小児科医 福富悌氏

 最近晴れていても、かすみがかかったようにぼんやりした日があります。この原因は黄砂によるものですが、このような日にはなぜか、せきやぜんそく発作の子どもが多く来院します。そこで黄砂が体に及ぼす影響を調べてみました。

 いくつかの報告があり、小児ぜんそくの子どもは強い黄砂が飛来したとき、ぜんそく発作を起こして入院することが多くなっていました。特に6~12歳の子どもが多く、外で元気に遊ぶことが多いためと考えられました。

 成人についても、黄砂の時期には呼吸器症状が悪化し、特に花粉症などアレルギー性鼻炎のある気管支ぜんそくで、症状が悪くなることが多いようでした。アレルギー性鼻炎だけの人でも、症状の悪化が認められました。

 また呼吸器以外では、黄砂が皮膚に付くと、乾燥している肌を刺激し、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させることがあるようです。さらには疲労感や頭痛、耳鳴りの原因にも考えられるなど、さまざまな症状があります。

 黄砂は、東アジアの砂漠域や黄土地帯から運ばれますが、成分は土と同じです。しかし、空気中を浮遊している間に、硫黄酸化物や窒素酸化物などさまざまな粒子を吸着するだけでなく、細菌や真菌なども付着しているようなのです。黄砂そのものははるか昔からありましたが、近年は、このような化学物質や細菌などが黄砂に付着することにより、呼吸器症状などさまざまな症状が出てくると考えられます。

 黄砂に対する予防薬はないため、対策としては、マスクを付けて吸い込まないようにすることが大切です。次に喉や気管支の状態を整えることでしょう。

 漢方薬ならば、くしゃみや鼻水が多いときは小青竜湯が良いでしょう。喉が渇いたようにガサガサした感じで、皮膚も乾燥しているようなときは麦門冬湯が良いでしょう。切れにくいたんが多く、せきが長引く時には清肺湯が、せきが出て喉が詰まる感じの時やぜんそくが出る場合には、柴朴湯(さいぼくとう)や麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)などが良いでしょう。

 風邪でもないのにせきが続く、花粉の時期が終わっても鼻炎の症状が続くときなどは、黄砂も原因の一つに考えて医療機関で相談してみてはいかがでしょうか。

(福富医院院長、岐阜市安食)