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教えてホームドクター

無汗症

発熱や頭痛、熱中症にも 体温調節できず、原因は多様



皮膚科医 清島真理子氏

 前回、汗が多く出過ぎる「多汗症」のお話をしましたね。汗は多過ぎると困りますが、少な過ぎても困ります。今回は「無汗症」「減汗症」のお話をしましょう。

 汗には体温調節という大切な役割があります。汗が全く出ない、あるいは極端に少ない人は、夏の暑い時期や運動した時に「うつ熱」の状態になり、発熱、全身のほてり感、脱力感、吐き気、目まい、頭痛、動悸(どうき)などの症状を起こします。ひどい時には熱中症になって意識を失うこともあります。

 実際に汗が出ていないかを確かめるために発汗機能検査を行います。一般的に行われるのは温熱発汗試験で、暖かい部屋で体を温めた時の発汗をみます。無汗が全身の皮膚か、一部の皮膚のみかを検査します。脇や手のひら、足の裏の発汗も詳しくチェックします。健康な人では通常15分くらいで全身に発汗があります。

 汗はアセチルコリンという汗を作る指令が出て作られます。そこでアセチルコリンをごく少量、局所注射をすると健康な人では5~10分くらいでそこに汗が出ます。しかし、汗を作る汗腺がない、または汗腺はあってもアセチルコリンに対して反応が悪いと汗は出ません。無汗症の人でアセチルコリンを注射すれば発汗がある場合には、反応はよいけれどアセチルコリンがうまく出ていないのではないかと疑います。全身ではなく、例えば右半身のみ汗が出ないというような場合もあります。こういう場合には残りの半身は代償性発汗といって多汗になることがあります。

 無汗症の原因にはいろいろあります。まず生まれつき無汗症の患者さんがおられます。遺伝病のために生まれつき汗腺がないとか、汗腺に異常が起こり汗を作れないなどの病気です。大人になってから発症する無汗症では、原因が分かる場合と原因不明の場合があります。原因は、例えば甲状腺ホルモン低下症や糖尿病、全身性強皮症やシェーグレン症候群のような膠原(こうげん)病や薬剤、加齢などです。重症の湿疹や乾癬(かんせん)などで全身の広い範囲に皮膚症状が出ていると、皮膚の表面に出ていく途中で汗が詰まって出てこないこともあります。このような原因の分かった無汗症ではそれぞれの病気を治療することで汗がうまく出てくることもあります。

 原因が分からない全身性の無汗症に後天性特発性全身性無汗症(AIGA)という病気があります。10代から30代の若い人に多く、汗が出ないので皮膚は乾燥しています。入浴後や運動後に皮膚のピリピリする感じとか、小さなじんましん(コリン性じんましん)が出ます。アセチルコリンを注射しても汗が出ないので、アセチルコリン受容体が原因かもしれないと推測されています。この病気ではステロイドの点滴や飲み薬で治療をすることが多いです。

 もし運動後や入浴後に皮膚がピリピリしたり、小さなじんましんが出たりするようなら汗が出ているかに注目してみてください。

(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)




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