「パーシー、パーシー」

 幼少期の息子の口癖です。息子は、「きかんしゃトーマス」シリーズで、いたずら好きの小さなタンク機関車、パーシーがお気に入りでした。トーマスのビデオを見るたび、「パーシー、パーシー」と叫んでいたことを覚えています。

 普段、自転車や車で移動し、電車に乗る機会が少なかったからか、息子は、電車が大好きでした。1、2歳の頃は、毎日のように、アンパンマンと電車のビデオを楽しみ、アンパンマンショーや鉄道博物館にも行きました。

 息子は、3歳になる頃、トーマスが大好きになりました。プラレールで機関車を走らせ、毎日、絵本を読み、ビデオを見ました。クリスマスは、トーマスグッズが枕元にあるのを見て大喜び。山梨県にあるトーマスランドへ家族で出かけたのも、良い思い出です。私も、電車が好きな子ども時代を過ごしたので、息子と一緒にトーマスで遊ぶことは、自分自身の楽しみにもなりました。

 「パーシー」の乗り物で遊ぶ3歳の高田明浩さんと浩史さん=山梨県、トーマスランド

 私の実家は、大阪府の堺市にあります。夏と冬の年2回、家族で帰省するのが恒例です。近鉄特急で往復していましたが、特急列車も地下鉄も、岐阜ではなかなか見られないため、毎回、息子は大興奮でした。

 7年弱を過ごした奨励会時代は、毎月2回、大阪で例会がありました。小学生の間は、妻か私と一緒に行きましたが、中学生になると、毎回、一人で在来線に乗って行くようになりました。自宅から関西将棋会館までは、片道3時間半ほどかかります。岐阜、大垣、米原、大阪と4度乗り換えがあり、大垣での待ち時間は20分ほどあります。夏は暑く、冬は寒く、乗り換えは大変です。時折、私が一緒に行くと、往復するだけで疲れてしまったものです。

 在来線での往復は、体力的な負担だけでなく、帰宅が深夜になるため、定期テストの前など、「今回は、新幹線で行ったら」と話すこともありました。そんなとき、息子はいつも「新幹線に乗ると酔うから、在来線でいい」と答えていました。普段から乗り物酔いをせず、プロ入り後は新幹線に乗っている息子がそんなふうに話していたのは、金銭的な負担を考えてのことだったと思います。電車が好きな息子は、乗るのが苦にならなかったので、長い間、在来線で大阪へ通い続けられたのかもしれません。

(「文聞分」主宰・高田浩史)