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オグリの里

笠松競馬の2歳馬デビューへ、騎手も本番モード

立ち上がれ、あしたのために=その24



800メートル戦で能力審査に挑む2歳馬。レース再開に向け、騎手も勝負服姿で本番モードに

 真夏の日差しを浴びて輝くフレッシュな馬体が、ゴールを目指して躍動した。8月末か、遅くとも9月中にはレースが再開されることがほぼ決まった笠松競馬。梅雨明け間近の16日、競馬場内では2歳馬に騎乗した騎手たちが、レースで着用する勝負服姿でゲートイン。本番モードで闘志をみなぎらせていた。800メートル戦で能力審査が行われ、合格した若駒たちは笠松でのデビュー戦を迎えることになる。
  
 騎手、調教師らの馬券購入事件のため、笠松競馬では1月12日を最後に半年もレースがない。歴代リーディングら8人の騎手が競馬場を去り、「生き残った」ともいえる騎手はわずか10人。このうち1人は15日間の騎乗停止(SNS上の懸賞金受領)。デビューして1~2年の見習騎手が3人含まれており、騎乗技術を含めた笠松の「戦力」は大幅にダウン。騎乗手当相当の補償費はあるが、賞金の進上金はなし。レースに向けたモチベーションは低下し、収入も減少し苦しい生活を強いられてきた。世間からは不祥事に対する批判を浴びて、逃げ出したくもなっただろうが、「レース再開」の日が来ることを信じ、午前1時台からの攻め馬に励んできた。

 この日の能力審査は1レースのみで、ゲート試験をクリアした3頭がチャレンジした。第2コーナー過ぎのスタート地点から3頭がダッシュ。向正面の下り坂から加速し、ワンターンで3~4コーナーを回る迫力ある攻防は笠松ならでは。スタートダッシュをを決めたカサマツノライトオ(牡2歳、笹野博司厩舎)=水野翔騎手=が1着でゴールイン。やや出遅れたサンジョノコ(田口輝彦厩舎)=森島貴之騎手=、クリーンゲーム(伊藤強一厩舎)=東川慎騎手=と続いた。3頭とも制限タイム56秒以内で「合格」をゲット。デビュー戦に向けて鍛錬を積むことになる。笠松の騎手はここ半年、能力審査以外は攻め馬ばかりだっただけに、勝負服での勇姿は新鮮でまぶしかった。

能力審査でスタートする2歳馬。開催自粛が続き、ゲートオープン自体が新鮮な笠松競馬場

 ■笠松発のスターを目指すカサマツノライトオ

 好走したカサマツノライトオは、笠松発のスターを目指している生え抜き馬。「再開後の笠松に光(ライト)を」と、馬主さんが笠松デビューにこだわり、レース再開を待ち望んでいる。父が2004年・スプリンターズSを制覇したカルストンライトオで、スプリンター血統。騎乗した水野騎手は「51秒だから大したことないですよ」というが、スタートがうまく笠松向き。ラスト200では、実戦を想定した力強い手綱さばきでレースを覚えさせ、今後の成長にも手応えを感じていた様子。自厩舎の期待馬でもあり、再開後の新馬戦が注目される。

 かつては(もう20年以上前ですが)ライデンリーダー、レジェンドハンター、フジノテンビーなど笠松の800メートル戦を好タイムで駆け、中央の舞台でも重賞Vをさらった笠松の若駒たち。中央移籍前だったアンカツさん(安藤勝己元騎手)も「将来性豊かな3歳馬(現2歳馬)にしか興味がなかった」と笠松所属馬で中央のGⅠ勝利を夢見ていた。オグリキャップやワカオライデン軍団など笠松の秋風ジュニアを勝つようなトップクラスは、中央の重賞をあっさり勝つほどレベルが高かったからだ。
 
 昨年の2歳馬ではノーヴィー(井上孝彦厩舎)が注目された。5月の能力審査では800メートルで54秒9の平凡なタイムだったが、6月の新馬戦では大変身。向山牧騎手騎乗でレコードタイムに0.1秒差と迫る47秒6をたたき出し、3戦3勝。現在は大橋敬永厩舎に転厩したが、この馬も笠松に残り、レース再開を待っている1頭でスターホース候補だ。

 今年の2歳勢ではドリームユーリー(後藤祐弥厩舎)とハルルン(笹野厩舎)がいずれも渡辺竜也騎手の騎乗で800メートルを50秒3で駆けており、こちらも新馬戦の有力馬である。 

 ■騎手は「絶好調です」「レースに出たいです」

たくましくなった東川慎騎手。再開後の活躍に闘志を燃やしている

 レース再開に向けた騎手の思いはどうか。能力審査後、本番に向けて闘志満々だったのが東川騎手。実戦形式でのレースで元気いっぱい。攻め馬も精力的にこなし「絶好調です」と笑顔がはじけていた。昨秋デビューし、大けがを乗り越えて1月に初勝利を挙げた長江慶悟騎手は「レースに出たいです。早くやってくれないですかねえ。体調は変わりなくいいし、けがも大丈夫です」と意欲。昨春デビューした深沢杏花騎手も「はいっ、それはもう」と再開を待ちわびている様子。じっくりと攻め馬に励んできた半年だったが、先輩のアドバイスを受けて磨いてきた騎乗技術を早くレースで発揮したいことだろう。

 自粛中も2歳、3歳馬の能力審査は行われてきた。例年の新馬戦は6月前後にはスタートしていたが、今年は夏の終わりか、秋になるのか。初夏の風物詩は季節遅れでのスタートになってしまった。        

 ■「8月末の開催を期待したい」と知事

 これまで不祥事の連鎖で先送りされてきたレース再開。古田肇知事は13日、「(手続きが)このペースで行けば、遅くとも9月中には再開できるのではないか。8月末の再開も期待したい」と見通しを示した。ようやく再開へと前進しており、笠松の厩舎に愛馬を預け続けて出走を待ち望んできた馬主さんたちには、朗報となった。厩舎関係者にとっては、攻め馬の段階からようやくレース出走の目標を持って前向きに取り組めることになる。

 それでも、1月の所得隠し発覚直後に古田知事は「遅くても3月には笠松競馬を再開したい」との見通しを示していた。「不祥事のデパート」が定着してしまっただけに、今後も「また何かやらかすのでは」との疑念は消えない。

 黒字化を果たした2013年度以降、度重なる放馬事故などで安全確保の面で「赤信号点滅」の状態が続いていた笠松競馬。本年度の単年度赤字は確実で、開催自粛がこれ以上続けば、運営能力が問われることになり、再開のためのタイムリミットは近づいている。主催者としては「公正競馬の確保」が第一であり、馬券の不正購入や所得申告漏れでの処分は終わり、決着済みだ。ネット上などでの雑音に惑わされることなく、強い信念を持って再開させる覚悟が必要である。

 ■総務省「指定手続き、できるだけ早く公表したい」

 県地方競馬組合の構成団体である笠松町と岐南町は9日、レース再開に向け、総務省へ公営競馬の指定申請を行った。古田知事は「これまでの県の対応を説明し、理解をしてもらい、指定をいただく」とし、競馬組合には再開の準備を始めるように指示した。長期間止まっていたレースの編成、競走馬・厩舎関係による出走準備を進め、ネット業者には馬券販売を認めてもらう必要がある。

 2町の指定申請を受けた総務省によると、「再開時期がいつとは言えないが、しっかりと手続きを進めていきます。農林水産省とも協議して、できるだけ早く公表したい」と強調。「東京五輪の開幕も迫っており、その影響で手続きがずれ込むのでは」との声に対しては「五輪とは関係なく、手続きを進めます」と述べ、赤字必至となっている笠松競馬の厳しい現状についても理解を示した。前向きな印象で、何とか8月末に再開できるよう、7月末には手続きを公表してもらいたいものだ。それを受けて、競馬組合は速やかに再開時期を示すべきだ。 

 ■笠松の騎手は当初9人、名古屋の騎手の参戦は?

 レース編成はどうなのか。人も馬もスカスカになって、大丈夫なのか。地元騎手はわずか9人でのスタートとなり、乗り役不足が深刻だ。助っ人として同じ東海公営の名古屋の騎手を頼りにしたいところだが、再開が正式決定しないことには、騎乗依頼もできない。快く笠松のレースに参戦してもらうためには、愛知県競馬組合と厩舎関係者の協力が必要になる。

 競走馬も激減した。調教は行われているが、7カ月以上も本番レースから遠ざかり、どれだけの馬が参戦可能なのか。2歳馬を中心に「笠松でぜひ出走させたい」という馬主さんの情熱は、厩舎にとってありがたいことだ。それでも調教師4人が引退したこともあって、笠松所属馬は110頭ほど減ってしまった。オープンクラスなど有力馬は他場へ流出。残っているのは能力的に勝負にならなかったり、休養中の馬も多く、故障馬でも補償金を目当てに流入する馬もいるという。

 こういった状況で、レース編成は厳しくなる。フルゲートは12頭だが、既に昨夏から騎手不足は深刻で、今年1月前半は8~9頭立てのレースが多かった。再開後はさらに少頭数になり、5~7頭立ても増えそうだ。

日本海スプリントを制覇したニュータウンガールと岡部誠騎手(金沢競馬提供)

 ■ニュータウンガール復活、日本海スプリントで1年ぶりV

 笠松から他場に流出した競走馬では、うれしい復活劇もあった。昨年6月の東海ダービー制覇後、勝利から遠ざかっていたニュータウンガールが、日本海スプリント(金沢)で1年ぶりVを飾った。
 
 笠松競馬のスターホースとして重賞5勝を飾っていたが、開催自粛とともに、活躍の場を求めて笠松・井上孝彦厩舎から名古屋・角田輝也厩舎に移籍。900メートル電撃戦の日本海スプリントでは、後方からの追い込みをズバッと決めた。

 レコードタイムを更新する好騎乗を見せた岡部誠騎手は地方重賞通算100勝目も達成。「しまいが切れましたねえ。(馬体重マイナス27キロだったが)目いっぱい仕上げてのことで、ゴーサインで差し切れると思った。この馬でいろいろな所で活躍したいです」と好感触。

 短距離戦が刺激になって「お目覚め」となったようで、今後の重賞戦線での活躍が楽しみだ。笠松時代の東海ダービー馬でスターホースだっただけに「地元に戻ってきてほしい」という思いも強いが、現状では難しいか。再開後の11月24日に予定されている笠松グランプリ(1400メートル)にはぜひ参戦し、全国の強豪を相手に盛り上げてもらいたい。