笠松競馬3歳重賞「新緑賞」を制覇した名古屋のアースジャッジ。個性的な「デコメンコ」も着用している

 「大化けしたな、これは強いぞ」。最後の直線、重賞馬2頭を引き離して一気に突き抜けた。

 東海地区の3歳短距離重賞「第52回新緑賞」(SPⅢ、1400メートル、ぎふ清流カップトライアル)が11日、笠松競馬場で行われ、2番人気アースジャッジ(牡3歳、安部幸夫厩舎)がヨサリ(笹野博司厩舎)、ミモザノキセツ(今津博之厩舎)を圧倒。JRAから名古屋移籍2戦目、丸野勝虎騎手とのコンビで重賞初制覇を果たした。

 専門紙2紙には「中心不動」「本命戦」とあり、ライデンリーダー記念など重賞4勝の名古屋・ミモザノキセツ(単勝1.5倍)と、ネクストスター笠松Vの地元期待馬ヨサリの一騎打ちムード。これに割って入ったのが新鋭アースジャッジ。中央でのダート、芝での3戦は15~16着と惨敗続きだったが、名古屋移籍後に大変身。5月の名古屋初戦・3歳10組を6馬身差で逃げ切り。陣営は「勝ちっぷりの良さから新緑賞挑戦を決めた」と潜在能力の高さに手応え。未知の魅力を秘め、ファンも2番人気に押し上げた。

新緑賞1周目、アースジャッジとミモザノキセツが並び、ヨサリは4番手を追走

 ■ヨサリとミモザノキセツの2強を圧倒

 ヨサリに渡辺竜也騎手、ミモザノキセツには望月洵輝騎手と笠松、名古屋の両リーディングが騎乗した。ミモザノキセツが逃げて、ヨサリは好位からインを突いて3~4コーナーでいったん先頭を奪った。アースジャッジを含め3頭は差がなく、直線を向いて「よーいドン」の展開。余力十分のアースジャッジはラスト100を切って2頭を突き放し、2着ヨサリに5馬身差。さらに1馬身半差でミモザノキセツが3着。鮮やかな勝ちっぷりでファンに「新星誕生」を印象づけた。勝ちタイム1分28秒4。アースジャッジは父マクフィ、母アラフネ、母父クロフネという血統。

ヨサリに5馬身差をつけてゴールするアースジャッジと丸野勝虎騎手

 ■丸野騎手「2戦目も強かったですね」

 勝った丸野騎手は「(転入して)2戦目で不安はあったが、強かったですね。(2番手から3頭の競馬になり)相手2頭は強い馬だと思っていたので、よく頑張ってくれました。次も楽しみな馬です」と51歳、3400勝ジョッキーを喜ばせた。

 騎手時代にキングスゾーンに騎乗するなど笠松でもおなじみの安部幸夫調教師は、新緑賞挑戦について「前走のタイムも良かったから、うまいこといけば、それなりに走るかなと。まだちょっと幼いが、距離は持ちそうな感じもする。変に力んで走らないから」と重賞Ⅴを喜び、今後の成長に期待を寄せた。

パドックで騎手の騎乗を待つネクストスター笠松優勝馬のヨサリ

 ■ヨサリ3~4コーナーで先頭に立ち、ファン「来た~」歓声

 笠松生え抜きのヨサリはデビューから4連勝。前走で京都・芝コースを経験。9着だったがラスト3Fを33秒9で駆け抜けた。中央遠征後も調整はいつも通りで順調。地元での反撃を期待されていた。

 3~4コーナーでヨサリが先頭に立つと、ファンから「来た~」と歓声も上がった。最後は突き放されて2着に終わった渡辺騎手は「5馬身も離されたので、惜しくないです」と敗れて爽やか。地元ファンらが応援しており「それはありがたいです。仕上げも良かったし、競馬も悪くないです。相手が強かったですね」と淡々。前走で中央の芝を走った影響はなく、ペースが速く3番手からで「前の2頭も苦しく、展開が向くかと思った」そうだが、最後は相手の決め脚が鋭かった。

 名古屋の強豪2頭のどっちかをマークしていたのか。「いや、ヨサリも器用な馬じゃなく、マークして差し切るような競馬ができないんで。きょうのような大味な競馬の方が向いていますね」。さらに「ヨサリは出来も良く、いい内容でした。ただもう一つギアが入ってこないのは、しまいの甘さというか。あれで脚を使ってきたら、それこそ普通に強い馬になりますから。3歳秋に向けてもう1段階上がってくれれば。(先生とも話し)次は清流カップを使うことになりそうですね」とのことで、成長した姿を次走で見せられるといい。

パドックから気合乗り上々で、返し馬に向かうミモザノキセツ

 ■ミモザノキセツの望月騎手「未知の馬で、化けましたね」

 ミモザノキセツはネクストスター中日本(金沢)も制覇。笠松1400メートルはベストの舞台だったが3着どまり。望月騎手は最後の直線について「元々そんなに伸びる馬じゃないですし、力負けですね」。ミモザノキセツの方が格上だったが「勝ち馬(アースジャッジ)は未知でしたが、化けましたね」と脱帽。ただ中央時代に他頭数で苦戦したように、もまれ弱いところもあるそうだ。安定した走りを見せているミモザノキセツの次走は7月のぎふ清流カップか兼六園スプリントか。

 ■ぎふ清流カップで「3強」再戦の可能性も

 1着賞金1000万円のぎふ清流カップ(SPⅠ、1400メートル)は7月9日・笠松で開催される。西日本交流で兵庫からも強豪が参戦予定。昨年は名古屋のケイズレーヴ(今年のオグリキャップ記念勝ち馬)が制覇している。今年は新緑賞の上位3頭が参戦の可能性もあり、地元のヨサリ&渡辺騎手コンビでゴール前を沸かせたい。

「まめちゃん」フィーバー。返し馬に向かうスティルアイライズはラチ沿いのファンとの距離が非常に近い

 ■「まめちゃん」善戦したがブービー8着

 一方、中央3戦で15~18着とやはり厳しい戦いを続けた後、笠松に転入してきたスティルアイライズ(牝4歳、川嶋弘吉厩舎)。小さな体で生まれたことから「まめちゃん」の愛称で親しまれ、笠松では4戦目を迎えた。馬体重は8キロ増と食欲も増して、まだまだ成長途上にある。

 主戦の松本一心騎手は前日、地方競馬通算100勝達成セレモニーでファンらの祝福を受けた。サプライズでプラカードを持って登場したのがパパの松本剛志騎手(けがで療養中)。「100勝を一つの目標にしていたので、常に意識はしていました。(今後は)大きいところを取りたい。後輩に負けないよう頑張りたい」と闘志満々。その言葉通り、初日最終12Rから2日目1、2Rまで自己最多タイの3連勝と絶好調。パパからアドバイスも受けたのか、積極策で3日間とも2勝ずつを挙げる好結果を残しブレークした。

スティルアイライズはファンの大声援を受けて無事ゴールイン。後ろにもう1頭いて8着だった

 ■女性ファンら「頑張れ、頑張れ」、追い上げ無事ゴールイン

 スティルアイライズとは4戦目。先行策で失速するパターンが続いたので、今回は控える競馬で後方待機策。最後の直線ではよく追い上げて、ラチ沿いを埋めた女性ファンらから「頑張れ、頑張れ」の大声援も飛んでいたが、中央からの転入組が多く厳しい展開。9頭立てでブービーの8着に終わったが、全力で走り切ってまずは無事ゴールインを果たした。

 パドック前・東スタンドの女性ファンは「急にコース前へ来る人が増えてきたね」と驚きの声。「引退後ものんびりと暮らせるといい」といった思いも伝わってきた。返し馬ではラチ沿いで「まめちゃんが意外と前に来てくれた」と感激し、手を振る熱狂的ファンの姿もあった。

 この日もスティルアイライズを応援する横断幕(5枚)がずらりと並び、松本親子を応援する幕(3枚)もあり「人馬一体」熱烈なサポート。アイドルホースのレースを盛り上げてくれた。

パドックから返し馬に向かうスティルアイライズと松本一心騎手

 ■松本一心騎手「入着はあるかなあと。元気いいですよ」

 レース直後、松本一心騎手は「走りはちょっとずつ良くなっていると思うんですけどね、体重も増えているんで『入着』はあるかなあと思ったが、もうちょっとですね」。ここ2走、しんがり負けが続いていたが一歩前進した感じだという。

 道中はどうだったのか。「別に砂とかを嫌がらないんで。仕掛けどころを気を付けて。着狙いで取れるかなあと思っていたけど、ちょっと厳しかったですね。あとは展開次第ですね。早く仕掛けすぎたら止まるので、前の動きを見ながら」。コース取りは「いまの馬場は内も外もそんなに変わらないんで、真ん中からでしたね」。馬のコンディションはこの暑さの中でも「悪くないです。元気いいですよ」。食べる面では「(体重増で)良かったですが、追い切ったら、食いはちょっと悪くなったが、そんなには」とのことだった。

「まめちゃん頑張れ」。返し馬では多くのファンがスマホなどを手に熱い視線を送った

 ■ファン「前の馬を抜かそうとしていて、うれしかった」

 スタンド最上部に掲示した横断幕の後ろでは、まめちゃんの「保護者会」ともいえる女性ファンたちが「ゴール近くまで来ても前の馬を抜かそうとしていた。そういう気持ちがあって、とてもうれしかった」「とにかく無事に走ってくれた。ブービーだったが、それだけで盛り上がっちゃいました。着順じゃないです」

 また「彼女の真剣な目を見て、涙が出そうになりました」とも。体重が増えて「秋になればクラスが下がるなら、けがも病気もせずに元気に育ってほしい」「掲示板に入るかなあと期待していましたが、ダメだったか。でもビリじゃなくて良かった」。愛知をはじめ、東京や兵庫からもファンが駆け付けて熱い声援を送った。

 ■「アオラキファンも多かったが、まめちゃんの横断幕すごい」

 男性ファンは「すごいな。横断幕まで作って。(ラチ沿いの)ファンの数はアオラキの時が一番多かったが、横断幕はなかった」と驚いていた。来場者は連日の1000人超え。3日間開催に凝縮されて12Rまであり、2日目の馬券販売額は6億円超え。重賞デーで誘導馬「大吉君」も登場し、ファンを和ませた。遠来のお客さんも多く「まめちゃんフィーバー」は笠松競馬を活気づけてくれている

第1レースを終えたばかりの「笠松の太陽」東川慎騎手もどこか暑そうな表情。真夏に向けて暑熱対策が大切になってくる

 ■「30度超え」の中で奮戦するジョッキーたち、暑さは「まだ大丈夫です」

 東海地方は梅雨入りしたが、オグリキャップ記念シリーズ後半戦の3日間は晴天続き。岐阜地方の気温は30度超え。装鞍所エリアやパドックでは暑熱対策も大切になってきている。騎手控室前ではレース後の鞍磨きなどに汗を流す若手騎手らの姿もあり、明星晴大騎手や深沢杏花騎手は暑さについて「まだ大丈夫です」とのことだが、この先、真夏に向けて睡眠や水分補給など体調管理には十分に努めていただきたい。

2歳新馬戦がスタート。明星晴大騎手騎乗のラウトが「一番星」に輝いた

 ■2歳新馬戦、明星騎手騎乗のラウト「一番星」

 笠松では初夏の風物詩ともいえる2歳新馬戦がスタート。今年の第1戦となった800メートル戦を制したのは明星騎手騎乗のラウト(牡2歳、柴田高志厩舎)で、後続を6馬身以上突き放して50秒4の好タイムでゴール。距離が延びていい差しタイプで、来年の東海優駿へとつながる「一番星」に輝いた。


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 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、182ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、笠松町歴史未来館、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品。