岐阜新聞Web

  • 美濃
  • 飛騨
  • 美濃
  • 飛騨


オグリの里

笠松競馬の新エース・渡辺騎手V量産



最終レース後は騎手たちもホッと一息。渡辺竜也騎手ら、笑顔があふれている

 勢い一番、「V字」のニュー勝負服で勝利を量産。笠松競馬の新エース・渡辺竜也騎手が、前開催12勝を挙げる活躍を見せ、2開催連続での2桁勝利。「笠松の顔」として、来場者やネット越しのファンに力強い手綱さばきをアピールした。

 オータムシリーズ2日目の7~10R、自厩舎の馬(笹野博司厩舎)で4連勝。3日目には2着が4回続いた後に2連勝。騎乗機会10レース連続で連対を果たし、応援するファンを喜ばせた。最終日にも3連勝を飾り、固め勝ち。32戦して12勝、2着9回で6割5分以上の高い連対率をたたき出した。信頼される騎手として、有力馬への騎乗も多く、騎手リーディングのトップを快走している。

 「今週は12勝させていただき、個人的に過去最多勝利でした。久しぶりの有観客で、たくさんのファンの方に遊びに来ていただいて、より一層力が入りました。まだまだ信頼回復には時間がかかると思いますが、応援していただけるとうれしいです」と自身のツイッターにコメントを寄せた。

 ファンからは「笠松の完全復帰に向けて、渡辺騎手が引っ張っていってくれることを期待します」や「久しぶりの笠松観戦、本当に涙が出たし楽しかった。ゴール前では叫んでしまったよ」といった熱いメッセージが寄せられた。

 ■「いい馬に乗せてもらっているんで」

 レース後「好調ですね、何かひらめいたんですか」と聞くと、「いい馬に乗せてもらっているんで、まだまだ。安定して勝ちたいですね」との返事。確かに1、2番人気で10勝を挙げており、「そういう馬じゃないと勝てないですよ。頑張ります」と現状に満足せずに、前を向いた。

 笠松の歴代リーディングは次々と去り、2年連続2位だった渡辺騎手が押し出される形にはなったが、デビュー以来、地元でどっしりと構えて笠松のエースに急成長。名古屋の岡部騎手は不気味な存在だが、渡辺騎手が10勝差をつけており、けがさえなければ、今年はリーディングの座を奪えそうだ。

 それでも重賞戦線ではやや苦戦。笠松のオータムカップでは4番人気・シャイニングデイズ(牡5歳)で4着、秋風ジュニアは6番人気・エイシンヌイトム(牝2歳)で5着に敗れ、悔しさも味わった。

 名古屋・秋の鞍では東海ダービー馬トミケンシャイリが意地を見せて、今井貴大騎手とのコンビで逃げ切りV。名古屋には9カ月ぶりの参戦となった渡辺騎手は、9番人気のエイシンイナズマに騎乗し、8着に終わった。名古屋ではまだ重賞Vがなく、来春、競馬場が弥富に移転する前には何とか勝って、名古屋の競馬ファンの前でも勝利インタビューを受けたい。

3歳特別でスーチャンを連勝に導いた渡辺騎手。2開催連続で2桁勝利を挙げる活躍を見せている

 ■スーチャンとの相性抜群、大変身の3連勝

 自厩舎に移籍してきたスーチャン(牝3歳、笹野博司厩舎)=トゥザグローリー産駒=とは相性抜群。3歳特別を連勝するなど、追い込みの競馬で3連勝を飾った。自粛中は一時名古屋に移籍して8着続き(3回)だったが、笠松へ戻り、休養効果もあって本格化。キンレンカオープンでは9番人気だったが、大外から鋭い決め手を発揮して初勝利。関係者を驚かせる変身ぶりを見せたスーチャン。続くエリンジウムオープンでは早めに先行馬をかわして連勝となった。

 最終レース後は、騎手らもホッと一息。いつも笑顔があふれており、渡辺騎手は「終わってみれば、楽勝でしたね。もう少しじっくり行ってもよかったが。能力検査が終わってから強くなった」と8月から乗るようになって手応え十分。自粛前は、ジュニアキング3着をはじめ2着5回と「善戦レディー」だったが、渡辺騎手とのコンビで本領発揮。パワーアップしたこの馬を3~4コーナーでよく動かしており、好騎乗が光った。古馬との初対戦となった前走はインから抜け出してV。伸び盛りで、どこまで成長するのか、注目していきたい。 

 ■レジェンド・安藤勝己、川原正一騎手の背中を追って

 3年ほど前、笠松のリーディング経験者は、渡辺騎手について「冷静に見て、将来は彼がリーディングになるのでは」とスタートのうまさやレース運びをたたえていた。その時点では「へー、そうなんだ」と意外に感じたが、ヤングジョッキーズシリーズで2年連続ファイナルに進出するなど、渡辺騎手の力量は確かなものだった。 デビュー5年目の21歳。5年連続リーディングの笹野厩舎に所属していることは大きく、騎手は減ったが、若手で笠松競馬を引っ張っていけるのは、やはり渡辺騎手だろう。

 不祥事などいろいろとあったが、レース再開前の攻め馬では「(僕は)大丈夫です」と頼もしい一言もあった。昭和の八百長・覚醒剤事件でもレースが2カ月自粛されたが、翌年デビューした安藤勝己騎手や川原正一騎手らが、新しい風を吹き込んでその後の競馬場再興へとつなげてくれた。

 そういった役割を果たせる騎手が、再生を目指す笠松競馬には必要で、渡辺騎手への期待は大きい。レジェンドであるアンカツさんや川原騎手の背中を追って、地元メインレースはもちろん、全国の重賞戦線でも勝ちまくれる騎手へと大きく羽ばたきたい。

オータムカップを圧勝した兵庫のテーオーエナジーと田中学騎手ら関係者

 ■オータムカップは田中学騎手のテーオーエナジー圧勝

 兵庫勢はやはり強かった。再開後の笠松競馬で初重賞レースとなったオータムカップ(SPⅡ、1900メートル)。1番人気の兵庫・テーオーエナジー(牡6歳、橋本忠明厩舎)が田中学騎手の好騎乗で逃げ切った。2着の名古屋・サンライズフルメンに2秒7差をつける圧勝。3着にも名古屋のミラクルシップが入った。笠松勢はシャイニングデイズ4着のほか振るわず。2馬人気のヒルノデンハーグは失速し、12着に終わった。田中騎手の笠松での勝利は、エーシンクリアーで岐阜金賞(2013年)を制して以来8年ぶり。

 勝ったテーオーエナジーは中央5勝馬で、移籍初戦は力が違い過ぎた。4300勝超えの名手である田中騎手は「スピードを持っている馬。想像以上に強かったので、これからが楽しみ。久しぶりに笠松に来られてうれしいです」と喜びを語った。
         
 ■快速馬シルバが期待通り、秋風ジュニアV

 2歳戦・秋風ジュニア(準重賞、1400㍍)=笠松所属馬限定=はオグリキャップをはじめ、ライデンリーダーやフジノテンビーが勝った出世レースで、この3頭は中央重賞Vにつなげた。桜花賞馬のオグリローマンは、秋風ジュニアではマルカショウグンに敗れ、笠松時代唯一の敗戦。最近では東海ダービー馬となったビップレイジングも勝利を収めている。

 800メートル戦を47秒4でレコード駆けした快速馬シルバ(2歳牝、後藤正義厩舎)=トーセンレーヴ産駒=が秋風ジュニアに挑戦。9月開催で通算1000勝を飾った藤原幹生騎手が2番人気で騎乗。大外のシルバはスタートでやや外によれたが、素早くインに切れ込んで快調な逃げ。バネのあるフットワークで、追ってきた向山牧騎手騎乗のドミニク(2歳牝、後藤正義厩舎)に1馬身半差をつけ、1分29秒2でゴール。同厩舎でのワンツーとなった。3着は門別から転厩したシャローナ(牝2歳、田口輝彦厩舎)で、牝馬が上位を独占した。

秋風ジュニアをシルバで制覇した藤原幹生騎手(右)と地方競馬通算800勝を達成した後藤正義調教師

 ■後藤正義調教師に「通算800勝」をプレゼント

 「おめでとうございます。強かったですね」と声を掛けると、藤原騎手は「ハイッ、理想的な展開でした。あれしかやりようがなかったんで」と会心の逃げ切りVを喜んだ。初めての1400メートル戦で「距離は持つかどうか」の懸念もあったが、他馬の追い上げを許さず。ゴール前では「牧さん(向山騎手)のドミニクも走ると思っていたので、最後はもう目いっぱいでしたね。何とか頑張ってくれ」と右ムチをうならせて押し切った。

 藤原騎手にとっても重賞戦線での期待馬で「スピードが違いました。ペースに慣れれば、伸びにつながると思います」。しばらくは笠松に置いて使われる見通しだが「次は未定で、状態を見てですね。(15キロ減で)体重も減らしてましたしね」と。道中は力んで行き過ぎてしまったが、最後の直線でもバテ込むことなく確かな走りを見せた。

 シルバを管理する後藤正義調教師にとっても、うれしい「地方競馬通算800勝」達成となり、「関係者やファンのおかげです。今後も一頭一頭を大切に管理していきますので、応援してください」と感謝。ウイナーズサークルでの表彰式後には、800勝目をプレゼントできた藤原騎手とのツーショットでスマイル全開。車内でも頼もしい姿があった。

 笠松生え抜き馬として、今後はジュニアクラウン(11月11日)、ライデンリーダー記念(12月30日)などでの活躍が期待される。このまま笠松所属で次のステップに挑戦できれば夢は広がり、応援するファンにとってもうれしいことだ。

 ■ファンの胸を躍らせるナイスファイトを

 プロ野球の世界では、2年連続で両リーグの最下位だったオリックスとヤクルトが、今年は首位に立って優勝争い(10月14日現在)。投打の歯車がガッチリとかみ合ってチーム力が飛躍的にアップした。開幕前のテレビ解説者らの順位予想は大外れ。一気の巻き返しは、競馬なら最低人気馬による「大万馬券」といえるだろうが、両チームの監督・コーチ、選手たちの努力は素晴らしいものがあった。

 同じ勝負の世界で「チーム」としての歯車が機能せずに、どん底を味わい「地方競馬のお荷物」となった笠松競馬だが、ここから再起動。今後、巻き返せるチャンスは十分に残されている。大原浩司騎手会長をはじめ、リーディング上位の渡辺騎手、藤原騎手らが中心になって、まずはクリーンな競馬に徹することが第一。そして熱いレース。ゴール前では「数頭が横一戦」のファンの胸を躍らせるナイスファイトを見せていけば、信頼回復につながる。いい馬も預けてもらえるようになる。
 
 多くの騎手や調教師を失い、ぎりぎりの状況は続くが、レースを再開できたからには、前に進むしかない。中央のGⅠを制覇したオグリ兄妹に代表されるように、これまで「中央でも勝てる強い馬づくり」に情熱を注いできた笠松競馬のホースマンたち。馬主さん、厩舎スタッフ、騎手たちと組合が一丸になって、応援してくれるファンとともに「笠松競馬再興」へとつなげていきたい。次回開催で記念レース(10月28日)が開催されるラブミーチャンのようなスターホースづくりに励んでいきたい。