放射線治療装置では、放射線照射機器(A)と、エックス線撮影した体内の骨の位置を合わせ(BとC)、がん患部に集中して照射する

放射線治療医 田中修氏

 今日12月23日は一昨年まで天皇誕生日の祝日でしたが、2月23日に変わったため、昨年から平日になりました。クリスマスプレゼントを買う暇がなくなった方も多いのではないでしょうか。 

 「放射線科」という言葉は聞いたことがあるかと思いますが、放射線科には二つの専門があります。私の属する「放射線治療科」、画像診断を専門とする「放射線診断科」、名前は似ていてもやっていることは違います。放射線治療科は局所のがん治療で、どちらかといえば手術に似ており、外科系に属します。放射線診断科は画像を見て診断する、病理診断医に似た働きをします。

 放射線治療ですが、適応疾患は多岐にわたります。完全に治す目的(根治)では①頭頸(けい)部領域のがん②肺がん③乳がん④子宮頸がん⑤前立腺がん⑥肝臓がん⑦悪性リンパ腫⑧食道がん⑨脳腫瘍があります。また、症状を減らす目的(緩和)として、①転移性骨腫瘍②転移性脳腫瘍③がんが神経や血管を圧迫して起こす症状があります。つまり全身のがんに対して治療することが可能です。

 放射線治療の特徴ですが、上述した外科手術と同様に治療した部位にしか影響を与えません。例えば乳房の治療では照射されていない頭髪やおなかには無影響です。前立腺でも胸や頭髪には全く影響を与えません。通院で治療できる場合がほとんどですが、根治目的では25~35回くらいの通院が必要になります。なぜ1カ月も通う必要があるかというと、小刻みに分割にした方が副作用が少ないからです。

 一方で、症状を和らげる緩和照射では、短期間(1~5回)で済ませた方が通院も少なくて済み、効果も早く出ることが多いです。だいたい放射線治療の5日後くらいから痛みが減り、ひいては鎮痛薬の量を減らすことができます。鎮痛薬の副作用も減ります。ただし、緩和照射は放射線の量が少なく、あくまで現在ある症状をなくすのがメインであり、がんを根治する治療ではありません。がん種にもよりますが3~6カ月後にがんが再増大して症状が出てくる場合があります。

 このように、放射線治療の設備がある病院では、痛みのケアが非常にしやすいのが特徴です。設備がない病院だと、鎮痛薬を増やすしかありませんが、近年、放射線治療の設備がない施設から、当院のような設備のある病院への紹介も増えています。がんになってつらいこととして「吐き気」「痛み」「不安」が多くを占めます。痛みに対する治療は放射線治療科が得意とするものであり、痛みがつらい場合は医師・看護師さんに相談してみるとよいでしょう。

(朝日大学病院放射線治療科准教授)