笠松競馬場内で販売された「オグリの里・聖地編」

 「オグリの里・聖地編出版記念」の冠協賛レースが23日、笠松競馬3Rで行われ、場内で新刊が発売された。お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二さんが馬主を務めるオマタセシマシタ(3歳牝、笹野博司厩舎)も出走。7着に終わったが、人気馬の登場で盛り上がった。

人気馬オマタセシマシタも出走したオグリの里協賛レースでは、スタンド前やラチ沿いにファンがびっしりと並んだ

 祝日開催で「オマタセ効果」もあって入場者は2200人を超え、場内は年末シリーズ並みに大にぎわい。スタンド前もファンで埋まり、外ラチ沿いはカメラやスマホを構えた若者らでびっしり。3Rスタート前には実況アナが協賛レースについて「日本競馬界最大のヒーロー・オグリキャップを生んだ笠松競馬場から愛を込めて。岐阜新聞Web「オグリの里」を書籍化。ウマ娘ファンも笠松競馬の魅力を知ってほしい」と紹介した。

場内の清流ビジョンで映し出された「オグリの里・聖地編出版記念」のレース名

 ■「万馬券」が当たったような気分

 笠松競馬では個人協賛レースなら「1口1万円」で申し込め、ゼッケンやレースのDVD購入も可能。「○○さんバースデー記念」などのレース名で協賛し、応援できる。オマタセシマシタは22日出走の可能性が高いとされていたが、番組編成で23日に。運良く協賛することができ、偶然「万馬券」が当たったようなラッキーな気分になった。

 この日の天気予報は「曇り」で午前中の降水確率も10%だったが、朝から雨降り。予報は馬券の予想と同じで、当てにはならないと実感し「やられた」との思い。競馬場内で発売する本は、屋外で軽トラの荷台に積んで保管していて、雨にぬれそうでヒヤリとさせられた。

「オグリの里・聖地編」を買い求めるファン

 ■笠松競馬の存続運動などの歴史や「名馬、名手の里」の魅力アピール

 笠松競馬では2年前「ウマ娘シンデレラグレイ1巻発売」の企業協賛レースが、騎手らの馬券購入による不祥事の影響で中止になったことがあった。その後、レースは8カ月間も自粛になり、再開後も取材規制は依然として厳しい現状にある。元の状態に戻すのは「時期尚早」という農水省の判断があるようで、この先いつまで続くのか。レース直後に騎手らの声を聞くことは難しく、厩舎関係者からの情報量も少なくなっており、競馬場からの発信力は低下。依然として閉鎖的な状況が続いている。

 このため、笠松ファンはもちろん、聖地巡礼で遠くから来場する若い人にも「存廃問題で生き残った笠松競馬の歴史や『名馬、名手の里』の魅力をもっとアピールし、盛り上げることができれば」との思いから、「オグリの里」を書籍でシリーズ化することにした。

1周目のゴール前で中団を走るオマタセシマシタ(6)と勝ったギャレットルレーヴ(4)

 協賛レースは祝日開催で、午前10時の開門前からファンの行列ができ、県畜産品「飛騨牛ビーフシチュー」が先着200人にプレゼントされた。オグリキャップ像近くで「オグリの里・聖地編」の発売もスタート。お昼には雨も上がり、晴れ間も見られ一安心。ファンお目当てのオマタセシマシタが出走する3RはC級3組の1400メートル戦。8頭立てでゲートインが始まり、スタンド一帯では、この日のメインで重賞の「ウインター争覇」を上回るファンが熱い視線を送った。

 ■オマタセシマシタ「まさかの失速」

 6番枠で2番人気のオマタセシマシタ。クラスが一つ上がって、タイム的にどうなのか。陣営は「初戦と大差ない条件だし、立ち回りのうまさで何とか」との思惑。スタートはまずまずで、中団から前を追う展開。3コーナーではいい感じで3番手に上がり「さあ先頭へ」という勢いだったが、残り400~500メートルでズルズルと後退してしまった。岐阜新聞Webの動画では場内の音声も流され、オマタセシマシタが「まさかの失速」をするシーンでは、周囲の驚きに反応したかのように赤ちゃんが泣き叫ぶ声も入っており、異様な空気感を伝えている。

 
7着に終わったオマタセシマシタ(6)のゴール前 

 ■斉藤オーナー「オマタセ、どうした」

 笠松には来場できなかった斉藤オーナーはライブ映像で観戦。「オマタセ、どうした。何があったの」と悲痛な声。ゴールでは7着に踏ん張るのが精いっぱい。レース後、斉藤オーナーのユーチューブ番組に電話出演した笹野博司調教師は「3コーナーまでは脚がたまっていて、いい感じでしたが」と。渡辺竜也騎手によると「3コーナーから手綱を押していったら、外に張る癖が出てしまった。ハミを掛けたままの状態で回れば良かったが、勝負どころで前へと出していった分、外へと逃げられてしまった」と敗因を挙げたという。

 笹野調教師は「故障とかではなく、脚元は大丈夫です。コーナリング重視で回るよう修正したい」と次走へ意欲。斉藤オーナーは「ファンも心配していましたが、けがでなく無事で安心しました」と笠松での頑張りに期待した。この日は賞金が加算されず、斉藤オーナーの目標でもあるオマタセシマシタの船橋移籍は先送りになった。笠松競馬ファンには「勝利のシーンをまた見たいが、長く笠松に在厩して競馬場を盛り上げてもらいたい」との複雑な思いもあるようだ。

 「笠松移籍初戦Vに続く連勝なるか」と注目を浴びたレースだったが、結果はブービー負け。タイム的には、勝った前走が1分33秒9で、今回は1分34秒5。1着から1.9秒差で、3~4コーナーでの行きっぷりが悪くなったことが響いた。それでも最後は前を追う姿勢も見せていた。最多勝の師弟コンビが必勝態勢で臨む次走でどう巻き返すか。あるいは短期放牧などで休養して、2勝目も「お待たせしすぎる」ことになるかもしれない。

協賛レース「オグリの里・聖地編出版記念」の優勝騎手サイン入りゼッケン

 ■協賛レースを勝った村上弘樹騎手のサインをゲット

 協賛レースで勝ったのは、ゴール前で鋭い差し脚を伸ばした名古屋のギャレットルレーヴ(セン馬3歳、榎屋充厩舎)で1番人気に応えた。勝ち馬に騎乗したのは村上弘樹騎手。コロナ禍のため、協賛レースでも口取り写真の撮影はできなかったが、記念のサイン入りゼッケンは手にすることができた。ゼッケンは4桁までの番号で事前に発注。オグリキャップがラストランで勝った8番をお願いしたが、1着のギャレットルレーヴは4番だった。クビ差2着が松本剛志騎手騎乗のマナマハロ(牡3歳、川嶋弘吉厩舎)で、3着は森島貴之騎手のスギノケルピー(雌3歳、同)で、笠松の騎手のサインはゲットできなかった。

 3連単の配当は1万円ちょうどだったが、ここでも名古屋勢強し。一連の不祥事で所属馬が減って弱体化した笠松勢との力関係は、C級でもはっきりしている。弥富から出張してくる名古屋勢には、あっさりとやられるレースが多く残念だ。笠松もレース賞金のアップなどで競走馬や調教師も増やし、強い馬づくりにつなげてもらいたい。

「オグリの里」を購入する競馬ファン。右奥にはオグリキャップ像の姿も

 ■「オグリキャップの引退式にも来た」

 「オグリの里・聖地編」の販売コーナーでは、幅広い世代の競馬ファンが関心を示し、本を買い求めていただいた。「オグリキャップの引退式にも来た」というファンが多かったし、ウマ娘のキャラクターのおかげか「オグリキャップが好き」という子どもさんもいて驚かされた。場内の飲食店前には長い行列ができて大繁盛。「雨が上がって、いっぱいお客さんに来ていただけました」と店のスタッフさんもうれしそう。串もの、焼きそば、おでん類など全国の競馬場グルメでもトップクラスの味と安さで評判だ。馬券だけでなく、おいしい味を堪能することも競馬場での大きな楽しみである。

競馬場グルメを堪能しようと寿屋、丸金食堂などの前にできたファンの行列

 ■場内の丸金食堂で発売中

 「オグリの里・聖地編」はA5判カラー、200ページ、1300円。問い合わせは岐阜新聞情報センター出版室、電話058(264)1620=月~金(祝日除く)9~17時。「岐阜新聞の本」Webで詳しい購入方法(電話、ファクス、Eメール)を掲載。3月以降順次、名鉄笠松駅構内の「ふらっと笠松」や岐阜市内の書店で販売。アマゾン公式サイトでも購入可能になる。笠松競馬場内の人気店「丸金食堂」では、営業時間内に発売している。