岐阜大学皮膚科医 松山かなこ氏

 毎日、暑い日が続いています。夏になって、日焼けした人に出会うことが多くなりました。日焼けをして肌が褐色になることは、よく経験することです。ところが皮膚の色が白色に抜ける疾患があります。皮膚の色が白くなる疾患には、眼皮膚白皮症と呼ばれる先天性(生まれつき)の疾患もありますが、尋常性白斑、まだら症、加齢による老人性白斑、眼の疾患と関連するフォークト・小柳・原田病など後天性に出現する疾患があります。その中で最も多い尋常性白斑について、今回は説明します。

 尋常性白斑は、メラノサイト(色素細胞)が何らかの原因で減少・消失する病気です。メラノサイトはメラニン顆粒(かりゅう)を作っていて、作ったメラニン顆粒を表皮細胞に供給することで、紫外線による皮膚の傷害や光発がん、光老化を防御しています。そのため紫外線にあたると、メラニン色素が増えて色が黒くなるのです。尋常性白斑は、そのメラノサイトが減少したり、消失してしまうので、メラニン色素を作れなくなり、結果として肌の色調が白くなります。

 現在のところ病因は不明ですが、メラノサイトやメラニンに対する自己免疫、末梢(まっしょう)神経の機能異常などが関与していると考えられています。発症に男女差はなく、20歳前後の若年者に多い疾患です。

 メラニン顆粒が減少・消失した白色調の皮膚を「白斑」と呼びますが、境界がはっきりしていることが多く、黄色人種である日本人では目立つため、精神的な負担となります。白斑の形や大きさはさまざまで、発症部位も顔面の片側にだけに出る型、手指や顔に生じる型、体のいたる部位に生じる型など、いくつかのタイプがあります。原因が解明されていないため、残念ながら確実な治療法が無いのですが、ステロイド軟膏(こう)や、活性型ビタミンD3軟膏、タクロリムス軟膏、A波紫外線(UVA)とB波紫外線(UVB)などを照射する紫外線療法が、メラニン色素の再生に有効とされています。

 紫外線療法の中でも、ナローバンドUVB照射療法は、特殊な波長のUVBのみを照射できる装置を使用する治療で、治療効果に優れ、副作用も少なく有用な治療法です。この装置は所有していない施設もあるので、治療を希望する人は、皮膚科などの医療機関に事前に問い合わせてください。
 また、植皮術や外科手術による治療を行うこともあります。治療をしても、なかなか色素が戻らないこともあるので、その場合には化粧品を使用したカモフラージュメイク療法が有効です。人口の約1%に発症する疾患なので、珍しい疾患ではありません。心配な人は、一度皮膚科医に相談してみてください。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)