世界緑内障週間「ライトアップinグリーン運動」の県内向けポスター

眼科医 岩瀬愛子氏

 緑内障は、慢性的に視野が欠けていく目の視神経の病気で、進行して見えなくなった視野は戻りません。しかし、初期や中期では視野異常の自覚がないので、気付きにくいということを前回のこのコーナーでお話ししました。

 進行してしまうと日常生活に不自由を感じるようになってしまいますが、早期に発見し、治療を継続することで進行を止められれば、多くの患者さんはまったく不自由なく一生、視機能を維持できます。早期発見のためには、自覚症状がない段階で発見しなければなりませんので目の定期検診が必要です。

 緑内障になっているなら、一刻も早く見つけるのが本当はよいのですが、進行してしまってから見つかった場合は、その時点の視機能を維持することが大切になります。いずれにしても、いったん治療を開始した後は、目の状態に合った適切な治療を継続し、できるだけ不自由のないところで踏みとどまることを目指します。治療は一生続くので、主治医と一緒に走る長距離走にも例えられます。

 定期検診の大切さですが、高齢になるにつれて緑内障になる割合が高くなるので、40歳の時に緑内障でなかった人が、70歳でならないとは限りません。そういう意味では、検診の継続も大切かと思います。

 世界緑内障週間(World Glaucoma Week、WGW)という、世界一斉にさまざまなイベントを行う国際的な緑内障啓発期間があります。2008年から毎年3月上旬に、1週間にわたり、緑内障の知識を広く普及させるためのさまざまな活動が、世界中の国や地域で行われてきました。緑内障は世界的に、失明の原因として重大な疾患だからです。今年は8~14日です。

 日本でも、緑内障を研究する学術団体である日本緑内障学会が、研究とは別に、啓発活動も重要な事業と考え、日本各地でいろいろな活動を行ってきました。「ライトアップinグリーン運動」はその一つで、全国の公共機関や医療機関などを緑色にライトアップする運動です。日本で始まったこの運動は、2015年は国内5カ所でしたが、今年は日本全国や海外など約200カ所で実施されます。岐阜県では、公共機関は「岐阜城」「多治見修道院」「多治見市役所駅北庁舎」で実施され、医療機関は15カ所ほどの施設が参加します。

 この期間にライトアップされた建物を見て、今まで目の病気に関心がなかった方が、緑内障という病気について知るきっかけになればと願っています。「ライトアップinグリーン運動」で伝えたいメッセージは、「早期発見・継続治療」と「希望」です。「希望」には、仲間と家族と主治医とともに治療する中で「あなたの目がずっと見えていますように」という思いを込めています。より多くの人に緑内障について関心を持っていただき、たとえ緑内障がある人でも、適切な治療の結果、高齢になっても日常生活に支障を来すことのないよう、切に願います。

(たじみ岩瀬眼科院長、多治見市本町)