワグルーヴ(母父ルーラーシップ)という血統。

 ■枠連は9万2220円で笠松競馬の最高配当

 2着に最低人気のゴールウェイガール(5歳、森山英雄厩舎)=大原浩司騎手=、3着に8番人気のコトシロ(6歳、森山英雄厩舎)=深沢杏花騎手=が突っ込んだ。笠松勢が人気の低さに反発し、意地を見せてくれた。上位1~3着を独占し馬単では20万5900円、3連複でも53万3910円と大荒れになった。

 また枠番連勝複式?③の払戻金は9万2220円で笠松競馬の「枠連最高配当」を20年ぶりに更新した。32通り中、最低の32番人気で的中は15票だった。3連単の最高払戻金は534万7770円(2010年)で8番人気→10番人気→3番人気。ネット馬券が広く普及していない時代で単勝人気の割には高額配当になった。

 近年は3連単などの導入で万馬券は珍しくなくなったが、オグリキャップが走っていた頃は単勝、複勝、枠連しかなく、万馬券が出るのは6日間開催でも2回程度。遠い記憶だが、確か枠連で5万円台が出たときには衝撃のあまり「なんでそうなった」と競馬新聞を30分ほど眺めていたことがある。

 ■大原騎手2着に粘り込み、深沢騎手は重賞で自己最高の3着

 レースは中央2勝馬で実績上位だったチュウワスプリングが、マイペースで鮮やかな逃げ切りを決めた。これまでの3勝も全て逃げで、不良馬場にも助けられて後続に2馬身差の完勝。ゴールウェイガールも好位追走から大原騎手がインでうまく立ち回り、2着に粘り込んだ。

深沢杏花騎手はコトシロに騎乗し、重賞では自己最高の3着に突っ込んだ

 さらにコトシロがクビ差の3着。深沢騎手とのコンビで強烈な末脚が武器の一発屋タイプ。東海ゴールドカップ8着から6歳なって短距離の走りが良くなり「穴党はコレ」との短評通り馬券圏内。加藤厩舎、森山厩舎と笠松のベテラン調教師が管理する馬たちが上位を独占。4着にも渡辺竜也騎手のジンフィンドールが最後方からラスト3F最速で4着に入った。笠松勢「よくやった」という重賞レースになった。

 ■愛馬コトシロ「深沢騎手重賞初Ⅴ」の可能性を秘めた一頭

 深沢騎手は重賞レースで自己最高の3着。「敬馬賞」(23年・金沢)ではツクバキセキで自身初の準重賞Vを飾っていたが、重賞での馬券圏内は初めて。

 愛馬コトシロとはレジェンドハンター記念で7着、前走の小栗孝一メモリアルでは最後方から突き抜けて1着。深沢騎手「悲願の重賞初Ⅴ」への可能性を秘めた一頭でもあり、今後もチャレンジを続けてもらいたい。

 ■1番人気の細川騎手エバーシンス完敗、丸野騎手は「恵みの雨になった」

 名古屋勢では木之前葵騎手が騎乗した3番人気ハッピーミークが2番手から追走し、5着が精いっぱい。1番人気でラブミーチャン記念優勝馬のエバーシンスは6着に敗れ去った。騎乗した細川智史騎手は、名古屋競馬場ではメインレース直前の「カニダンス」でもファンの注目を集めた。勝っていれば表彰式での喜びのパフォーマンスも期待されたが、エバーシンスの差し脚は不発。吉原騎手の笠松での「神騎乗」はこのところ影を潜め、ロングトーンも見せ場なく9着に終わった。

撫子争覇の勝ち馬チュウワスプリングと加藤幸保調教師(左)ら喜びの関係者

 表彰式で丸野騎手は「この馬には恵みの雨になりました。具合がいいと聞いていたし、先行力があり気分良く逃げた。最後まで頑張ってくれました」とにこやか。「おめでとうございます」とお客さんの声援を受けて、加藤幸保調教師と共にサインを求められ、2人でファンとの交流にも励んでいた。

 ■「LOTO」チャレンジも5レース目で撃沈、最終やはり荒れる傾向

 ところでこのレース、個人的にもより力が入った。後半5レースの勝ち馬を当てるオッズパーク「LOTO」にチャレンジ。前日の的中は1票のみで、再び高額配当を狙って100円ずつ40点買ったはずが、ネットで同じ組み合わせを2度送信してしまい200円ずつの購入となった。

 その結果、8~11Rの単勝を当てて「LOTO4」となった。残りは12Rの撫子争覇のみ。1~5番人気の5頭を買っており、「今度こそ、しかも2票」と的中を期待した。ところが9番人気のチュウワスプリングが勝って「ハイ、サヨウナラ」の撃沈(的中は5票)。最終レースはやはり荒れる傾向があり、C級サバイバルなども難解である。              

ゴールドジュニアを制覇したリバーサルトップと高木健騎手

 ■重賞25連敗と一時弱体化していた笠松勢が巻き返し

 競馬はやはり強い馬がビッグレースを勝ち、スターホースに成長していくことが望ましいし、ファンの応援にもより力が入るし喜びを共有できる。一時は地元重賞を全く勝てなくて弱体化していた笠松勢が奮起。田口輝彦厩舎のリバーサルトップ(牡3歳)などが今年前半戦の重賞戦線で計5勝を挙げ、巻き返しが目立ってきた。

 笠松所属馬は、1年半も地元重賞(笠松所属馬限定を除く)を勝てず25連敗。表彰台を遠征組に明け渡す異常事態が続いたことがあった。2022年6月のクイーンカップをドミニクが勝った後、23年暮れの東海ゴールドカップをストームドッグが勝つまで本当に長かった。ともに勝利を挙げたのが向山牧騎手で、苦しい時にはベテランの力がやはり頼りになった。

 地元馬が地の利を生かして勝って当然のレースのはずが名古屋、兵庫勢や関東馬に優勝をさらわれ続け、「馬場を貸しているだけ」と笠松ファンを嘆かせた。20年に発覚した不祥事(騎手、調教師による馬券の不正購入)で、21年には8カ月間もレースを開催できず。ジョッキーが減り、有力馬は他地区に流出。競馬場運営の生命線である競走馬は激減し、明らかにレベルダウンしていた。

ゴールドジュニア勝利を喜び、にこやかな田口輝彦調教師と高木騎手

 ■田口輝彦厩舎、名古屋「駿蹄賞」も勝ち重賞3勝

 そんな厳しい時代を乗り越えて、馬主をはじめ調教師、騎手、厩務員ら現場のホースマンたちが一丸となって奮起。笠松重賞で地元馬は24年に2勝。昨年は名古屋勢と並ぶ7勝を挙げた。このうち田口輝彦厩舎が4勝、笹野博司厩舎が2勝、後藤佑耶厩舎が1勝。ようやく結果を残せるようになって、ウイナーズサークルでの表彰式に地元勢が顔を見せることも増え、ファンを喜ばせるようになった。

 特に田口厩舎がここ一番で奮起。オグリの里では「『田口ファミリー』新たな挑戦」を連載したが、昨年から笠松で「重賞ハンター」となって逆襲。今年も名古屋も含め重賞3勝と気を吐いている。調教師リーディングは4位だが、重賞に強さを発揮している。

 3歳・ゴールドジュニア(東海地区)は4番人気のリバーサルトップで制覇。高木健騎手が好騎乗を見せ、上がり3F最速で大外一気。9番人気ラブリーボニータ=明星晴大騎手=が半馬身差2着で笠松勢ワンツー。単勝1.3倍と断トツ人気の名古屋・ミモザノキセツ=望月洵輝騎手=は3着に沈んだ。

名古屋・駿蹄賞でアストラビアンコを倒したリバーサルトップと筒井勇介騎手ら(名古屋競馬提供)

 ■リバーサルトップ、6番人気で怪物倒す金星

 リバーサルトップは東海3冠レースの1冠目、名古屋の「駿蹄賞」で断トツ人気のアストラビアンコを倒した。「名古屋には怪物がいるからなあ」と田口調教師も苦戦を覚悟していたが、終わってみれば強い勝ち方。笠松勢の参戦は1頭のみだったが、6番人気での金星となった。2コーナーでのアストラビアンコの物見による減速を突いて、筒井勇介騎手が一気に加速し押し切る好騎乗を見せた。

 笠松勢が名古屋重賞を勝つのは21年にドミニクがゴールドウィング賞を勝って以来。弥富に移転してからは初で、ようやく笠松勢の存在感を新しい競馬場で示すことができた。

ブルーリボンマイルを塚本征吾騎手の騎乗で制覇した笹野博司厩舎のエイシンジョルト

 ■ブルーリボンマイルは笹野博司厩舎のエイシンジョルトⅤ

 全国重賞ブルーリボンマイルでは笹野博司厩舎の9番人気エイシンジョルト(牝5歳)が塚本征吾騎手の先行策で押し切り。兵庫、高知、浦和勢を圧倒した。赤岡修次、下原理、吉原寛人騎手ら全国区の名手を従えての勝利は圧巻だった。

マーチカップを逃げ切ったグスタールと馬渕繁治騎手

 マーチカップ(東海地区)では森山英雄厩舎のグスタール(牡6歳)が馬渕繁治騎手とのコンビで逃げ切りⅤ。この馬も6番人気と低評価だったが、地元馬が逃げ切って笠松ファンを喜ばせた。やはり先行力のある伏兵馬が先頭で駆け抜けるシーンは重賞レースでも多く見られ、馬券作戦でも要注意である。

 ■オグリキャップ記念は愛知のケイズブレーヴで渡辺騎手制覇

 4月の全国重賞オグリキャップ記念では愛知のケイズブレーヴ(榎屋充厩舎)が勝ち、騎乗したのは全国レベルのエース渡辺竜也騎手。5番人気で馬場有利の大外から豪快に差し切った。

 5月の3歳牝馬重賞クイーンカップはリバーストリート(田口厩舎)が3番人気で完勝。筒井勇介騎手が2着馬に6馬身差で逃げ切りVを決めた。

クイーンカップは田口厩舎のリバーストリートが逃げ切りV。喜び合う筒井勇介騎手ら

 今年前半戦の笠松重賞は撫子争覇まで計10戦あり、地元笠松勢5勝、名古屋勢4勝、高知勢が1勝。人気薄で笠松馬の好走が目立っており、馬券作戦の上でも注目ポイントである。

 ラチ沿いやスタンドからのファンの声援は熱く、地元馬が1着でゴール板を駆け抜けるとより大きな歓声が沸き起こり、表彰式でも盛り上がる。笠松重賞の1着賞金はSPⅢの300万円からオグリキャップ記念(SPⅠ)の3000万円まで幅広いが、笠松を応援するオーナーさんや厩舎スタッフに還元され、次のレースに向けての飛躍にもつながる。名古屋、園田、南関東勢に優勝をさらわれ続けてきただけに笠松の人馬の活躍は喜ばしいことである。

オグリキャップ記念をケイズブレーヴで勝ち、歓喜に浸る渡辺竜也騎手と榎屋充調教師

 ■渡辺騎手&笹野調教師の強力タッグⅤも見たい

 ところで全国区で活躍する重賞ハンターの渡辺竜也騎手だが、昨年から今年にかけて、意外にも地元馬での交流重賞勝ちはない。25年にヨサリ(笹野博司厩舎)でネクストスター笠松(地元馬限定)を勝っているが、今後はもっと自厩舎の馬で重賞勝ちをゲットし、笹野先生とのツーショットで表彰式も盛り上げていただきたい。

 かつて安藤兄弟や川原正一騎手が専門紙の「◎印」に応えて、名古屋勢を寄せ付けずに重賞をバンバン勝っていた時代を知る者としては、まだまだ物足りなく映る。普段から調教で乗っている馬で地元重賞を勝てば、ファンも厩舎スタッフも最高のうれしさが込み上げてくることだろう。

 他地区からの騎乗依頼も多く、北海道から佐賀まで全国で重賞勝ちが増えている渡辺騎手。いつも他場の表彰台で「笠松競馬場にも足を運んでください」と全国のファンに呼び掛ける地元愛は本当に素晴らしい。

 笠松でも笹野調教師との強力タッグで重賞Ⅴ戦線をにぎわせたいし、近い将来「有力馬Ⅴでそういった姿を見せてくれる」とファンは大きな期待を寄せている。


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 「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」「4挑戦編」に続く第5弾「青春編」では、笠松競馬場などでの「砂上の格闘技」で完全燃焼した人馬たちへの惜別の思いも込めた。巻頭はシンデレラグレイ賞&トークショーでのウマ娘ファンの熱狂ぶり、続いて日本競馬界最大のヒーローであるオグリキャップ、アオラキ&ハルオーブ、ストーミーワンダー、ハマちゃんなどを特集。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。