小児科医 福富悌氏

 秋はスポーツが盛んに行われ、新型コロナウイルスの流行さえなければ、旅行やお祭りなどのイベントも多く開催され、活気あふれる季節です。その一方で、高気圧と低気圧が入れ替わりやすく、台風なども頻発する季節です。このような気圧の変化は私たちの体にも大きな影響を及ぼしています。

 私たちの体は、自律神経の交感神経と副交感神経の切り替えと、両者のバランスによって保たれていますが、気圧の変化に影響を受けているのです。緊急事態宣言の発令もあり、屋外で活動する機会が減り、家の中で過ごす時間が増えました。そのせいもあって、せっかくよい天気でも体調不良を感じている人が多くなっています。

 自律神経の変化は免疫にも大きく影響しています。低気圧は空気中の酸素分圧が低下し、高気圧では上昇するため、体の活動性は低気圧で下がり、高気圧で上がることになります。このことにより免疫では、低気圧ではリンパ球、高気圧では顆粒(かりゅう)球系(白血球のうち殺菌作用のある成分を有する)が活性化されます。

 また、交感神経とリンパ球の関係についての最近の研究で、交感神経によってリンパ球の体内循環が制御されることが分かってきました。交感神経の活動が高まると、リンパ球のリンパ節への集積を反映してリンパ節における免疫応答が増強されることが示されました。

 多くの哺乳動物にとって、1日のうちで交感神経の活動が上昇する時間帯は、身体の活動の高まりとともに病原体に遭遇するリスクも高まる時間帯です。このような時間帯に、リンパ球がリンパ節に集積し、より強力な適応免疫応答を起こす準備ができているということは、感染防御の観点から非常に有利です=図=。

 これに関連し、インフルエンザワクチンではヒトの交感神経の活動が高まる午前中に接種した方が、夕方に接種した場合に比べて抗体価が高くなることも分かってきました。これは新型コロナウイルスのワクチンなど多くのワクチンでも同様だと考えられます。

 新型コロナウイルスの感染を防ぐためには自律神経を整えることが大切です。日中は体を動かし、夜間はしっかりと睡眠を取りましょう。漢方薬が効果的なこともありますので、漢方薬に詳しい薬剤師や医師に相談するのもよいでしょう。

(福富医院院長、岐阜市安食)