飛騨牛に餌を与える上垣内仁志さん=18日、高山市清見町三ツ谷
トウモロコシや大豆を混ぜ合わせた配合飼料

 新型コロナウイルス禍や原油高騰、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、飼料の値上がりが続いている。配合飼料の価格は今年1月、1トン当たり8万3381円となり過去最高を更新。岐阜県産のブランド牛・飛騨牛の畜産農家にも大打撃を与えており、「このままではやっていけない」と悲鳴が上がっている。

 牛や豚、鶏の主な餌となる配合飼料は、トウモロコシや大麦、大豆かすなどが原料。自給率はここ10年ほど10%台前半で、ほとんどを米国やブラジル、オーストラリアといった海外からの輸入に頼っている。

 配合飼料供給安定機構(東京都)によると、今年1月の全畜種平均価格は、2012年1月の約1・5倍まで上がった。近年、南米での穀物の不作や中国での需要の高まりに加え、コロナ禍による海上輸送の混乱や、運賃高騰など複数の要因も影響。世界有数の穀物輸出国であるウクライナの情勢や急激な円安も加わり、さらなる高騰も予想されている。

 影響は県内にも及んでいる。飛騨農業協同組合(JAひだ、高山市)畜産部の桑山壽樹部長は「JAひだ管内でも、昨年春と比べて15~20%値上がりしている」と懸念する。価格上昇に備えて国などが財源を積み立てている補塡(ほてん)制度もあるが、畜産農家への入金までは数カ月かかるため「あちこちから『資金繰りが苦しい』という声を聞く」と表情を曇らせる。制度の補填基準は直前1年間との比較であるため、「変動があるうちはまだいいが、高止まりしてしまえば機能しない」と長期化を危惧する。

 高山市清見町三ツ谷で約100頭の飛騨牛を肥育する上垣内仁志さん(57)は「資金が減っていく一方だ」と深いため息をつく。子牛を買い付けて育て、1年半後に出荷するまでにかかる費用は1頭当たり120~130万円。餌の高騰で1頭当たりのコストは10万円ほど上がったという。

 これまでは月に5、6頭を出荷すると、すぐに同じ数だけ次の子牛を入れていた。しかし「今は収入が餌代に消えていく。コロナ禍で牛肉の相場も不安定。先行きも見通せないので、子牛の買い付けを少し控えている」と明かす。現在の牛舎の稼働率は8割弱で、空の牛房も目立つ状態だ。

 「牛の環境は変えられないから、人間の方を削るしかない」と現在は自身の給料を減らすことでカバーしているが、「今のような状態がずっと続けば、次の代へ『牛を飼ってくれ』と言えないだろう」と指摘。離農が進むことへの危機感も募らせた。

 県は現在、飼料用作物を育てる農家への補助や研修を行うなどし、自給率向上へ取り組んでいる。畜産農家への補助について県畜産振興課の担当者は「今後、独自の支援策を検討している」と話した。