産婦人科医 今井篤志氏

 よくみられる女性の病気の一つに、子宮筋腫があります。子宮筋腫は30歳以上の20~30%、小さな筋腫を含めると70%の女性が持つともいわれています(2015年1月19日付本欄参照)。子宮筋腫の根本的な治療法は手術ですが、薬で子宮筋腫を小さくしたり、出血や痛みなどの症状を軽くすることができます。手術は避けたいという女性は多く、今回は切らない子宮筋腫の治療方法を考えてみましょう。

 子宮筋腫の発育には、女性ホルモンが関与しています。初経前には子宮筋腫はみられず、また閉経後にも新たな子宮筋腫の発生はなく、すでに存在する筋腫も縮小します。人工的に女性ホルモンを低下させ、月経を止めると(偽閉経療法)、子宮筋腫が半分近くにまで小さくなります=図=。この治療の欠点は、女性ホルモンの低下により、更年期症状や骨密度の低下が生じるので、半年間が治療の限度です。また治療を中止すると、筋腫は元の大きさに戻ってしまいます。

 閉経が間もなく来るであろう40代後半の女性は、この治療の対象です。人工的に月経を止め、そのまま本来の閉経に逃げ込むことを目指します。自然閉経に逃げ込めない場合には、この治療を繰り返すこともありますが、骨密度の維持や更年期症状の出現に対して厳重な管理が必要です。また、子宮筋腫の手術前に、この治療で筋腫を小さくして手術の時間短縮、出血量の減少、合併症軽減のためによく用いられている方法でもあります。

 治療薬には、毎日の点鼻スプレーか内服薬、4週間に1回の注射薬の3種類があります。いずれも一長一短があり、自分の生活スタイルに合わせて選択することをお勧めします。

 そのほか、経口避妊薬(ピル)を用いることがあります。女性ホルモン量の少ないピルは月経痛や月経量を減少させるのみならず、子宮筋腫の成長を抑えます。若年女性で手術はできるだけ避けたい、という人は試してみる価値はあります。

 また切らない治療方法として、子宮への血流を止めてしまう子宮動脈塞栓(そくせん)術、強力な超音波を筋腫に集中させて筋腫を熱凝固させてしまう集束超音波治療があります。前者は短期間の入院が必要ですが、後者は日帰り治療も可能です。

 子宮筋腫は良性の腫瘍で、その半数以上が無症状で経過し、健康診断や他の病気の診察時に偶然、見つかる場合があります。出血や痛みなどの症状があったり、筋腫が大きくなり周囲の臓器を圧迫するようになると、治療が必要になります。一般的な子宮筋腫の治療は子宮そのもの、または子宮筋腫だけを摘出する手術療法です。

 しかし、手術は誰しもが避けたい手段です。今回紹介した「切らない治療」は年齢、筋腫の部位や大きさ、症状あるいは将来の妊娠希望によって、向き不向きがあります。一人で悩まず、専門医の知恵を借りましょう。

(松波総合病院腫瘍内分泌センター長、羽島郡笠松町田代)