毎年のように大雨による水害が起きている中、気象庁は早めの警戒を促すため、6月から大雨の原因の一つである線状降水帯の発生予報を始めた。岐阜県内は14日に梅雨入りし、これから大雨被害のリスクが高まる時期。気象予報をホームページで提供するサービスを行っている岐阜大応用気象研究センターのセンター長・教授吉野純氏に線状降水帯予報の課題や県内で特に注意するエリアなどについて話を聞いた。
―線状降水帯予報の特徴は。
「線状降水帯予報は半日前から6時間前に出される。未来の予測という点で情報が出されることが画期的。これまでも記録的短時間大雨情報など大雨に関する情報は出されてきたが、降ってしまった大雨に関する情報で未来の予測情報ではなかった。情報が出た際にどう対応したらいいかなど、課題があった」
―予報を活用する上での課題は。
「気を付けなくてはいけないのは、百発百中ではないこと。線状降水帯の予報は非常に難しい。現在の技術レベルでは4回予報を出すと当たる確率は1回で、3回は空振り。また過去に線状降水帯が起こった3回のデータを見ると、予報として出せたものは1回でしかなかった。2回は見逃していたことになる」
―それほど外れる予報だと役に立たないのではないか。
「予報が出た場合の6割は、線状降水帯が発生しなくても災害規模の大雨になるという検証結果も出ている。大雨のリスクを表す指標だと理解して警戒のスイッチを入れ、気象情報を頻繁に確認して迅速な準備につなげる活用をしてほしい」
―県内で大雨のリスクが高い地域は。
「岐阜県は山がちで、線状降水帯の発生リスクがある県。とりわけ奥美濃や飛騨の山間部については、より地形の影響を受けて線状降水帯が強化されやすい。発生するだろうという予報が出た場合、発生のリスクはより高いと理解してもらい、早めの対策が必要となる。2018年の西日本豪雨の時も、南から北へと列をなして積乱雲が入り込んで停滞することで、雨が1カ所に集中して関市の津保川の氾濫が起きた。川の近くに住んでいる人は、なるべく川から離れてもらう。また土砂災害の危険もあるため、急な斜面の近くに住んでいる人は、斜面からなるべく離れた場所に避難するなどの対応が必要になる」
よしの・じゅん 1976年生まれ、多治見市出身。2004年に京都大理学研究科博士課程修了。17年から岐阜大工学部付属応用気象研究センター長、22年4月から同大工学部教授。45歳。
【線状降水帯】 次々と発生する積乱雲が帯状に連なり、同じ地域を通過・停滞することで豪雨をもたらす現象。長さ50~300キロ程度、幅20~50キロ程度になる。県内では2018年7月の西日本豪雨で、関市の津保川が氾濫した要因となった。