YJS園田ラウンドで5着。レース後、笑顔を見せる東川慎騎手 

 「勝ちます」と闘志を燃やしていたが、結果は悔しい5着。「2022ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)」のトライアル園田ラウンドに8日、笠松競馬から東川慎騎手(21)が参戦。1レースのみの騎乗だったが、「一鞍入魂」で追い上げ、何とか 「掲示板」(5着以内)は確保した。11月2日・笠松ラウンドでのラストチャンスで巻き返し、ファイナルラウンド進出を目指す。
 
 地方、中央の若手ジョッキーが腕を競うYJSは、デビューして5年以内で100勝以下の「減量騎手」が対象。東川騎手は8月26日に地方競馬通算100勝、101勝目を達成。YJS参戦は今年でラストになる。

 2019年のデビュー以来、順調ならYJSへの出場機会は4回あったはずだが、波乱続きだった。1年目はレース中の落馬事故で長期離脱。笠松ラウンドでは装鞍所に姿を見せていたが、同期の騎手らの奮闘ぶりを、悔しそうに見守っていた。2年目は、トライアル最終戦の笠松で3着、2着と頑張ったが、ファイナルラウンド進出にはわずか1ポイント届かず。昨年は笠松競馬の不祥事で出場機会を奪われてしまった。

パドックではなく、装鞍所騎乗となった東川騎手と今村聖奈騎手(右) 

 ■パドックで入れ込み、今村聖奈騎手とともに装鞍所騎乗

 今年の園田ラウンドでは、2戦目の10Rに出場した東川騎手。前日には笠松競馬場で100勝達成セレモニーが開かれ、「園田で頑張って」と地元ファンからの声援もあった。騎乗馬は1番・イントゥアドリーム(牡7歳、三宅直之厩舎)。パドック周回では入れ込み気味で、厩務員が2人引き。JRAの今村聖奈騎手=寺島良厩舎所属=とともに装鞍所騎乗となった。東川騎手が返し馬に向かう途中も、馬はしばらく立ち止まって、うるさい様子を見せていたが、冷静に対処して
本馬場入りした。

 12頭立ての1400メートル戦(C2クラス)。東川騎手のイントゥアドリームは4番人気。前走3着で見どころ十分。「出来は良好だし、いい所を取れればチャンスはある」と陣営。好ダッシュを決めたが、中団やや後ろの8番手からの追走となった。

イントゥアドリームに騎乗し、装鞍所から返し馬に向かう東川騎手

 ■ゴール前よく伸びた、調教師も「いい脚を使った」

 同期の兵庫・木本直騎手が騎乗したシンリンが逃げて、今村騎手のオーマイリーベが2番手。東川騎手は3コーナーから追い上げを開始。4コーナーを回って最後の直線で外に出すと、ゴール手前ではよく伸びて、先頭から0.8秒差の5着。やや脚を余し気味だっただけに、惜しいレースになった。

 JRA・川端海翼(かいと)騎手(18)騎乗の7番人気・ジュンダッシュ(牝3歳・玉垣光章厩舎)が、4番手から直線突き抜けて圧勝した。2着は地元・兵庫の大山龍太郎騎手、3着はJRAの松本大輝騎手で、3連単は10万円超の高配当になった。先行した木本騎手は4着、今村騎手は6着に終わった。

 レースを終えた東川騎手。出迎えた三宅調教師から「いい脚を使った」と言われて、笑顔も見せていた。馬はパドックで落ち着きがなかったが、「スタートは良かったです。少し気難しいところがあると聞いていましたが、(レースでは)そんなことなかったです。もっと前の方に行きたかったが、俺が下手に乗っちゃいましたね」と残念そう。作戦的には「中団につけられたらと思っていましたが、後ろになってしまった。3~4コーナーでは手応えがあったし、もうちょっと早めに行ってれば、もっと前に来たかなあ」。

イントゥアドリーム(1)で5着に食い込んだ東川騎手(中央)。木本直騎手(左)が4着、今村騎手(右)は6着だった

 ■笠松ラウンドでのラスト2レースに意欲

 4コーナーを回って最後の直線では「結構いい脚で伸びてましたよ。悪くなかったですが、俺がうまくなくて。でも落ち着いて乗れました」。5着という結果については「悔しいですよ。もうちょっと、(いい着順が)あったと思う。園田のコースのことは理解してないんで、(他場では)経験を積んで勉強です。1レースだけでは物足りないので、もう1鞍乗りたかったです」。笠松ラウンドでは2レース残っており、前回は2着もあった相性の良い地元コース。「笠松では挽回しないといけないです」とファイナルへのラストチャンスに意欲を示していた。

 園田では地元の木本騎手や高知の浜尚美騎手ら、地方競馬教養センターで一緒に学んだ同期とも再会できた。浜騎手は1戦目(8R)のみの騎乗で、東川騎手とは対戦できなかったが、9番人気馬で2番手から3着に粘り込んだ。

 「97期は変わり者が多いですが。久しぶりに会えたし、元気そうでうれしかったですね」。もちろん明るくてお笑い系でもある東川騎手もその一人で、「決めポーズ」にもこだわりを持っている。今冬、笠松で期間限定騎乗した高知の妹尾将充騎手(負傷療養中)とも同期で「(レース中継は)見てくれていると思います。ラインでやりとりしていますし」と友情の絆を大切にしている。

ジュンダッシュでうれしいデビュー初勝利を飾ったJRA・川端海翼騎手(左から3人目)=NAR提供

 ■JRA・川端海翼騎手、うれしいデビュー初勝利

 2戦目をジュンダッシュで制したルーキーの川端騎手はJRA、地方を通じてうれしいデビュー初勝利となった。栗東・浜田多実雄厩舎に所属。ジュンダッシュがJRAに在籍していた時には、浜田厩舎の所属馬だったこともあり、川端騎手が調教をつけ、レースでも騎乗(中京で13着)していた。YJSは地方・JRA交流戦でないため、規定によりJRA勝利とは認定されないが、大きな1勝となった。

 デビューから半年。「長い間勝つことができなかったので苦しかったですが、うれしいです。癖が分かっていた馬だったので信頼していました」と待望の初Vを喜んだ。9月18日に19歳の誕生日を迎える。

YJS笠松ラウンドに参戦する東川騎手(右)、深沢杏花騎手(同2人目)、長江慶悟騎手(左)

 ■笠松勢3人、地元Vならファイナル進出の可能性

 地方競馬では西日本、東日本とも上位4人がトライアルラウンドを突破できる。一昨年、東川騎手は51ポイントで総合5位。ファイナル進出は1ポイント差で逃した。4位でファイナリストになった名古屋の細川智史騎手は、ファイナルでは勝利も挙げ、総合3位に輝いた。

 笠松勢3人は東川騎手が19ポイントで12位、長江慶悟騎手が17ポイントで13位、深沢杏花騎手は13ポイントで14位。ファイナル進出には50ポイント以上が必要になりそうだが、1着になら30ポイントを獲得できる。笠松ラウンドの2戦では、1着と5着以内ならファイナル進出の可能性は十分にある。

 笠松名物レース「C級サバイバル戦」などが予定されており、騎乗経験のある馬を引き当てて、それぞれ得意の展開に持ち込めれば、1着ゴールも夢でない。笠松勢のファイナリストはこれまで、2017、18年の渡辺竜也騎手のみ。昨年出場できなかった若手3人には、2年分の思いをぶつけて、勝利や上位入線を果たしてもらいたい。笠松での期間限定騎乗を11月まで延長した及川烈騎手(浦和)は地方・東日本でトップの座は譲ったが、2位(38ポイント)で上位をキープ。10月19日の浦和ラウンドでファイナル切符獲得を目指す。

東川騎手の100勝達成セレモニー。笠松、名古屋のジョッキー仲間が同じ勝負服で盛り上げた

 ■東川騎手100勝達成セレモニー、笠松モード全開

 東川騎手の地方競馬通算100勝達成セレモニーは、笠松モード全開となった。8月26日4R、自厩舎のリコネクト(雌4歳、後藤正義厩舎)で100勝目。ウイナーズサークルには東川騎手の勝負服を着た計7人がファンの前に登場。「(六つ子の漫画)『おそ松くん』みたい」という声も聞かれたが、笠松、名古屋の若手・中堅の騎手仲間たちがずらりと並んで、盛り上げた。

 東川騎手は100勝達成について「特に意識しなかったですが、素直にうれしいです。けがが多かったので、けがなく安全第一で乗れるよう頑張ります。重賞を勝ちたいです」と意欲。ファンたちの温かい拍手を浴びて、さらなる活躍を誓った。

札幌でのワールドオールスタージョッキーズに参戦し、総合6位となった岡部誠騎手。名古屋競馬場では壮行会が開かれた(中央が岡部騎手) 

 ■岡部誠騎手「ワールドオールスター」で総合6位

 岡部誠騎手は8月27、28日、札幌競馬場で行われた「ワールドオールスタージョッキーズ」(国際騎手招待競走)に出場。名古屋での壮行会や、タニノタビトで3冠を達成した岐阜金賞での表彰式でも、力強い優勝宣言があって闘志満々だった。4レースのうち初戦2着で、4着もあって総合6位と健闘。優勝した武豊騎手をはじめ、JRAや世界の名手たちと腕を競った経験は大きな財産になったし、名古屋、笠松の後輩たちにも刺激を与えた。

 岡部騎手は、昨年度の名古屋リーディングとして地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップを優勝。笠松リーディングの藤原幹生騎手が準優勝と、久々に東海公営の騎手のレベルの高さを全国にアピールできた。けがなく順調ななら、来年は岡部騎手とともに渡辺竜也騎手が各場代表として、地方騎手ナンバーワンを目指すことになりそうだ。

笠松・くろゆり賞では、ナナカマドカに騎乗し2着に入った川原正一騎手

 ■川原正一騎手、円熟パワーで健在

 前身の「ワールドスーパージョッキーズ」では、笠松時代の川原正一騎手が1997年、1着を連発して総合優勝を飾っている。安藤勝己元騎手は1995年、3着2回などで総合3位。90年代は笠松の人馬が最も輝いていて強かった時代といえよう。川原騎手は今夏の笠松・くろゆり賞でナナカマドカに騎乗し2着。YJS直後に行われた園田オータムトロフィーでも存在感を示し、8番人気・ウインドケーヴに騎乗して2着。衰えを知らない63歳円熟パワーを発揮し、改めてその健在ぶりを実感させられた。YJSの若手騎手には末永く第一線で活躍し続ける模範を示した。

 そして最終レース。専門紙予想はほぼ無印だったが、笠松時代の「穴の川原」はここでも健在。6番人気・ホットストリークに騎乗し、中団から鮮やかに差し切り勝ち(ハナ差)。的場文男騎手(大井)、石崎隆之元騎手(船橋)に続く歴代3位の通算5708勝目を飾った。この勢いなら70歳まで現役を続けられそうだ。「年金ジョッキー」を目指している笠松の向山牧騎手(57)もこのところ、終盤のレースで勝負強さを発揮しており、川原騎手とともに「現役レジェンド」として活躍を続けていただきたい。