多くの児童が利用する学校図書館=いずれも大垣市墨俣町墨俣、墨俣小学校
友人にお勧めしたい本を紹介する手紙を「読書郵便」としてポストに投かんする児童

 岐阜県大垣市墨俣町墨俣の墨俣小学校は、市立図書館と連携し、子どもたちの読書活動を後押しする環境づくりに力を入れている。子どもたちの読書の足跡を記録する「読書手帳」や貸し出しカードの共通化のほか、読書をテーマに連携したイベントを開くといった取り組みを続けている。連携した取り組みは子どもたちの読書習慣向上のほか、子どもと一緒に地元の図書館を訪れる保護者にも波及するなど、地域の読書文化の底上げにもつながっている。

 同校の学校図書館を訪れると、本を探す多くの子どもたちの姿があった。なぜ利用するのかについては「読書で知らないことを楽しめる」「たくさん本が借りられる」「ここに来るのが楽しみ」と元気に話した。友人にお勧めしたい本を、内容の説明やイラストを交えてはがきスタイルで紹介し届けてもらう「読書郵便」をしたため、ポストに投かんする姿も見られた。図書館教育担当の高間祐子教諭は「本当にみんな読書が好き。図書館に来ることが好きな子が多いです」と目を細める。

 同校と市立図書館との連携が始まったのは2019年。まずは児童が読書の記録を残すために学校が作製した「読書手帳」を共通化し、学校図書館だけでなく、近くにある市の墨俣図書館(同町上宿)で借りた本も記入できるようにした。また、未知の本に触れる機会を提供する「図書館祭り」を毎年共同で開催。子どもたちは校内をスタンプラリー形式で回り、読み聞かせや、テーマ別で市立図書館が選んだ本に触れることができる。

 昨年度からは、学校と市立図書館の両方で使えるように貸し出し用カードも共通化。子どもが本を借りやすい環境を整えた。高間教諭は「学校の取り組みだけでは限界がある。学校の図書館では出合えない本を知る機会につながり、連携に助けられている」と話す。

 これらの取り組みの結果、地元の墨俣図書館では児童向けの貸し出し冊数が増加。また、子どもと一緒に図書館を訪れる保護者世代の貸し出し冊数も増えるなど、相乗効果が出ているという。連携事業を担当する市立図書館司書の新井秀子さんは「予想していなかった効果」と驚く。

 同校は、一連の取り組みが評価され、文部科学省による本年度の「子供の読書活動優秀実践校・図書館・団体(個人)文部科学大臣表彰」を受けた。橘洋子校長は「読書推進に熱心な学校は多いが、市立図書館との連携で一歩先んじていると感じる。このような取り組みが他の地域にも広がれば」と話す。