合同で練習に励む萩原南、萩原北、小坂の各中学校の生徒=8月、下呂市萩原町萩原、萩原南中

 「学校単位で教師が指導する従来の部活動を、今後も現状の形で維持していくことは困難と言わざるを得ない」

 公立中学校の部活の在り方を検討してきたスポーツ庁の有識者会議は6月にまとめた提言で、中学の部活動の厳しい現状をこう指摘する。少子化で学校単位での運営が困難になることや、部活動が教員の長時間労働の要因になっていることを挙げ、2025年度末までに休日は地域団体へ委ねるべきだと結論づけた。文化庁の有識者会議も8月に同様の提言をまとめた。

 提言では、23~25年度の3年間を地域移行に向けた「改革集中期間」と設定。自治体には具体的な取り組みやスケジュールを定めた推進計画を策定するよう求めている。岐阜県内でも少子化に伴う中学校の生徒数の減少に歯止めがかからず、県中学校体育連盟の古田隆洋会長(58)は「現状の形のまま部活動を維持していくことは難しい」と危機感を募らせる。

 県教育委員会によると、公立中学校の生徒数は、05年度に6万1465人だったが、本年度は5万2151人に減少。県中体連の調べでは、県内の部活動の部員数は、任意加入の流れもあり、15年度から本年度までに約1万3千人減った。

 こうした背景から県内でも学校の垣根を越えた合同チームが急増している。県中体連によると、合同チームの登録チーム数は、13年度には個人種目のない野球やサッカーなど6競技で21だったが、21年度は77、本年度は97に達した。今夏の県中学校総合体育大会の県大会には軟式野球が16のうち7、ソフトボールが10のうち8の合同チームが出場した。単独で存続できないチームは年々増え、古田会長は「今後も合同チームで出場する傾向は続くだろう」と推測する。

 

 部員数が減る一方、複数校が合同で活動することで、生徒の選べる部活を確保しようとする動きもある。下呂市教育委員会は、学校の垣根を越えた「合同部活動」の取り組みを20年度から独自にスタート。合同となる部活や学校数はその年の部員数などで流動的だが、本年度は野球、バスケットボール、バレーボール、吹奏楽などで進められている。

 下呂市の萩原南中学校のグラウンドには、同校野球部に参加する形で、萩原北中、小坂中の生徒がユニホーム姿で集まり、定期的に練習する。萩原北中と小坂中に野球部はないが、合同部活動が始まってからは3校合同で県中学校総合体育大会にも出場し、今夏は優勝も果たした。軟式野球で指導に当たる萩原南中の波多野稜佑教諭(27)は「やりたくても選択肢がなかった学校の子どもたちにとっては、とてもいい環境」と話す。

 下呂市は、生徒の負担が少なくなるように合同部活動の形を維持しながら「地域移行」につなげていく考えだ。同市教委の益田貴史教育対策監(51)は「部活の主役はあくまで生徒たち。子どものためによりよい方法を探り、ストレスの少ない移行ができるように進めていきたい」と話した。

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 公立中学校の部活動が、大きく変わろうとしている。国は、少子化や教員の働き方改革を背景に、2023年度から段階的に休日の指導を地域団体や民間事業者に委ねる「地域移行」を進める方針だ。「部活動改革」には運営主体となる受け皿や教員に代わる指導者の確保といった課題もある。教育現場を取材し、部活動の未来を考える。