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オグリの里

ラブミーチャン記念、コパさん愛馬ラジアントエンティ制覇



YJS笠松ラウンド第1戦。1周目のゴール前を2、3番手で通過するダズリン(4番)に騎乗の東川慎騎手と、アイ(7番)に騎乗の深沢杏花騎手

 愛馬ラブミーチャンの冠レースを、今年デビューした愛馬で制しオーナー初笑い。2歳牝馬による地方全国交流重賞「第7回ラブミーチャン記念」(1600メートル、SPⅠ)が5日、笠松競馬場で行われた。北海道からの遠征馬・ラジアントエンティ(角川秀樹厩舎)に、兵庫の名手・吉村智洋騎手が騎乗。2番手から先行馬をかわすと、後続を突き放す強い競馬で圧勝した。

 ラブミーチャンの馬主は「Dr.コパ」の名で知られる小林祥晃さん。記念レースには、第1回のキモンイーグル、ラブミーダイヤで8、9着に敗れて以来の参戦となった。この日は勝利を信じて笠松競馬場に駆け付け、単勝1.3倍と断トツ人気になったラジアントエンティの圧勝劇を見届けた。

 小林オーナーにとってラブミーチャンは「愛らしい宝物」のような存在。全日本2歳優駿でのGⅠ制覇、NARグランプリ獲得など快進撃を続け、馬主としてJRAでも活躍が認められるようになった。ラブミーチャン記念は自分の愛馬の馬名がついた重賞で「これまで1回は取りたいと思っていたレース。北海道からの遠征馬で、勝てて良かった。うれしいです」とにっこり。優勝馬の顔を優しくなでながら「よく頑張ってくれた。ありがとう」と感謝。口取りの写真撮影では吉村騎手らと喜びに浸っていた。ラブミーチャン・カラーでもある黄色に赤いラインの勝負服やメンコ(馬の覆面)、優勝レイが秋晴れの下で光り輝いていた。

ラブミーチャン記念1周目のゴール前。吉村騎手(ラジアントエンティ)、赤岡修次騎手(スターフェネック)、筒井勇介騎手(シャノンアーサー)のトップジョッキー対決でも盛り上がった

 レースには、全国リーディング2位の吉村騎手、3位の赤岡修次騎手(高知)がはるばる参戦。笠松リーディングの筒井勇介騎手が迎え撃つ形になった。10月の地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップでも総合4、2、6位となった3人。吉村騎手は園田開催日でありながらも、笠松遠征で必勝態勢。地元のマナカフナ(田口輝彦厩舎)が逃げて、好スタートを切った吉村騎手・ラジアントエンティが追走し、3コーナーでは早々と先頭を奪った。ジュニアクラウン1着の筒井騎手・シャノンアーサー(花本正三厩舎)の追撃を完封し、ゴールでは5馬身も突き放した。赤岡騎手・スターフェネック(田中守厩舎)も追って粘り込んだが、さらに3馬身差の3着確保が精いっぱいだった。

 フレッシュな2歳馬戦線ではやはり道営在籍、出身馬の強さが際立った。3コーナーからは、3人の騎乗馬が抜け出す形になり、トップジョッキーたちの腕比べは見応えがあった。それぞれの騎乗馬が人気通りに1~3着となり、3連単でも460円という順当な結果になった。ラジアントエンティと吉村騎手とのコンビは、前走の園田プリンセスカップでの5馬身差Vに続いて2連勝となった。吉村騎手自身は、エイシンニシパで制した4年前の岐阜金賞以来となる笠松での勝利となった。

■吉村騎手「ゲートを出て、勝ったと思いました」

 久々に味わったファンの前での優勝騎手インタビュー。

 吉村騎手「笠松の1600メートルは外枠が不利なので、無理に行かなくても2、3番手でよく、コーナーをしっかりと回ればいいと思っていました。もうちょっと距離があっても大丈夫でしょう。笠松を使うと決まってから、コパさんが一番取りたいレースで勝てて良かったです。お客さんの入場が再開されてからは、初めての重賞勝ちでうれしいです」

笠松では久々の重賞Vを飾り、サイン色紙を手にする吉村騎手

 「圧勝でしたね。『どこで勝ったと思いましたか』」と聞くと。

 吉村騎手「(大外枠からのスタートで)ゲートを出て、勝ったと思いました(笑い)。さらに1周目の4コーナーをきれいに回れて、勝利を確信しました。園田よりも笠松の方がコーナーはきついですが、(ラジアントエンティは)修正しながらよく対応してくれた。まだ遊んでるところはありますが、伸びしろがある馬。すごく乗りやすかったです」

 コロナ禍でファンとの交流には制限もある。笠松競馬場では、重賞勝利ジョッキーのサイン色紙のプレゼントが恒例になっており、吉村騎手も貴重な1枚にサイン。表彰式には笠松の東川公則調教師の姿もあり、北海道の角川調教師の代わりを務めていた。吉村騎手も「代理の調教師が良かったおかげです」と感謝。門別から前日輸送で来場したラジアントエンティに対して、東川調教師は「(レースのため)装鞍しただけですよ」と笑顔だった。

 片平陽子厩務員は「輸送は何回も経験していて、笠松には前日の昼に到着しました。馬房で1日過ごさせてもらえ、落ち着いていて良かったです」と、ホッとした様子。JRAの函館2歳S後は札幌、園田にも参戦。遠征慣れして実力を発揮できた愛馬の活躍を喜んでいた。

■ラブミーチャンとコパノリッキーの子が来年デビュー

 小林オーナーといえば、フェブラリーSなどで史上最多となるGⅠ競走11勝(地方・中央交流含む)を達成したコパノリッキー(JRA)の馬主としても知られている。引退後のラブミーチャンは北海道・谷岡牧場で繁殖馬生活を送っており、小林オーナーは「ラブミーチャンとコパノリッキーの子を来年デビューさせたいです」と、ミーチャンにとって4番目の子である「リッキーボーイ」(牡1歳)の成長と活躍を期待。JRAでのデビューになるだろうが、両馬のファンにとっても楽しみな1頭である。ラブミーチャン記念の前日には次男のラブミージュニア(牡4歳)が大井で勝っており、さらなる成長が期待されている。

 ラブミーチャン記念2着のシャノンアーサーは、3~4コーナーからラジアントエンティを追って必死に食い下がったが、ゴール手前では伸び切れなかった。騎乗した筒井騎手は「正攻法で挑みましたが負けました」と持てる力は出し切って、地元馬の意地を見せた。2歳牝馬限定だったライデンリーダー記念(12月30日)は、今年から牡馬にも開放されるが、北陸・東海地区の一戦となり、勝利のチャンスは十分。前開催トップの9勝を挙げて今年106勝とした筒井騎手にとっては、2年連続リーディングも懸かっている。大みそか前には、2位(96勝)で追う渡辺竜也騎手とのリーディング争いに決着をつけたいところだ。

■笠松競馬の復興を引き寄せたラブミーチャン
 
 ラブミーチャンは2009年にデビュー。GI・全日本2歳優駿(川崎)などJRA勢とのダートグレード競走で5勝を挙げ、スーパースプリントシリーズで3連覇。地方競馬の最速女王へと駆け上がり、NARグランプリの年度代表馬に2度選出された。現役時代の4年間には、荒尾競馬(熊本)や福山競馬(広島)が廃止になるなど、地方競馬にとって先細りの厳しい時代だった。単年度ごとに「赤字なら即廃止」という綱渡りが続いていた笠松競馬では、賞金や手当の大幅カットで何とかしのいでいたが、騎手や厩舎関係者は大きな痛みを強いられていた。そんな中、ラブミーチャンは「笠松の看板娘」として地方競馬の先頭を走り続け、全国に「かすかな復興の光」をアピールし続けてくれていた。

2013年2月、福永祐一騎手(左)が騎乗し、オッズパークグランプリを制覇したラブミーチャン。笠松ではラストランとなった

 JRAインターネット投票が12年10月に開始され、ファンに浸透し始めたのが翌13年で、笠松競馬の経営状況もようやく好転。右肩上がりで7年連続の黒字を確保したが、苦しい時代を背負ってスターホースとして活躍し、笠松競馬の「復興」を引き寄せてくれたラブミーチャンの功績は極めて大きかった。

 2歳時からその奮闘ぶりに注目して、ラブミーチャンを追っ掛けさせてもらった。オグリキャップに続くアイドル的存在として、新聞紙上などで紹介することが、笠松競馬存続へのアピールにつながると思っていた。JBC競走など、早朝の追い切りの取材では報道陣の姿はほとんどなかったが、500キロを超えるラブミーチャンの雄大な馬体は、とてもまぶしかった。

 13年2月、笠松でのラストランでは重賞レース「オッズパークグランプリ」(1着賞金1000万円)を連覇。今年、コントレイルで3冠ジョッキーとなった福永祐一騎手が、ラブミーチャンの手綱を取って鮮やかに逃げ切った。地元笠松では3年ぶりの勝利に、らち沿いも埋めた約2000人のファンが沸いた。福永騎手は「初めて乗ったが、素晴らしい馬。いいリズムで走れたと思う」と勝利を喜び、小林オーナーとのトークショーやサイン会でも盛り上げてくれた。NARグランプリ年度代表馬の2度目の表彰では、小林オーナーが「彼女は神さまからもらった贈り物。あんな頑張り屋な娘はいない」と喜んでいた。笠松での引退セレモニーでも「こんなに多くの人に愛される馬を持ったのは初めて。本当に感謝している」と愛馬をたたえていた。

 地方競馬の出世レース・ラブミーチャン記念を勝ったラジアントエンティは、NAR世代別牝馬重賞シリーズの「グランダム・ジャパン2020」2歳シーズンでトップに立った。今後は順調なら水沢・プリンセスカップ(11月30日)、大井・東京2歳優駿牝馬(12月31日)に向かう予定。ラブミーチャンのように全国区での活躍が期待されており、吉村騎手とのコンビで、JBCなどダートグレード戦線でもJRA勢を圧倒する走りを見せてほしい。