原木から生えたシイタケを見学する児童=関市下之保、道の駅平成
原木に菌入れをする児童=同

 穴の開いたコナラやクヌギを手に持ち、シイタケの菌を穴に丁寧に詰め込む。原木シイタケ栽培が盛んな岐阜県関市武儀地域の武儀小学校(同市富之保)では、3年生がシイタケ教室に参加し、地域の特産品への理解を深めている。児童が実際に菌入れを体験することで、地場産業のシイタケ栽培に関心を持ってもらうのが狙い。昨年4月の同校統合前の武儀東、武儀西小学校時代から20年以上続いており、学校側も「教室に参加した子どもたちは、シイタケのイメージが変わる」と成果を強調する。

 教室は、市椎茸(しいたけ)振興会や県中濃農林事務所、市保健センターなどの協力を得て毎年実施。今年3月の教室では、3年生(当時)14人が参加した。農林事務所は、原木シイタケと菌床シイタケの違い、栽培する際の温度や湿度といった管理方法について講義。市保健センターは、原木シイタケについて食物繊維が豊富で健康にいいことなどを説明した。

 児童らは、1回で木に6カ所の穴を開ける機械のデモンストレーションも見学。菌入れでは、児童が1人2本のコナラ、クヌギを受け取り、2センチ程度のシイタケの菌を詰めた。初めての作業に「うまく菌を入れられた」などの声が上がった。菌入れした原木は、振興会の会員が一定期間育てた後、学校に運び入れる。児童は秋ごろに収穫して自宅に持ち帰る。

 新型コロナウイルスの流行前はシイタケ教室で、原木シイタケを炭火で焼いたり、シイタケピザとして児童にその場で提供していた。原木シイタケは、肉厚や香りの良さが売り。振興会の三輪実弘会長(67)は「原木シイタケの味を知ってほしい。食べれば味の違いが分かる」と強調する。

 武儀地域では、昔から原木シイタケの生産が盛んだった。昭和40、50年代には約70人が栽培し、県内の一大産地として知られた。裏山の木を伐採し、菌打ちした原木を軒先などに置いている家庭も多かった。一方、低コスト、大量生産の菌床栽培が各地で広がり、同地域の原木シイタケの生産量は減少。高齢化を理由に栽培をやめる人が後を絶たず、現在の振興会の会員は10人ほど。三輪会長は「昔はシイタケ栽培が身近だったが、今はシイタケのことを知らない子どもが多い。シイタケの栽培を絶やさないためにも、次世代につなげたい」と語る。

 同校では、地域の保存食として伝わるみそ玉造りや昔話にまつわる名所巡りなど学校全体で郷土学習に取り組んでいる。森下佐奈枝教頭は「地域の特産品のシイタケを知ることは、郷土を学ぶ上でも大事なこと」と話している。