両手を上げて照射。薄い灰色の部分が放射線の当たっている範囲

放射線治療医 田中修氏

 こんにちは。カラフルなアジサイが公園を彩っていますね。今日はロックの日です。六(ろく)と九(く)で「ロック」の語呂合わせ。楽曲ジャンルのロック(rock)の記念日です。この季節は職場健診の結果が返って来ている時期であり、病院で再検査という結果が出た人も多いかもしれません。とりわけ、レントゲンの肺がん、マンモグラフィーの乳がん、そしてPSA血液検査の前立腺がんが気になるところだと思います。今回は乳がんについてお話ししたいと思います。

 最近のトピックですが、この新型コロナの感染拡大が始まって以来、米国のマサチューセッツ州では約2万人の女性が乳がんの定期検診を受けなかったそうです。通常、がんの兆候が発見される割合は、米国においては検診を受けた女性千人につき5人です。「つまり、がんの可能性があるという診断を100人が受けていないことになります」と、報じられました(科学雑誌Nature 2021・2・9)。日本においては乳がんの罹(り)患(かん)率は米国に比べて高くありませんが、コロナ下のため病院へ行けなかった方もいらっしゃると思います。自分で触診をして違和感がある人はすぐに受診した方がいいですが、そうでない人もコロナが落ち着いたら検診に行くようにしましょう。

 話は変わりますが、乳がん治療は手術プラス放射線治療がセットで、ほぼ全員の患者さんに行われる治療です。放射線治療科は手術後の再発予防を担っています。放射線治療は二つの方法があり、一つは乳房温存療法の手術をした患者さんに行われる治療=図上=、もう一つは乳房を全摘した患者さんに行われる治療で胸だけでなく首の近くのリンパ節まで照射します=図下=。範囲が広く感じますが、ほとんどの方が日焼け程度の副作用で済み非常に楽な治療と言えます。ただ、5~6週間、放射線治療15分のために毎日通院が必要であることが面倒だと感じると思います。しかし、将来の再発を考えたら毎日こまめに放射線治療をしたほうがよいため、頑張って通ってもらっています。

 乳がんは触診で早期に発見できる病気です。マンモグラフィーの検診と普段からの自己触診で、早期発見早期治療になるよう心掛けてください。

(朝日大学病院放射線治療科准教授)