岐阜大学皮膚科医 高橋智子氏

 今回は、女性が特に気になる"顔のシミ"の一種、肝斑(かんぱん)のお話です。肝斑は30~40代の女性に多く、両頬に、左右対称に淡い褐色斑として現れます。肝の字から想像して「私、肝臓が悪いのでしょうか」と患者さんから質問されることも多いのですが、肝臓の病気とは直接的な関係はありません。

 肝斑は、紫外線が強くなる4~7月に患者さんが増えますので、その発症や悪化因子として紫外線が強く関わっていると考えられています。それに加え、妊娠や経口避妊薬(ピル)の服用をきっかけにできることもあり、いわゆる女性ホルモンのバランスも大きく関わっています。それ以外には、ストレス、化粧品、顔の過剰なマッサージなども原因として指摘されています。

 症状は、主に両頬を中心に、時に額や口の周囲に、左右対称で、比較的広い範囲にモヤモヤと淡い褐色斑として現れます。目の周りにはできないのが特徴で、その部分だけが色が抜けているように見えることもあります。

 ただ、顔に現れるシミは肝斑だけではありません。「そばかす」、加齢や紫外線の影響で出てくる「日光黒子(にっこうこくし)」、肝斑と同様に両頬に左右対称に出る「対称性真皮メラノサイトーシス」、かぶれの炎症が治まった後に残る「炎症後色素沈着」など、皮膚科医が専門的な目で見ても、なかなか区別が難しいこともあります。肝斑とこれらの症状が、重なっていることも多く経験します。

 肝斑の治療は、トラネキサム酸の内服治療の効果が期待できます。トラネキサム酸は元来、出血を止めたり、喉などの炎症を抑えたりするために使用される薬です。肝斑ができる時には、色素が増えるように、皮膚の細胞を"プラスミン"という物質が刺激することが分かっています。

 トラネキサム酸は、抗プラスミン作用といって、プラスミンの影響を直接ブロックする作用があり、それによって、色素が増えるのを抑えられるため、肝斑の症状が改善すると考えられています。また、この色素が増える段階をさらに抑えるために、ビタミンCなどを併用します。これらの薬は、もちろん病院で処方できる薬ですが、最近では、OTC医薬品(一般用医薬品)で、肝斑治療薬としてドラッグストアで手に入れることも可能です。

 また、紫外線対策もとても大切です。外出時には帽子や日傘を使用し、日焼け止めクリームを塗るようにしましょう。特に妊婦さんは、肝斑の予防のためにも、紫外線対策をしっかり行ってください。

(岐阜大学医学部付属病院皮膚科臨床講師)